すっかり恒例となった日本テレビの音楽番組『バズリズム02』の新春ランキング企画「2021年コレがバズるぞ!BEST10」が先日オンエアされました。
このブログでもしばしば示唆している日本の音楽マーケットのガラパゴス化がこれでもかと浮き上がってくる興味深いランキングだと思っていまして、毎年楽しみにチェックしています。(ランキングをあとで見るだけでオンエアは見ていないのですが...。汗)
ブレイクの的中率が高いランキングとして不動の地位を確立した感もあるかと思いますし、私もそのムードに異論はありません。
という事で、今日はこのランキングを振り返りつつ、その所感や
「では何故に的中率が高いのか?」
というお話をしてみたいと思います。
【目次】
バズリズム02「2021年コレがバズるぞ!BEST10」について
2015年より日本テレビ系列で放送開始されたバカリズムが番組MCを務める音楽番組『バズリズム02』(開始当初は『バズリズム』)内で2016年よりスタートしたランキング企画。
「コレがバズるぞ!」という企画名称の通り、その年ブレイクするアーティストを占う新春企画として人気を博しています。
2016年にはWANIMA、2017年にはヤバイTシャツ屋さん、2018年にはCHAI、2019年にはKing Gnuが1位に輝くなど、数多存在する"ネクストブレイクアーティスト企画"の中でも特に高い信頼を得ており、一般視聴者だけでなく、音楽関係者からも高い注目度を持つコーナーとなっています。
ランキングは音楽関係者へのアンケート調査によって算出されているという点も、高い信頼性を裏付けています。
2021年コレがバズるぞ!TOP30
2021年ランキング
では今年2021年に同番組で発表されたランキングを見てみましょう。
1位〜30位までズラリと並べてみます。
- 1位:Vaundy
- 2位:藤井風
- 3位:YOASOBI
- 4位:-真天地開闢集団-ジグザグ
- 5位:オレンジスパイニクラブ
- 6位:yama
- 7位:PEOPLE 1
- 8位:小林私
- 9位:Maki
- 10位:東京初期衝動
- 11位:フィロソフィーのダンス
- 12位:ヤユヨ
- 13位:Hakubi
- 14位:あぶらこぶ
- 15位:どんぐりず
- 16位:kojikoji
- 17位:BEYOOOOONDS
- 18位:Rin音
- 19位:climbgrow
- 20位:GEZAN
- 21位:gato
- 22位:Rina Sawayama
- 23位:Saucy Dog
- 24位:Omoinotake
- 25位:超能力戦士ドリアン
- 26位:Wool&The Pants
- 27位:kobore
- 28位:羊文学
- 29位:Friday Night Plans
- 30位:sui
「全部知っているぜ!」
という方は相当なラヴァーです◎
何しろ私は1/3くらい知らないアーティストでした。汗
(予想以上にガラパゴス化が進んでいるようで)
2021年TOP30を受けての所感
ネクストブレイク系のピックアップ企画で言うと、Spotifyによる「Early Noise」が同等に信頼度が高い印象がありますが、バズリズムの方は地上波放送という事もあってかマス向けな特色を持っています。
その為、しばしば、
「今頃かよ...。苦笑」
と音楽ファンから揶揄されたりもしていますよね。
今回で言えば3位のYOASOBIがランクインというのは流石に違和感がありますね。苦笑(紅白に出てますし。)
とはいえ、1位のVaundyは絶妙にちょうど良い所を突いているとも思います。
特に2019年のKing Gnuの時に言われていたような強い"今更感"もなく、業界内やコアファンにとっては"当然"という塩梅の良い落とし所な気がします。(地上波的に。)
前回2020年が"ブレイク"という意味では少々信頼感を減退させる結果になったきらいも感じるので、今年は番組としてもハネて欲しい所だろうと邪推もしてしまいました。苦笑
また、率直に「ソニー系列のアーティストがやっぱり多いなぁ。」とも感じました。
近しい人には飲みの席などで極論的に毎度言っている事なのですが、近年はソニーが強過ぎて近い将来、ビッグセールスを持つ国内アーティストのほぼ全てはソニーになるのではないかと極端な予想をしているくらいです。
個人的な好みの話をすれば、フィロソフィーのダンス、gato、羊文学が入っていたので、それは普通に嬉しかったです◎
ランキング信頼度についての推論
"シンパの多さ"という業界の原理に基づいたランキング作り
ここからは冒頭に書いた「では何故に的中率が高いのか?」についての推論です。
「コレがバズるぞ!」の最も特徴的な点は、音楽関係者へのアンケート調査をもとにランキングを作成している事かと思います。
2021年については149人にアンケートを実施しているとの事です。
私も(確か)2度ほどこのアンケート調査に回答をした事があります。
クローズドな業界なのでその内容については触れることを控えますが(そろそろそれも修正していかないと時代に取り残されるようには思っていますが)、音楽関係者からのアンケート結果をもとにランキング作成されているのは間違いありません。
しかしながら、
「音楽関係者は音楽や流行を見る目が優れているからランキングの信頼度が高い。」
という話ではないと私は思っています。
むしろ、ライブハウスに足繁く通うコアファンの方がよほど詳しかったりもしますし、"売れる"を見極める嗅覚はそんなファン(特に女性ファン)の方が数段優れていると個人的には思っています。
(加えて、前提として商業規模の大きな会社に所属する関係者はブレイク前のアーティストにあまり詳しくない方が多いです。)
ではどのような理由だと考えるかと言うと、"関係者"に聞いているという意味合いを突っ込んで考えると見えてきます。
影響力にかげりがあるとは言え、地上波テレビ番組内の企画で、さらに回を重ねるごとにコーナーとしての影響力も増している同企画です。
ランクインした際には、アーティストの大きなブースターになり得ます。
音楽関係者というのは当然、音楽を生業にしている人ですから、何らかの形でアーティストの稼働に関わる業務をしています。
となった場合、今後仕事に繋がる可能性の高いアーティストがブレイクする方が都合が良い面があります。
そういった打算はなくとも、既に関わっていたり面識や好印象のあるアーティストがランクインしてブレイクする方がシンプルに嬉しいです。
(私自身、売れそうかどうかではなく、応援しているアーティスト名をアンケート回答として記入していましたし。)
アンケートによりランクインしたり上位に入るという事は、多くのそういった気持ちを集めたアーティストに有利に働きます。
言い換えれば、多くの"シンパ"を持つアーティストがランクインしやすく、この点に「コレがバズるぞ!」のブレイク確度の高さの理由があると推察しています。
業界内にそのアーティストをシンパとして推す人数が多いという事は、それだけブレイクする可能性(その機会)が高まるという訳です。
こう書くともしかしたら「組織票かよ!」とも受け取られてしまうかもしれませんが、そういう事では全くありません。
新人アーティストの売り出しにおいて、最も重要とされるのが業界内へのシンパ作りとされています。
これを簡単に説明をするのなら、例えば全国各地にシンパがいれば、ツアーをやったりプロモーションを各地でしたいタイミングには、「うちのラジオで紹介しますよ!」「うちのお店でインストアどうですか?」「そのタイミングでうちのフェス出演してください!」など積極的なサポートや露出機会を得る事ができます。
もちろん、アーティストが素晴らしければこそ集まるシンパですから、その点は純粋に良いアーティストであるほどに多くのシンパが集まり、集まるほどに成功確度が高まるという構図になっているはずです。
そして、その多くのシンパの力も借りて多くのリスナーの目や耳に届き、好きになるかどうかを決めるのは一人一人のエンドユーザーですし、そこで好きにさせる事ができるかどうかはアーティスト次第です。
「コレがバズるぞ!」の私の読み解き方としては、そんな感じに業界内でシンパを多く抱えているアーティストが浮き上がるランキングとして見ています。
番組側がどこまで自覚的にこの関係者アンケートによるランキング作りを採用したのかは分かりませんが、ヒットを読むには非常に理にかなった作り方だと私は感じています。
適度に鈍感なランキング
おまけの補足的に、この番組放送後にしばしば湧き上がる
「今更かよ!」
の理由についても簡単に触れてみます。
言うまでもなく、人それぞれ好みがありますし、それにより所属する界隈(クラスタ)も異なり、音楽関係者で言えば仕事として関わる売上規模でも注目するアーティストの規模感は変わってきます。
そのため、小規模のライブハウスに足繁く通っていたり、Spotifyのプレイリストを片っ端からチェックしているような人にとっては、そうでない人やそういった尺度で選んでいないランキングは物足りなく感じるはずです。
度々になりますが「コレがバズるぞ!」は地上波テレビですから、ある程度はマスを意識した番組作りをする必要がありますし、尖った最先端なものやマニアックばかりがズラリと並んだランキングを作るわけにはいきません。
例えるなら、前述したSpotifyの「Early Noise」がピッティだとすれば、「コレがバズるぞ!」はピッティでバイイングしたセレクトショップのような違いがあるかもしれません。
具体例を挙げると、2018年に1位となったCHAIは、当時関係者や多くの音楽ファンにとって"満場一致"と言える勢いがありましたし、まさに多くの「今更かよ!」の声も上るほどでした。
しかしながら、例えば翌年のKing Gnuと比較してしまうといわゆるそのバズの大きさには開きがあります。
番組上求めるバズというものが、仮にKing Gnuや髭ダンレベルであるとすれば、ある程度「今更かよ!」と突っ込まれるくらいの嗅覚の鈍さは必要だと思います。
(CHAIですら、マスを考えるとある程度限られたグルメな人でないと堪能しきれない部分がありますし。)
メイン視聴者層に対して、ランキングがさっぱり分からないものでは番組が成立せず、「私の好きなバンドが入ってるー!」と共感してもらえるものを作るが時代的にも最良だと思いますし、そういった目線でも今年はかなり共感性の高いランキングになっているようにも感じます。
最後に(まとめ)
"元来ゴリゴリの尖り系男子(音楽の好みが)の私"と、"後天的に「マスやヒットも意識する必要がある」という考えに至った私"というせめぎ合いがまだまだ若輩の私には共存しているので、書いていてなんだかモヤモヤというか煮え切らない手応えを感じてしまいましたが、忖度なしに素直な気持ちを言うと、「リスナーとしては興味のないランキングだったけど、音楽関係者としては興味深い。」そんな所でしょうか...。
まだどうしても商業臭を受け入れきれない部分がある青二才なんだなと再確認ができましたし、書いている時のモヤモヤはきっとランキング内容そのものにグッときていないからなのでしょうね...。
ともあれ、フィロのスと羊文学とgatoにはグッときていますし、さっき松屋で牛丼食べていたら店内BGMで羊文学のメジャーデビュー楽曲が流れていたのですが、 「マジでこの路線ならイケるんじゃね?」とも思った今日この頃でした。
ではまた明日◎
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