TINY MUSIC LIFE

音楽を仕事にする方法やビジネス論、考察や小ネタなどをお届けする音楽情報ワンパーソンメディア。by TINY RECORDS八木橋一寛

経営者がすべき問題解決を求められ疲弊するライブハウス現場スタッフ【コロナ禍】

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るからにスパイシーなタイトルですが、もしかしたら内容もライブハウスの経営層にとってはカッとなるものになるかもしれません。

 

ですが、そんな忖度のない活動をする為にフリーランスになった所も大きいですから、知っている事実だけをもとに進めていきます。

 

内容はタイトルの示す通り、コロナ禍により経営上の難題が山積みとなっている音楽系ライブハウス(今回は小規模会場のみについての話となります)の問題解決への取り組みが「現場スタッフに丸投げされ過ぎてはいないか?」と強く感じた為、その事についてのお話となります。

 

反対に、経営者側の苦悩や苦痛、ストレスもとても同情の気持ちが芽生えている所もあり、合わせて考察していきます。

 

 

経営者の苦悩を推し量ってみる

これは主に、コロナ禍の直接的経済被害を受けていない・もしくは大きな被害は受けていない企業に勤めている方を見ていると感じる事ではありますが、SNSなどでは経営層へのこんな批判や不満の声を散見します。

  • 「テレワークで自宅に職務環境を作らないといけなくなったから、その設備費用は会社が出すべきだ。」
  • 「交通費は引き続き出して欲しい。」
  • 「テレワークで出勤しなくても仕事ができると分かったのだから、もう出勤したくない。」

などなど。

 

私自身も、非常事態宣言中にオフィスワークメインなのに強制的に出社させている会社をみると、「それは組織としてどうなの、、、?」とは思いました。

リアルな知人にも、「そういう会社は今後長く持たない可能性が高いから、次の仕事を考えた方が良いかも。」といった意見さえした事もあります。

 

というのも、私のこのコロナ禍への所見は今も変わらずにずっと、(特に音楽コンサート業界は)多くの方の見立て以上にヤバイと思っていたからです。

 

それにしたって、雇用を変わらずに確保しテレワークまで導入した上で、これらの不満を言われてしまうのは、「経営者って可哀想だなぁ。。。」とか「だから経営者はやりたくないし、やっぱりフリーランスで十分。」などとも思ってしまいました。

 

特にライブハウスはもちろん、音楽コンサート系の業種であれば、営業が停止や縮小している状況でも尚、月給を変わらず振り込み続ける事は、経営層からすれば相当の痛みと覚悟が伴うと思っています。

そんなコンサート業界で勤務している会社員の中でも、給料は安定してもらえている事からか、この切迫感を実感できていないように見える方は存在します。

 

見出しこそ経営者批判寄りになってはいますが、そんな方には「いやいや、今の状況での経営者の立場を考えるとね...」とこの状況で雇用を継続する痛みを力説した事もしばしばあります。

 

東京では既に数十店舗のライブハウスが新型コロナの影響で閉店や廃業をしています。

「賢い経営者ほどすぐに閉店の判断をするんですよ。」

という意見をライブハウスや音楽関係者の口から何度か聞きました。

この意見については全く賛成はできないのですが、問われた決断の痛みの大きさだけは理解と共感ができます。

(全く賛成できない理由は、ライブハウスとしてのビジネス設計をそもそも誤まっているお店も少なくないので、その時点で既に賢くないと感じてしまう為です。これについては長くなるので今度別途書きます。)

 

ともあれ、私などは自分のみの収入が下がっただけでも悩ましさはあるのに、被雇用者の収入や人生まで背負わなければならないという苦悩や苦痛に立ち向かっている経営者に対しては本当に頭が下がります。

 

コロナ禍を乗り切る舵は誰が取るべき?

この「舵は誰が取るべきか?」の前提が合わない場合、この記事で書く私の意見は全く共感や賛同のできないものになると思います。

 

私としては、絶対的に経営者が取るべきだと考えています。

理由はシンプルで、経営者はその為に存在していると思うからです。

 

しかし、実際に小規模ライブハウスに目をやると、コロナ禍における経営上の回復案作りやその実施は、会場に常勤する現場スタッフが担っているケースを多くみます。

(私の考えからすると)ひどい店舗では、現場に対してはコロナ禍でも変わらず売上目標のみを提示されているというケースすら耳にしました。

対策という対策としては、すぐさま人員整理として雇い止めを始めるような店舗も存在します。

そんなお店に限って、"人(スタッフ)"で集客やレンタルを取ろうとしているお店だったりもします。

 

私自身、ビジネスや商売をする事自体はとても好きで関心も強いですが、会社を起こしたいとは思えない一番の理由がコレです。

第16条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

ご存知の通り、日本は解雇に対してはとても厳しいです。仮にそうでなくとも被雇用者に報酬を支払い続けるということに対しては、私の場合は相当な覚悟と責任が必要だと考えてしまう為です。

(それがアルバイトであっても。なので、ゆるいバー営業にもアルバイトスタッフ出勤させているお店を見ると、そのお店のファンになってしまいます。)

 

ですから、給付金関係の手続きや人員整理のみを経営者が行い、経営回復案やその実行を現場頼みにしているケースを見ると、「それって経営者って呼べるのかな?」とさえ思わずにいられません。

 

理想を言えば、「経営状態が良くない。」などという事は、基本的には現場スタッフに言うべき事でさえないと思いますし、そんな状況であるほど経営者はモチベーターであるべきように思います。

 

経営状況などは言われずとも現場スタッフは日々の売上や動員を見ていれば分かる事ですし、そんな時に「こういった施策に取り組んで、1年後にはこんな状態まで持ち直して行こう。」といったビジョンすら語れぬ経営者が、この困難なコロナ禍で立て直せるとは到底思えません。

 

小規模会場には、現場スタッフのプランや人間力に頼った営業をしている場合がとても多いです。

裁量権が現場スタッフにあると言えば聞こえは良いですが、当然数字(売上)だけは問われます。

ここまでは会社組織なので当然ではありますが、コロナ禍においては大きく話が異なります。

 

数字のみを見るのであれば、

「いついつまでに売上がいくら確保できないと閉店をする」

「いついつまでは収益が止まっても継続可能な資金調達が済んでいる」

といった数字は最低限クリアにすべきですし、単に「今月は前年比50%でいいから作れ。」と言われて仮にそれが達成できたとしても全く問題解決になっていません。

 

また、時期が時期なので、今は動くべきではないと考えている方も多いです。

無理な店舗営業やレンタル交渉・出演交渉は、反対に店舗やそのスタッフの信用度を下げてしまう場合だってあります。

人間力で営業を回していたのであれば、経営者は彼等の信用は意識的に守るべきです。

 

小規模会場でも多く実施されたクラウドファンデイングなどは分かりやすい例で、多くの会場におそらく見込み以上の資金が集まった事と思います。

しかし、支援者心理の多くは店舗そのものへの支援よりも、そこで働くスタッフに対しての支援だったと私は感じています。

 

クラファンは現場スタッフの人間力に頼った経営をしてきた事が分かりやすく功を奏した格好はありますが、それであればこそ、モチベーターである必要性はより増しますし、信用は守るべきであり、解雇などは論外です。

 

現場スタッフが構築した"信用"という金銭には変えられない貴重な財産を使い資金集めをして、「これで何ヶ月は保ちます!」では支援者の信用にも応えられてはいません。

支援者の望みは、またその会場でそのスタッフと楽しく音楽を聴いて過ごす事ですから、潰れない"経営"を望んでいるのです。

 

収益設計上、人間力頼みの営業スタイルとなっている舵切りをしたのは経営者な訳ですから、それのみで乗り切れない状況下においてその解決策を講じるのは経営者だと思うのです。

(それができないのであれば、そもそも人間力ではなくビジネス視点の強いスタッフを店舗に雇用し、そういう設計で出店計画をすべきかと。)

 

最後に

予告通りのノー忖度で書いてきましたが、コロナがなかったとしても東京都内の小規模ライブハウスに関しては供給過多の状況が続いていたので、ここで書いた事の多くはコロナ以前から感じていた事ではあります。

 

単に機材や設備のある場所だけを用意して

「さあ現場スタッフのみんな、この会場を毎日埋めてください。」

という経営が成り立つ時代は随分前に終わったと思っていました。

 

ですから、すでにそんな設計で走り始めている店舗に対しては、

「この店舗設計では、こうこうこういう理由で今後何年も営業できる利益は上がらないと思うので、○○○○のようにして別の収益ポイントを作る事に労力を割いた方が良いと思いますけど。」

という趣旨の発言をかなり色々な方に言い続けていました。

 

正直、「だから言ったのに。。。」という気持ちもありますが、それにしたってコロナショックを受け、疲弊しきっているライブハウススタッフさんを実際に何人も見ましたし、そんな風に追い詰められている事がとても理不尽だと感じた事から今回はこんなテーマでこんな内容を書きました。

 

友人・知人が物悲しく疲弊したり、不慣れで本来の業務管轄外であるビジネスプラン作りに奔走させられている姿は見たくはありませんので、どうかいたずらに信用を削る事なく、ビジネスは経営者の方でやって欲しいと願っています。

 

ではまた明日◎ 

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