TINY MUSIC LIFE

音楽を仕事にする方法やビジネス論、考察や小ネタなどをお届けする音楽情報ワンパーソンメディア。by TINY RECORDS八木橋一寛

無観客ライブ配信で告知から消えた会場名から感じたこと

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イブ会場で言うと、私はこれまで東京都内のライブハウス3店舗でブッキング業務を行なってきた過去があります。(どれもフル勤務のような形ではないのですが。)

 

ですので、コロナ禍に限らず、これまで音楽業界の仕事をしたり、このブログなどでも物を書いたりする際には会場視点も多分に入っています。

 

もっと言えば、イベンター会社にも勤めたり、アーティストのマネージャーやスタッフをしたり、レコード屋を運営したり、DJをしたり、メディア仕事をしたりと音楽に関係する業務をかなり多岐に渡り行なってきたので、おのずとそれら全ての視点で物を考えてしまう癖があります。

 

そのせいで、何か仕事を行う際に複数の視点が入り過ぎてしまい、結果、気にしいになって業務を進める上では幾分障害になってしまっているなぁ。と近年感じてしまっています。

 

そんな複数の視点が入り混じりそれぞれのポジションを気にしてしまう自分においても、コロナショック以降、ライブ会場とイベンターの視点強めに思料するようになりました。

 

理由はご承知の方も多いように、集客ビジネスである会場とイベンターが音楽業界の中で最も収益面での打撃を受けてしまった為です。

 

今回は、そういった理由により完全にライブ会場目線に振り切って考えた時にふと気になった「ライブ配信で告知から消えた会場名」について触れたいと思います。

 

 

リアルなライブでの会場名表記の必要性

これまでの観客を入れた音楽ライブを行う際には、その公演のプロモーションにもチケット券面にも必ず公演を行う会場名の表記がありました。

 

当たり前の話で、会場がどこか分からなければチケットを購入するかどうかの検討もできませんし、来場することもできません。

 

会場の立地は来場を検討する上で非常に重要ですし、会場側もその立地込みでレンタルする際の営業材料にしています。

 

また、会場によってはその会場への出演や自主企画の開催が一種の登龍門や通過点、ゴールにもなっている側面もあり、そういった会場で公演を行う際には、アーティストのファンも同じ気持ちでそれを喜びます。

そんなステータスを持った会場も存在しますし、そうでなくとも多くの会場はそれぞれのコンセプトやカラーを持って営業をしています。

 

それにより、アーティストにではなく、会場に顧客やファンが付くこともありますし、小規模会場になる程、そういった顧客やファンに経営を支えられている面もあったと思います。

 

単に開催場所を知らせるというだけでなく、ライブ会場にはアーティストがファンを動員する上でそんな風に大きな付加価値も担っていました。

 

ライブ配信における会場名表記の必要性

対して、ライブ配信の場合は観客を集客する必要がありません。(無観客であれば。)

これまでいくつかのライブ配信を実際に観たり、多くの告知を目にしましたが、体感的には半数以上は会場名の表記はされていないように見えました。

 

この傾向は、ビッグアーティストや大きな会場ほど顕著ですが、当然そこには事情もあるでしょう。

人気アーティストであれば、無観客のライブ配信であっても、ファンが出待ちに来場してしまったり、音漏れを聴きに集まってしまったり(実際は外音は切るので聴こえないと思いますが)とトラブルの原因を作ってしまうリスクがあります。

 

小規模会場であれば、出待ち等が出てしまうアーティストが利用するケースが少ない為、ライブハウスへの応援も含めた気持ちで無観客配信であっても会場名を表記した告知を比較的多く見受けました。

 

加えて言うと、会場によっては主催者側が会場名を表記したいと伝えた場合でも、いわゆる自粛警察対策として会場名を伏せたいという意向を持ったケースもあったかもしれません。

 

会場名表記という長期目線での会場支援

冒頭のふと気になった点というのは、仮に無観客のライブ配信が続き会場名の表記の無い公演が増えると、コンセプトやビジョンを持って経営しているはずのライブハウスが単なるレンタルベニューになってしまうのでは無いかという事。

 

大規模会場などはビジネス的観点で経営をされているケースが多いので、レンタルさえ埋まれば単なるレンタルベニューでも大きな問題は無いかと思いますが、小規模会場となるとそうもいきません。

 

小規模会場の多くは、商売としては非常に薄利で業務内容と収益のバランスが決して良いとは言えません。

それでも開業し営業を続けるのは、ライブカルチャーの発信地としての理想やプライドがあるからだと思います。

 

私が目にしている会場名を表記した小規模会場でのライブ配信告知の多くは、主催者や出演アーティストがこの事に対して自覚的、もしくは無自覚であっても本能的にそうしているように感じました。

 

会場視点に立った個人的な気持ちとしては、本来は表記する必要の無い会場名を、わざわざ表記している告知を見る都度、非常に嬉くなってしまいました。

 

多くのライブハウスではクラウドファンディングやドリンクチケットの前売り販売などを行い、その会場の顧客やファンはそれに応える金銭的サポートを行いました。

ライブハウスは現金商売の為、営業自粛というのは本当に深刻で、短期的な支援としては最良であったと思います。

 

今後、自粛と緩和を繰り返しながら観客を入れた営業再開に向かうにあたっては、

「再開をしたらあの会場に行きたい!」

と思ってもらえる会場ほど、再開時にブーストを生むでしょうし、その為には配信であっても極力、会場としての動きを発信すべきようにも感じます。

 

そう考えると、会場の存続を願う主催者やアーティスト、来場者ができる資金的支援に続くサポートの一つとして、"会場名の露出"という考え方もできるかもしれません。

 

最後に

会場キャパシティ上限まで観客を入れた公演ができるのは、以前も書いたように、個人的にはまだ随分先になるとは思っています。

但し、既に一部そうなってきていますが(主にアイドルなどで)、人数制限下での観客を入れたライブ公演は年内にも十分進んでいく可能性はあるでしょう。 

 

完全終息までは、

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がライブ会場の勝ち筋にはなるように思っていますが、感染者数が増加傾向にある今日現在を見ると、もうしばらくは無観客でのライブ配信が続いてしまうかもしれません。

 

ライブ会場に限らず、アーティストにとっても”名称の露出”はこのような状況下では存外重要な応援になるようにも思ったので、今回はそんな提案(?)をしてみました。

 

ではまた◎ 

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