ウィズコロナ時代の音楽業界の在り方。
のような意見交換や議論が飛び交う中で、私自身もそうした話をする事も多くありました。
現状フリーランスとして活動をしていますので、どこか具体的な業種の立場でそれに向き合うというよりも、感覚的にはもう少し俯瞰した立場で考えてしまいますし、とはいえ自分の仕事としての収入を考えるとコンサート業界を軸とした広告案件の回復を望んでいる面もあります。
昨夜はバンクシー展に出掛けて以来、ちょうど2週間ぶりにいわゆる繁華街へ出掛けました。
そこでも色々な音楽業界関係者の方とお話をさせてもらう事ができ(会話の大半は楽しく他愛のない雑談ばかりですが。笑)、近況や各々のスタンスをお伺いする中で、「それであれば、こうかな!?」と言語化できそうな自分の回答が一つ見つかったので、そんなお話を書きたいと思います。
今回は広く音楽業界というよりは、小規模会場や小規模イベント、小規模アーティストに当てはまる内容になると思いますが、どうぞおつきあいくださいませ◎
顧客やファン拡大の据え置き
アーティストでもフェスなどのイベンターでも会場でも、コロナ以前のこれまでは規模の大小に関わらず、極端に言えば日本国民全体、そこまでとは言わずとも既存の音楽ファン全体、もしくはその業種内のパイ全体をマーケット対象にしている場合が大半だったかと思います。
例えば、アーティストが新譜を訴求する際、その多くはターゲットを既存のファンだけでなく、その一回り大きな円を描けるように新規ファンの獲得をしようと予算や時間を割いてマーケティングを行います。
フェスやライブイベントにおいても、チケットさえ購入してもらえれば主催者や会場から来場者を選ぶ事はなく誰もが入場可能なので、チケット販売数上限までは老若男女、新規や常連客は問わず広く顧客や潜在顧客として意識をしてきたはずです。
しかし、観客を入れた音楽コンサートには現在、収容人数制限がなされています。
ルール上はその制限に準じていれば公演の開催は可能ではありますが、それさえも控えざるを得ないケースも多く見受けられています。
コンサートを主たる収益源にしてきた業種にとって現在議論の対象となっているのは、言うまでもなくこれによる収益減少や停止という状況の打破です。
これに対しての持論の一つは以下の記事に書いた通り、「我々の努力や熱意では解消できない部分は確かに存在しているので、キャッシュポイントに拘らずにスライドすべき」というものから変わってはいません。
これはこれで置いておいて、並行して散見する状況として「入場上限を1/5や1/10まで落としているが、それでもチケットが売り切れない」というものがあります。
もともとチケットの入手困難だった公演などにとっては問題としない悩みかもしれませんが、特に小規模会場で行われる公演ほどコロナ以前からソールドアウト公演の比率は低い傾向がありました。
例えば、東京都内に多くある300人以下の会場キャパシティのライブハウスを見た場合、ソールドアウト公演の日程は月に1桁という場合がほとんどだと思います。
もちろん、それでも営業が継続できるような設計をしているので、毎日ソールドアウトにならないと問題があるという事はないでしょう。
(ホールレンタル料金もキャパの5、6割前後の販売数をリクープラインに設定している会場も多いので、借り手側もソールドアウトにしないと赤字になるという事でもありません。)
ですので、例えば200人の会場キャパシティの1/5となる40人上限で観客を入れた公演を行なったとしても、もともと200人という入場上限で収益設計をしてはいないので、収益がそのまま1/5に落ちるという事には直結しないのです。
何が言いたいのかと言うと、40人とパッと聞くと、「それじゃあ収益としては雀の涙過ぎないか?」と思いがちですが、ことこの状況下での小規模会場・小規模公演においては延命の命綱になり得る収益源だという事です。
仮に1日あたり40人を20日、チケット単価平均3000円で営業が行えた場合、
40人×20日×3000円=2,400,000円
と、小さな金額ではありません。
おそらく都内の200人以下のキャパシティの店舗であれば甚大な赤字にはならない数字に達していると思います。
これまでなら40人なら問題なく来場者がいた内容の公演でも、コロナ禍ではこの40人にさえ達しないという事が課題となっているという事です。
前談が長くなってしまいましたが、今回の主題はこの解消についてのお話となります。
「このような状況なので、ライブは好きだけど今は控えたい。」
という方の来場控えがリアルなライブ公演の動員ロスに直結しているのは仕方がない事ですし間違い無いとも思います。
音楽ライブが好きな方でさえです。
そんな中で、今までライブ公演へ来場経験が少ない方や全く無い方に今来場してもらう事は不可能に感じますし、だとしたらそこをターゲットにしたプロモーションやアナウンスに割く時間は徒労に終わるでしょう。
ライブ公演に来場をしてもらう。という事に関しては、これまでは「より広く多くの方に来場して欲しい。」という施策も打ち、そんなマインドで開催や営業をしていたとしても、今は完全に捨て切った方が良いというのが今回の持論の一つ目になります。
既存ファンのみをターゲットに(広げて駄目なら閉じる)
上記で書いた"完全に捨て切った"だけでは、作業&宣伝コストの軽減はできても、既存の顧客やファンが来場控えにより減少してしまった事への解決にはなりません。
この話での前提としては、すでにコロナショック以前に40人以上のファンを獲得しているアーティストやイベント、会場であれば、新規獲得を捨ててその既存ファンのみをターゲットとした場合でも十分な可能性があるという考えに基づきます。
これは単なる一例的なアイデアですが、SNSなどオンライン上での公演プロモーションであれば、これまでは「誰が見ても内容の分かるもの」を意識したフライヤーやテキストでアナウンスしていたと思いますが、「見る人が見れば趣旨を理解できワクワクする」というような既存ファンにしか分からない物にするのも一つかもしれません。
仮に40人×3,000円のチケット収益で主催者もしくは会場がその1日の売上として問題が無いのであれば、リアルと並行したライブ配信は行わないという舵を取っても良いでしょう。
"コロナ禍"という来場障壁をリアルイベントの価値に乗せかえると言いますか。
これは過去記事の以下の発想に近いですね。
新型コロナウイルスが完全終息を見るまでは、(我々がいくら頑張っても)入場者数の制限や来場控えは解消されないというのが私の考えです。
ただ、ライブハウスへの来場を控えて日常生活を送る中で、電車に乗ったり、出社したり、スーパーなどへ買い物へ行ったり、時には居酒屋などの飲食店に行ったりはするでしょう。
そして、あくまでも私が出歩いて見た範囲での話ではありますが、ライブハウスの感染対策は上記のどれに劣るものではなく、むしろライブハウスの方が細かい場合さえ多いと感じています。
コロナ以前のように広い層に対して間口広げたアプローチをしても来場いただく事が難しいのであればそこは捨ててターゲットを既存ファン・顧客のみに絞る。
その既存ファン・顧客の何割かに来場控えがあるのであれば、それでも来場をしてくれている方の(間口を閉じる事で特別な付加価値を加えるなど)満足度を高め、来場控えの元となるコロナ感染対策がライブ会場はむしろ安心感が高かった事をその来場者から口コミしてもらう。(主催者や会場が自身で伝えるよりも受け手の信用度が高まるはずなので)
言語化できそうな回答と書いた割にはスパっとした短文にまとめられておらずで恐縮ですが、入場者制限下での来場者数でも十分な収益になるケースでは、これが今回の持論という事になります。
最後に
別の言い方をすれば、コロナ禍で資金的体力の削がれた状況で集客を行うのであれば、リーチした時に反応のある確率の高い相手のみをターゲットに。
とでも言いましょうか。
拡大を目指すのであればまだ見ぬ新規顧客を獲得しファンに変えていくという舵をとりたいところですが、新規をターゲットにするには予算も労力もかかりますし、既存ファンにとっては面白みのない告知に見えてしまう場合もあると思います。
既存のファンや顧客であれば、来場可否は別れど、届いた情報に目を通したり、来場を検討まではしてくれるパーセンテージは非常に高いはずです。
新規となれば検討まで至ってくれるのは数百人にリーチして1人いるかどうかかもしれません。
SNS的に言えばエンゲージメント率がケタ違いな訳ですから、資金的余裕がない状況であればエンゲージメントの高い対象に対して意識的に全振りしては如何でしょうか?というお話でした。
私もやりたい事はあっても資金的な事情で頓挫している事も多くあるので、ここで書いた話も意識しつつ頑張りますので、頑張りましょう◎
ではまた◎
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