TINY MUSIC LIFE

音楽を仕事にする方法やビジネス論、考察や小ネタなどをお届けする音楽情報ワンパーソンメディア。by TINY RECORDS八木橋一寛

日本のガラパゴス化を浮き彫りにした2020年世界のアルバムセールスチャートTOP10

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筆者が紛れ込んでしまったことをお許しくださいませ...。

2020年のアルバムセールスの年間グローバルランキングがつい先日、発表されました。

 

このランキングは、IFPI(国際レコード・ビデオ製作者連盟)による「IFPI Global Album Sales Chart」というもので、世界中で販売されたCDやレコードなどのフィジカルアルバムのセールス数と、デジタルアルバムのダウンロード数を合算して作成されています。

 

つまり、2020年の世界のアルバムセールスチャートという形ですね。

 

ひと昔前なら、セールスチャート=人気と受け止めても大きな間違いは無かったかと思いますが、時代は既に"所有"の時代ではありません。

 

今回発表されたトップ10のうち、日本のアーティストの作品は3作品ライクインしています。

しかし、もちろんのこと、世界中で買われた訳ではありません。

 

日本のガラパゴス化により、「CDは日本くらいでしか売れていない。」と揶揄される状況は何年も前から続いていますが、顕著にそのことが表れた結果として、このランキングは興味深いものでした。

 

そんな訳で、早速ランキングを見ていきましょう。

 

 

IFPI Global Album Sales Chart 2020(2020年世界のアルバムセールスランキング)

 こちらがそのランキングトップ10となっています。

  1. BTS『MAP OF THE SOUL : 7』
  2. BTS『BE (Deluxe Edition)』
  3. 米津玄師『STRAY SHEEP』
  4. Taylor Swift『Folklore』
  5. BLACKPINK『The Album』
  6. AC/DC『Power Up』
  7. Justin Bieber『Changes』
  8. BTS『Map Of The Soul: 7 -The Journey-』
  9. 嵐『This Is Arashi』
  10. King Gnu『Ceremony』

 

BTSが3作品、日本のアーティストが3作品、BLACKPINKが1作品と日本と韓国だけで7作品がランクインされ、英米のアーティストの作品は3作品のみに留まっています。

 

改めて書きますが、こちらは"セールス"のチャートです。

この後それを含めたチャートも載せますが、ストリーミングは除外したものとなっています。

 

加えて、私個人の見解や所感を示しておきますと、

「2020年に音源を買うっていったい何事?」

少々極端な表現を選んでいますが、そのくらいに今の時代に売り切り型の音源を購入する事に違和感を覚えています。

 

アナログレコードを万枚単位で所有し、好きが高じて自営業でレコード屋を開業し、レコードでDJを20年以上やっている私ですらそう思ってしまうのです。

 

先日、渋谷に行った際に久しぶりにタワーレコードの前を通った時には、率直に「CDショップで買うものってまだ何かあるの?」とさえ思ってしまいました。

 

こう書くと、CDやレコードを今も買い続けている方からヒンシュクを買ってしまうかもしれませんが、10年以上前に自営のレコード店を廃業するに至る過程で、売り切り型の音源が売れない時代に突入した事を肌で感じ、身を切り裂かれるくらいに辛く悲しい思いは散々しましたので、お気持ちは理解した上での達観という事でご容赦とご理解いただけますと幸いです。

 

話をランキングに戻します。

これを見た欧米の音楽ファンの方が、全く目にした事がないアーティスト名が3つランクインしているのを見て(日本の3組)、どう感じるのかシンプルに気になるところです。

やはり私と同じように、「音源を買う人なんてまだいるの?」と、セールスチャートという形式そのものに全くなんの関心も持っていないのでしょうか...。

 

IFPI Global Album All Format Chart 2020(ストリーミングを含めたランキング)

続いて、ストリーミングセールスを加えた「オールフォーマット・チャート」のトップ10を見てみましょう。

  1. BTS『MAP OF THE SOUL : 7』
  2. The Weeknd『After Hours』
  3. Billie Eilish『When We All Fall Asleep Where Do We Go?』
  4. BTS『BE (Deluxe Edition)』
  5. Harry Styles『Fine Line』
  6. Post Malone『Hollywood's Bleeding』
  7. 米津玄師『STRAY SHEEP』
  8. Justin Bieber『Changes』
  9. Taylor Swift『Folklore』
  10. Dua Lipa『Future Nostalgia』

BTSが1位という事に変わりはありませんが、それ以外は大きく顔ぶれが変わりました。

BTSが2作品、日本からは米津玄師のみ、そのほかの7作品は欧米のアーティストがズラリと並びます。

 

ビリー・アイリッシュやハリー・スタイルズ、ジャスティン・ビーバー、テイラー・スウィフト等々、若年層からも支持の厚いインフルエンサー的な側面を持ったアーティストが目立っている印象です。

 

先ほどのストリーミングを含めない売り切り型のチャートと比べると、どちらが時代を反映したチャートかは一目瞭然です。

 

もっと言えば、いずれもセールスを指標にしたチャートな訳で、これさえもおそらく多くの世界中の若者にとっては腑に落ちないチャートかもしれません。

 

また、日本のみのセールスだけでここでも7位に米津玄師がランクインしている事からも、日本が他国に比べまだどれだけCDが売れている国かという事がうかがい知れますね。

 

最後に(まとめ)

と、今回は2020年の世界のアルバムチャートを一緒にご覧いただきました。

 

私個人として大きく感じたのは2点。

一つは、もはや売り切り型の音源セールスは、もはやなんの指標にもなり得ないという事。

もう一つは、ビジュアルで訴求可能なインフルエンサー型のアーティストの強度の高まりです。

 

私自身は日本の音楽のガラパゴス化は、中長期的には日本の音楽ビジネスと音楽カルチャーのどちらにとっても良策では無いというスタンスでして、極論言えば、CDを主要な収益モデルとして売ろうとするのはすぐにでもやめた方が良いと考えています。

(アナログレコードのように、ファンサービス品や一部のマニア向けに製造・販売するのは良いと思っています。)

 

そして、BTSの大躍進から感じるのは、ダンス(ビジュアルの訴求)の重要度の高まりでした。

何しろ私のような40を超えたおじさんが見ても、「Dynamite」のダンスはワクワクもしますし、真似したい気持ちにもなりますし、何度も繰り返し観てしまいます。

(ライブハウスの空き日にみんなで練習したいくらいです。笑)

 

音源でもコンサートでも収益化が困難な風向きの中、音楽に加えて映像がエンタメになっているダンスであれば、リアルなライブでなくとも課金もしやすいでしょう。

ビジュアルや映像を活かしてインフルエンサー化ができれば、集金ポイントは音源やライブ以外にも設計しやすくなります。

 

と、最近は音楽エンタメの光明を"ダンス"に感じていたもので、あくまでも私見ではありますが、そんな風にも思ったりしていましたので、詳しくはまた別途書いてみたいと思います。

 

ではまた次の記事で◎

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