TINY MUSIC LIFE

音楽を仕事にする方法やビジネス論、考察や小ネタなどをお届けする音楽情報ワンパーソンメディア。by TINY RECORDS八木橋一寛

バンクシー展「天才か反逆者か」へ。フォトレポートとマーケティング&プロモーションの学び

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昨日はバンクシー展「天才か反逆者か」へ。

 

とても楽しみにしていたので待望、というやつでした。

 

10代の頃から人並みにストリートアートは追いかけてきたので、もともと作品としてバンクシーは好きだったのですが、近年は以前にも増してバンクシーの魅力に取り憑かれています。

 

これはきっと、自分がマーケティングやプロモーション、ブランディングの視点からバンクシーの活動を見るようになったからかもしれません。

そして、少し前に映画『イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ』 を観た事により年甲斐もなく大興奮し、お熱は最高潮に。

 

という訳で、直接音楽に関係するお話ではありませんが、かなり近しいカルチャーで、そしてマーケ、プロモ、ブランディングにおいてかなり大きな学びのあるアーティストだと思っていますので、今回は「バンクシー展に行ってみた。」というお話をお許しください。笑

 

 

バンクシー展「天才か反逆者か」概要

 Banksyとは?

イギリスを拠点に活動する匿名の芸術家。世界中のストリート、壁、橋などを舞台に神出鬼没に活動している。アート・ワールドにおいてバンクシーは、社会問題に根ざした批評的な作品を手がけるアーティストとして評価されている他、テーマパーク、宿泊施設、映画の制作など、その活動は多岐にわたる。バンクシーの代表的な活動スタイルであるステンシル(型版)を使用した独特なグラフィティと、それに添えられるエピグラムは風刺的でダークユーモアに溢れている。その作風は、芸術家と音楽家のコラボレーションが活発なイギリス西部の港湾都市ブリストルのアンダーグラウンド・シーンで育まれた。

※バンクシー展「天才か反逆者か」公式サイトより引用

 

展覧会について

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2018年からモスクワ、サンクトペテルブルク、マドリード、リスボン、香港の世界5都市を巡り、すでに述べ100万人を越える来場者を集めているそうです。

 

日本では、2020年3月15日〜9月27日まで横浜で、10月9日〜2021年1月17日まで大阪で行われ、複数のコレクター協力により集められた70点以上が展示されています。

 

本展覧会は個人コレクター所有の作品を集めたもので、本人非公認とされていますが、展示作品についてはバンクシー作品の認証機関「ペストコントロール」の認証を受けた物も含まれているだろうと言われています。 

公式サイト:https://banksyexhibition.jp/

 

会場の模様

テーマ毎に展示された作品群

場内は、消費、政治、警察、抗議、戦争、希望などテーマ毎にエリアを分ける事で、バンクシー特有の社会風刺や政治的メッセージをより認識しやすいような工夫が見られます。

 

展示作品はスクリーンプリントを中心に、オリジナル作品やステンシルの型、関連作品を模したオブジェ、映像などで構成されています。

 

一般的な美術展に比べると、体験も取り入れた展示方法の工夫や仕掛けが見られました。

その点は、向ヶ丘遊園駅の岡本太郎美術館(好きすぎて10回くらいは行っています。苦笑)にも近い印象も幾ばくか。

現代アート、というかポップカルチャー関連の展示イベントだとむしろこの感じが一般的ですかね。

 

フォトレポート

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入場して最初に目に飛び込むのは、映画『イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ』でのバンクシー本人のインタビューシーンを再現した空間展示。

この映画で再燃してしまった私としては、嬉しい演出です。

ちなみに、場内は写真撮影可となっています。

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「消費」のエリアではバンクシーらしい資本主義へのアイロニカルな作品が展示されています。


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音楽ファンにはお馴染み、BLUR『THINK TANK』のアナログレコードの展示も。

 

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「政治」エリア。他にももちろん作品ありましたが、皮肉として非常に分かりやすい議員やエリザベス女王を猿に置き換えた作品。


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通路にはバンクシー作品の代表的アイコンのひとつでもあるスマイリングコッパーがズラリと。

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この辺りは「警察」のエリアですね。

 

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「抗議」では最も有名であろう火炎瓶を花束に変えた作品。

パレスチナ自治区のガソリンスタンド横の壁に描かれた同作が、やはりマイ・フェイバリットです。

 

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こちらは「WAR(戦争)」エリア。

反戦デモ用として実際に使用されたという段ボールに描かれた物も。

 

余談ですが、以下は10数年前に私が営んでいたレコードショップ用に仕入れたTシャツ2点。いずれも戦争モチーフという事ですね。

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2008年か2009年あたりだったと思うので、既にある程度人気もあったはずなのですが、全く売れず。。。

という訳で私物化をして自分用として今でもたまに着ています。

 

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一人あたりの監視カメラ台数が欧米諸国でも最も多いとされ、「1日に300回写される」とも言われるイギリスの監視カメラ社会を皮肉ったブース。

場内に設置された監視カメラ映像が映し出されています。

 

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2017年にバンクシーがオープンした「THE WALLED OFF HOTEL」の一室を再現したブース。

ホテル目の前には、イスラエルが建設した分離壁がそびえ立ち、"世界一眺めの悪いホテル"という異名を持っています。


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「RATS(ネズミ)」のエリアも。

スマイリングコッパー、猿と並んで象徴的なバンクシーのモチーフ。

写真の作品タイトル箇所に"ギャングスタ・ラット"とあり、キュンとしました。笑

 

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全部は紹介していませんが、最後は「希望」エリア。

「ボール遊びはしないで。」という看板をボールに見立てた作品、そしてサザビーズ・オークションでのシュレッダーの件でも話題となった風船と少女の作品も。

 

最後はフォトスポットという感じですかね。
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折れ曲がってツルハシが刺さっていないと、ただの公衆電話になってしまうようにも思うのですが、この辺りは非公認ならではという所でしょうか。汗

 

顔出しパネルを見つけると撮りたくなるタイプなので、私もしっかりと記念写真を◎

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感想とまとめ

本人非公認、その為収益はバンクシーには入らないという事から、批判の声も聞かれたこのバンクシー展。

そもそも、「グラフィティやストリートアーティストで展覧会ってどうなの?」という事もあるでしょう。

 

まず観てきた感想としては、シンプルに作品点数も多くファンが楽しめる小ネタも充実していましたし、非常に、否、超楽しめました。

 

ストリートアートとはいえ、壁などに違法に描かれたものではなく、本人の意思で販売されていた作品が展示してあるので、それが展示されているという事には特に違和感はありませんでした。

 

また、油絵などではなくスクリーンプリントや型などタッチを楽しむものではないので、集中して覗き込んだりせずともカジュアルに観て回れる事。

メッセージや皮肉も分かりやすいものが多いので、ウンチク無しで来場者それぞれが作品意図を想像できるのもならではです。

 

実際に、美術展としては非常に敷居の低いカジュアルさもあり、場内は平日の日中にも関わらず、非常に多くの来場者がいました。(時間分けによる前売り券販売のみなので、来場者数コントロールはしていましたが、売り切れ日時も多く出ているようでした)

 

2010年以前の活動初期は、日本では一部のサブカル好きが認識している程度だった存在から、この数年で多くの一般層の老若男女が好んで足を運ぶ程のアーティストへと変貌を遂げたバンクシーのプロモーション、ブランディング力を再認識しました。

 

『イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ』を観るまでは、彼らのようなストリート・アーティストにマネージャーが就いているなんて知らなかったので、作品や活動を遡り多くのアーカイブを一度に観れた事で、段階に応じた戦略もより鮮明に見えました。

 

以下の記事での一案の通り、ミュージシャンやそれに関わる関係者が参考にできる要素がバンクシーには非常に多くあるように改めて感じます。

私が特にバンクシーに惹かれる点は、反資本主義のメッセージを打ち出してはいますが、実際には大きなお金を動かしている事。

自身の作品は金銭販売していますし、ディズマランドには15万人の来場者、映画は3本も公開しアカデミー賞ノミネートまでされています。

 

現代アーティストは音楽でも美術でも、活動中にその芸術的評価と金銭報酬を受けやすいですし、それが増すほどにメッセージの説得力や実行力、訴求力も増します。

 

冒頭にも書いた通り、マーケティングやプロモーション、ブランディングの観点からバンクシーへの関心が更に強まっていたので、私にとっては大きな利益や影響力を生み出しているからこその魅力があります。

 

「いや、バンクシーは反資本主義なのだから、こんな美術展にお金を落とす事自体、意に反している」という意見もありますが、そんな議論も含めて非公認であるこのバンクシー展も黙認している気もします。

直接的に収益にならずとも、話題が大きくなるほどに収益ポイントは設計しやすくなりますし、活動全てからそんな収益設計の巧みさを感じています。

 

但し、バンクシーがポーズで反資本主義を唱えていると言っている訳ではありません。

資本主義である以上、芸術活動をするにも意を唱えるにしても資金無くしては継続した実践ができないですし、資本主義構造の中で生きれる人間が唱える反対論だからこその価値があるとも思います。

 

テーマとなっていた「天才か反逆者か」という問いで言えば、"不世出の天才"だと思っていて、加えて"あまりにも優れたマーケター"というのが私のバンクシー評です。

 

私の場合、これまでに沢山のバンドの解散を近くで見過ぎたり、自分の資金や政治力の不足で才能あるアーティストを売ってあげる事が出来なかったトラウマが強く、芸術をしっかりと収益化する事に極端な執着があるので、偏った見方かもしれないのですけど、それも含めてアートの楽しみ方という事で大目にみてください。笑

 

ではまた◎ 


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