TINY MUSIC LIFE

音楽を仕事にする方法やビジネス論、考察や小ネタなどをお届けする音楽情報ワンパーソンメディア。by TINY RECORDS八木橋一寛

【魅惑のMVクリエイター②】 レディオヘッドとポール・トーマス・アンダーソン監督

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MV(ミュージック・ビデオ)にフォーカスし、素晴らしき音楽と映像の世界を作り出すクリエイターをご紹介していくこの企画。

 

第2回目となる今回は、RADIOHEAD(レディオヘッド)とPaul Thomas Anderson(ポール・トーマス・アンダーソン)。 

 

  

MV(ミュージック・ビデオ)とは? 

いつしかPV(プロモーション・ビデオ)ではなく、MV(ミュージック・ビデオ)と呼ばれる事が多くなりました。

 

厳密にいつ頃からそう呼ばれ出すようになったのかは、はっきりとは言えませんが、Youtubeの台頭くらい(10年くらい前?)から増えだしたような印象もあります。

 

今でこそユーチューバーなど色々な映像が存在しますけど、当初は音楽ビデオを観るプラットフォームとして普及していったかと思います。

 

PVもMVも意味合い的にはニアリーイコールといった感じなので、どちらで呼んでも差し支えはないと思いますが、アーティスト側で発信する際の呼び方としては、アティテュードの違いになるかと思います。

 

”プロモーション・ビデオ”はもちろん、プロモーション、宣伝の為に制作されたビデオ・クリップという意味合いになります。

MTV全盛時代などでもそのように呼ばれていました。

 

”ミュージック・ビデオ”も、基本的にはプロモーションの為に制作はされていますが、わざわざ何故そう言い換えているのでしょう?

 

御察しの通り、”アーティスト活動の中の一つの作品として作り上げている”からです。

 

PVと呼ばれている頃から、マイケル・ジャクソンの「スリラー」に代表されるように、プロモーションだけでなく、アーティストや楽曲のイメージをより明確に伝える作品といての機能は担っていました。

 

そんな、”魂を込めて作り上げた映像作品”を”プロモーション”と呼ぶのは、表現者やクリエイター目線からすると、どこかしっくり来ないのは想像に難くありません。

 前回記事、【魅惑のMVクリエイター①】 The Chemical Brothers(ザ・ケミカル・ブラザーズ)とDom & Nic(ドム&ニック) - TINY MUSIC LIFE より引用

  

RADIOHEADとPaul Thomas Anderson

RADIOHEAD(レディオヘッド)について

1993 年の1stアルバム『Pablo Honey(パブロ・ハニー)』 収録曲「Creep」の大ヒットにより、以降現在までイギリスを代表するロック・バンドとして君臨。

 

叙情的な歌とメロディが際立った2ndアルバム『The Bends(ザ・ベンズ)』でその地位を不動のものとし、COLDPLAYやTRAVISなど多くの後発バンドのブレイクを生むきっかけにもなった。

 

1997年の3rdアルバム『OK COMPUTER(OKコンピュータ)』では、2ndでの叙情的なメロディを残しつつも、現代音楽や電子音楽からの影響を反映した実験的なサウンドへのシフトが始まり、その高い音楽性は衝撃と同時に高い絶賛を受ける。

 

商業的な成功に加え、『OK COMPUTER』により、多くのアーティストからのリスペクトの対象にもなり、”アーティスト・オブ・アーティスト”とも言える、90年代以降最も偉大なロックバンドの1つと考えて異論の余地はないとも思います。

 

2000年リリースの4作目『KID A(キッドA)』以降は、さらにエレクトロニカ色が強まり、いわゆるロックバンドとは形の異なる楽曲やスタイルを確立。

 

当時のインタビューでも、特にAutechre(オウテカ)からの影響をトム自身も強く口にしており、商業的な成功の反動により、実験的な音楽に傾倒していった事も推察できます。

 

初期はスタンダードなロックバンドの編成を取っていましたが、メンバーそれぞれが多くの演奏パートを行い、作曲についてもその多くはバンド名義でクレジットされているセッション的な作曲スタイルも特徴と言えます。

 

Paul Thomas Anderson(ポール・トーマス・アンダーソン)について

アメリカの映画監督、脚本家、映画プロデューサーで、世界三大映画祭すべてで監督賞を受賞。

代表作は、「ブギーナイツ」、「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」、「マグノリア」など。

 

フィオナ・アップルとの交際歴がある過去も知られており、彼女のMVのいくつかも手掛けている。

 

MVでは他に、RADIOHEADや近年ではロサンゼルスの人気ロックバンド、HAIM(ハイム)の作品も多数手掛けている。

 

MV紹介

Radiohead - Daydreaming 

2016年リリースの9枚目のアルバム『A Moon Shaped Pool【ア・ムーン・シェイプド・プール】』収録曲となり、このアルバム収録楽曲のMVをポール・トーマス・アンダーソンが手掛けている。

 

また、レディオヘッドのギタリストであるジョニー・グリーンウッドは、ポール・トーマス・アンダーソン監督の映画作品の多くの音楽を担当しており、その流れを汲んでのオファーだと思われます。

 

本MV「Daydreaming」は、日本を含めた多くの国の映画館へそのフィルムが送られ、多くの映画館で上映された事でも話題となったのも記憶に新しいです。

 

映像に目を移すと、35mmフィルムで撮影されたその独特な風合いある映像に目を奪われ、楽曲の悲しげな世界観との相性も抜群です。

 

展開としては、ヴォーカリストであるトム・ヨークが、スーパーマーケットやトンネル、図書館、ホテルの廊下、ビーチ、雪山、と扉を開く毎に場面が切り替わっていく。

 

歩き続けていくトムの表情は寂しげであったり不思議そうでもあり、タイトルの「Daydreaming(白日夢、空想)」が示す通りのどこか非現実的な世界観が表現されています。

 

派手なギミックや演出があるわけではないですが、一見しただけでも強烈に印象に残ります。

 

非常に静かで哀しげな楽曲と完全にシンクロした映像である事が、その理由ではないかと感じる正しく”ミュージック・ビデオ”と思える1作です。

 

RADIOHEAD - The Numbers

こちらもアルバム『A Moon Shaped Pool【ア・ムーン・シェイプド・プール】』からの1曲。

 

トムとジョニーの2人が山あいのベンチに座り、ドラムマシーンのリズムに合わせ弾き語り演奏を続けるというシンプルな構成。

 

音数を削ぎ落としたミニマルな楽曲が目立つ近年のレディオヘッドの中でも、特にシンプルな楽曲である本曲に添わせポール・トーマス・アンダーソンらしいとも感じれる作品だと思います。

 

カリスマ性の高いトムとジョニーだからこそ、ここまでシンプルな構成でも”絵が持つ”という事は多分にありそうですが。笑

 

まとめ

今回は少なめで2本のMVの紹介となりました。

 

前回の記事同様、ワンアイデアに特化したスタイルのMVばかりという、私の好みが全開になっておりますが。苦笑

 

他にも、トム・ヨークのソロ3作目となる2019年リリース「ANIMA」では、MVではなく短編映画という形でNetflixで限定公開が行われていたりもします。

これも新しい形としてのMVとして機能しており、今後もこういった形での音楽と映像の融合は増えていくのかもしれません。

 

という事で、また次回に。

 

ではまた◎

 


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