昨日は、以下のように【無観客と有観客の音楽ライブ公演の開催数に大きな差がある】という話題に触れました。
上記記事の最後に書いた通り、その後編的なものになりそうなもう一つのニュースがありましたので、今日の題材としたいと思います。
MMD研究所により「音楽のオンラインライブ視聴に関する実態調査」が実施されたそうで、その調査結果が昨日公開されていましたのでそれをもとに話を進めていきます。
音楽関係者にとっては相当に参考になる調査結果だと感じましたので、私個人的な考察や所感はすっ飛ばしていただいても構いませんので、結果だけでも是非目を通してみてください。苦笑
【目次】
「音楽のオンラインライブ視聴に関する実態調査」の内容
調査概要
この「音楽のオンラインライブ視聴に関する実態調査」は、2006年9月に設立されたモバイルに特化した調査研究機関「MMD研究所」により実施され、アンケート調査により回収されたサンプルを人口構成比に合わせるために、ウエイトバック方式*にて集計されました。
*回収されたサンプル(標本)を母集団の構成に合わせて集計する方法。
アンケートは2020年11月24から11月26日に行われ、全国の15歳~69歳の男女20,000人を対象としています。
調査結果
「普段どのように音楽を聴いているか」
まず、「普段から音楽を聴いているか」という問いに対し、「聴いている」と回答した人は78.7%。
この「聴いている」と回答した15,735人に対し、「普段どのように音楽を聴いているか」という設問に続き、その回答は以下のようになっています。
- 動画再生サービスで無料で聴いている 53.6%
- テレビで聴いている 39.7%
- 音楽CD、DVD、Blu-ray Discを購入して聴いている 33.2%
- AM・FMラジオで聴いている 25.8%
- 音楽CD・DVD・Blu-rayをレンタル購入して聴いている 15.2%
- インターネットラジオで聴いている 13.5%
- 定額制音楽配信サービスアプリで有料で聴いている 11.6%
- ダウンロード型の有料音楽配信サービスで購入して聴いている 11.1%
- 音楽配信アプリ・サービスで無料で聴いている 10.7%
- 定額制音楽配信サービスアプリで無料で聴いている 9.9%
動画で無料視聴というのが最多となり、パッケージソフトを購入して聴いているという回答が33.2%、ダウンロード購入が11.1%もあるという非常に日本らしい結果に。
売上規模を伸ばし続ける"定額制音楽配信サービスアプリ"については、有料視聴は僅か11.6%に留まっていますが、逆に考えると今後まだまだ売上の拡大が起こり得る裏付けとも言えそうです。
テレビで聴いているが39.7%というのも個人的には驚きです...。
「オンラインライブ配信サービスの利用有無や認知について」
そして気になる「オンラインライブ配信サービスについて」の設問です。
無料、有料と項目が別れており、まず無料配信は以下のような結果となっています。
- 知っており利用したことがある 31.2%
- 知っているが利用したことはない 17.2%
- 聞いたことはあるがサービス内容は知らない 28.6%
- 全く知らない 23.1%
上記は全体の結果で、年代別では「知っており、利用したことがある」と回答したのは10代が最多となり、57.2%と半数以上が利用経験があるという結果に。
年代が上がるほどにこの利用率や認知率は下がる結果となっていました。
69歳までを対象にして半数弱が認識しているというのは、高い認知度と言えるのではないでしょうか。
有料配信は以下の通りとなります。
- 知っており利用したことがある 14.4%
- 知っているが利用したことはない 25.6%
- 聞いたことはあるがサービス内容は知らない 33.9%
- 全く知らない 26.1%
有料配信の方は「利用したことがある」は無料に比べ半数以下となり、「知っている」の数値は上昇する結果に。
無料より有料配信は認識されていないというのも面白いですね。
YouTubeのライブ配信の影響でしょうか。
「オフラインライブ、有料オンラインライブ配信サービス利用理由」
「普段から音楽を聴いている」と回答した15,735人に対する「通常ライブに参加したことはあるか」という問いに対しては、「参加したことがある」と回答した人は48.9%でした。
普段から音楽を聴いていても、ライブに足を運んでいるのは過半数割れだという事は認識しておく方が良いでしょう。
私自身、音楽は音源で楽しむ頻度が元々圧倒的に高く、ライブと音源は完全に切り離して考えているので(仕事としてもリスナーとしても)、これについては「やはりか。」という結果でした。
更に、「ライブに参加した事がある」と回答した7,688人にその参加理由を聞いたところ、その回答は以下となっています。
- 特に好きなアーティストだったから 46.0%
- アーティストの曲を生で聴きたかったから 44.9%
- アーティストを生で見たかったから 44.6%
- 大音量で迫力があるから 19.4%
- アーティストのMCを生で聞きたかったから 15%
- 観客との一体感を味わいたかったから 14.8%
- 会場に直接足を運ばないと見る機会がないアーティストだったから 14.8%
- アーティストに直接声援や拍手を届けたかったから 12.8%
- 家族・友人の付き合いで参加したから 12.3%
- ストレス発散をしたかったから 9.4%
※複数回答可
最多回答数となった「特に好きなアーティストだったから」という回答の男女比については、男性が39.0%、女性が51.6%と女性が大きく上回っています。
「付き合いで参加」が12.3%というのは意外な気もしましたが、確かに映画やスポーツ観戦、レジャー施設って誘われてなんとなく付いていく事も多い気がしますし、取り立てて音楽に関心がない方を含めると頷けます。
コロナ禍が仮に終息した折には、ある程度のリバウンド需要も見込まれますので、その時にイベントやコンサートをデザインする際、需要に対応する為のサンプルとして使えそうなアンケート結果になっていると思います。
そして、最も気になる「有料オンラインライブ配信を利用した理由」を有料オンラインライブ配信サービスを利用したことがある2,263人に対して聞いた結果が以下となります。
- 好きなアーティストが実施したから 50.4%
- 好きなアーティストに売上面で貢献をしたいと思ったから 21.7%
- ライブやイベントが自宅から離れた会場でも視聴できるから 20.9%
- 移動せずに自宅でゆっくり視聴できるから 20.3%
- 新型コロナの影響からライブやイベントへの参加は避けたかったから 18.3%
- 画面越しでも十分ライブやイベントの雰囲気を味わえると思ったから 16.1%
- 普段チケットの入手が難しいアーティストのライブが見たかったから 14.4%
- 1人で静かにライブやイベントを楽しみたかったから 12%
- チケットの金額が通常のライブやイベントより安かったから 11.3%
- 新型コロナの影響で時間を持て余していたから 10.1%
※複数回答可
こちらも「好きなアーティスが実施したから」が最多回答数となりましたが、男女比は男性が37.2%、女性が60.8%とオフライン以上に女性比率が高まる結果に。
「売上面で貢献をしたい」という回答が2番目に多いというのは、ファンの優しさに泣けてきます。涙
次いで会場まで足を運ぶ必要がない点にメリットを感じる回答が続いています。
「売上面で貢献したい」もそれに含まれるかと思いますが、コロナ禍前提の動機も少なくない為、終息以降も収益モデルとして視野に入れる場合には、この回答からオンラインライブの優位点をピッアップ&ブラッシュアップを考えると有効かもしれませんね。
「有料配信サービスを利用しない理由」
有料オンラインライブ配信サービスを認知しているが利用経験のない9,360人に「有料オンラインライブ配信サービスを利用しない理由」があるかを聞いた結果は以下。
- 通信料金がかかるから 30%
- オンラインなのに参加するための金額が高いから 23.5%
- 利用方法がよくわからないから 20.4%
- スマートフォンなど小さい画面では楽しめないから 18%
- 通常のライブやイベントと同じような魅力を感じないから 16.4%
- 好きなアーティストが実施していないから 15.9%
- 無料のライブ配信サービスで十分楽しめるから 15.5%
- 配信日時に予定が合わないから 15.4%
- 通常のライブやイベントほど盛り上がれないから 12%
- アーテイストと直接会えないから 9.5%
※複数回答可
「通信料金がかかるから」が全体では最多回答となり、年代別で見ると、10代は「無料のライブ配信サービスで充分楽しめるから」が27.0%と最多回答となり、30代は「オンラインなのに参加するための金額が高いから」が25.3%で最多となっています。
個人的には通信料金を気にして視聴控えをする方が、こんなに多数いるというのは想像外でした。(あまり上限ナシのプランでネット環境確保しないものなのですね...。)
続く「利用方法がわからない」については次第に解消される問題かと思いますが、やはりオフラインのリアルなライブと同等の満足度が得られないのではないかという懸念が多く挙げられています。
ただこれ、利用経験の無い方を対象にしていて食わず嫌いの可能性もあるので、利用した上での満足度を個人的にはやはり知りたかったですね。(無料配信を視聴した人は含まれているのか思われますが。)
私などそれが知りたくて自前でアンケート取ってしまったくらいですし。汗
ともあれ、これらの"利用した理由・利用しない理由"は今後ライブ配信を設計する上で非常に役立つ調査結果のように私は受け止めました。
(というかめちゃくちゃ参考になりました。)
「利用経験のある有料配信サービスは」
有料オンラインライブ配信サービスを利用したことがある2,263人に、利用したことがある有料ライブ配信サービスを聞いた結果は以下となります。
GYAO! 22.9%
U-NEXT 21.5%
Johnny's netオンライン 18.5%
ローチケLIVE STREAMING 15.1%
Streaming+ 13%
全体ではGYAO!が最多となり、男性は「GyaO!」が28.6%で最多、女性は「Johnny’s netオンライン」が26.6%で最多となっています。
やはり"音楽ファン"のみを対象にしていないだけに、私を含む音楽ファンや関係者からするとやや意外な結果かもしれません。(少なくとも私の活動範囲内ではあまり利用されていないサービスが多いので。)
とはいえ、何度かこのブログでも考察していたように、"有料ライブ配信"については「絵をアップで見たい。」という需要の取れるアーティストが強いと考えていたので、ジャニーズが強いというのは納得です。
「通常ライブ再開後の有料配信サービス利用意向は」
有料オンラインライブ配信サービスを利用したことがある、又は有料オンラインライブ配信サービスを知っている6,284人に、「通常ライブ再開後の有料オンラインライブ配信サービスの利用意向」を質問しています。
- 通常のライブやイベントが再開してもどちらも利用したい23.1%
- 通常のライブやイベントが再開してもたまに利用したい 26.7%
- 通常のライブやイベントが再開したらあまり利用しない 20.7%
- 通常のライブやイベントが再開したら利用しない 29.4%
利用に積極的、消極的な回答はちょうど半分に分かれる結果となり、年代別に見ると、今後も利用したいと回答したのは20代が58.5%で最多、次いで30代が58.3%、10代が53.1%となっています。
このバランスについては、時が経過するほどに「利用したい」のウエイトは高まると思われますが、現時点で「利用しない」が一応最多というのは、コンサート業界的には"準備期間"がまだ取れるので吉報と言えば吉報かもしれませんね。
最後に(まとめ)
という訳で、無観客やオンラインライブ配信についての考察やニュースピックアップをこれまでも度々してきましたが、今回のこの実態調査はそんな考察にバシっと一つの回答を見せる貴重なものだったと感じています。
特に、「オフラインライブ、有料オンラインライブ配信サービス利用理由」、「有料配信サービスを利用しない理由」の2項目の回答結果に関しては、これからライブ配信を設計する際に求められる声としてそのまま反映すべきものだとさえ思います。
特に音楽コンサート関係者の方にとっては、"五輪書"や"孫子"レベルに役立つ程だと個人的には感じています。だって消費者がやって欲しい事や不満をそのまま教えてくれているのですからね...。
MMD研究所さん、ありがとうございます。
この記事を書き始める前までは、この2点にもう少しフォーカスしたかったのですが、アンケート結果を羅列するだけでもかなりの文字数が掛かってしまったので(もう5500文字...)、また追って触れてみたいと思います。
ブラインドタッチのし過ぎで、ハイな感じにキマってきてしまったのでこの辺で。
ではまた明日◎
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