TINY MUSIC LIFE

音楽を仕事にする方法やビジネス論、考察や小ネタなどをお届けする音楽情報ワンパーソンメディア。by TINY RECORDS八木橋一寛

【Artist File③】THE BLUE HEARTS(ザ・ブルーハーツ)から受けたロックンロール原体験

f:id:TinyBicycleClub:20200921141944j:plain

それぞれに、大きな影響を受けたり気持ちを救われたり、数年、数十年後に振り返ってみても、自分にとってその大きさを実感させられる存在があるはずです。

 

ファッションやアート、映画や本など、その対象は様々です。

私の場合、その最たる存在がTHE BLUE HEARTS(ザ・ブルーハーツ)でした。

 

何しろ社会現象的な人気や話題性を持っていたので、きっと同世代(私は1978年生まれ)の方の中には、同じように感じている方も少なくはないはずです。

  

そんな訳で、The Stroke、FOUNTAINS OF WAYNEと過去2度書いてきたアーティスト単体をピックアップしての考察やレビュー、当時の思い出などを綴っていく【Artist File】企画の3回目として、ザ・ブルーハーツについて書いていきたいと思います。

 

↓過去記事はコチラ↓

 

 

ザ・ブルーハーツ基本情報

f:id:TinyBicycleClub:20200921110101j:plain

出典:https://www.jpopasia.com/

メンバー

甲本ヒロト(Vo.)

真島昌利(Gt.)

河口純之助(Ba.)

梶原徹也(Dr.)

 

バイオグラフィー

1985年2月に甲本、真島を中心に結成。同年4月に初ライブ、マネージャーとしてバンドに関わっていた河口が前メンバーの替わりにベースとして加入。

翌年1986年に梶原が加入し、パーマネントなメンバー編成に。

 

1987年2月に「人にやさしく」を自主制作盤として発売したのち、同年5月に「リンダリンダ」でメジャーデビューし1stアルバム『THE BLUE HEARTS』をリリース。

 

1995年の解散までに、17枚(メジャーでは14枚)のシングルと8枚のアルバムを発表。

 

ディスコグラフィー

今の時代、テキストで楽曲内容をレビューせずとも配信サービスで聴いてみれば済む話なので、レビューではなく、思い出・思い入れ話を中心に全8作品を時系列順にご紹介していきます◎

 

THE BLUE HEARTS - ザ・ブルーハーツ (1987)

「リンダリンダ」「終わらない歌」「未来は僕らの手の中」「ダンスナンバー」など収録した大傑作1st。

 

おそらく人生で一番沢山聴いたアルバムです。

アラフォーの私ですら9歳という子供過ぎる頃に発売されたので、初めて聴いたのはその少し後の数年後の小6の頃。

アルバムの前にシングルの「リンダリンダ」の短冊CDを買ったように思いますが、当時は歌詞などは良く分からないものの、それまで知っていた音楽CDとは全くの別物のように感じ、以降は狂ったように毎日一日中ブルーハーツを聴く生活が始まりました。

 

中学生になり思春期に入ると、中でも「世界のまん中」「少年の詩」「街」などの歌詞から、「なんて俺の気持ちを分かっている人たちなんだ!」と更に傾倒をしていく事に。

 

全アルバム中で最も直接的なメッセージ・ソングが並び、シンプルな演奏やアレンジによってその歌詞や"うた"の際立ちが最大の魅力です。

 

そしてもう一つ、「俺にもこんな風なバンドが出来るかも!!?」そんな気持ちを与えてくれた事。

個人的にブルーハーツは音楽性やマインド的にもあまり"パンク"文脈には入らないと思っているのですが、この「俺にもやれそう!」という気持ちにさせた点についてはパンク的な物を強く感じていました。

 

 YOUNG AND PRETTY - ヤング・アンド・プリティ (1987)

サウンドの意匠としては70'sパンク色も濃かった1stから、より歌メロの立った楽曲が増えた印象で、「キスして欲しい」「星をください」あたりは口ずさみやすい秀逸なポップソングとして機能しています。

 

一方で、「ロクデナシ」「ロクデナシⅡ」「チューインガムをかみながら」など1st以上に若者にとって具体性のあるメッセージを込めた楽曲も目立ち、当時連載中だった漫画「ろくでなしブルース」との相乗効果もあって、まだまだ全国に存在したヤンキーの血を特にたぎらせたアルバムのようにも感じていました。

かくいう私も恥ずかしながら、中学生当時はほどほどに素行が悪かったので、このアルバムの歌詞は最もグッと来ていて(特に「ロクデナシⅡ」は響き散らしました)、おそらく先生に文句を言う時の言い回しや根拠はかなりこの作品に求めたり引用していた記憶があります。苦笑 

 

かなり普遍的で真理めいた内容を歌っているので、今聴いてもどの世代にも共感出来るとも思っています。

 

TRAIN-TRAIN - トレイン・トレイン (1988)

この3rdまでは小6〜中1にかけて後追いで聴いた事から、自分の中では初期3部作的な位置付けになっています。

そんな思い入れを抜きに客観的に見ても、ここまでの3作品は掛け値無しに傑作だと思えますし、パブリックイメージとしてのブルーハーツはここまでの3枚からなっていると思います。

 

タイトル曲 「TRAIN-TRAIN」の歌とピアノのイントロは衝撃的でしたし、「僕の右手」も抽象的ながら強いインパクトを受けました。(ブックレットのイラストもめちゃくちゃ好きでした。)

 

今作で象徴的だったのは、「青空」「ラブレター」といったバラードの充実ぶりで、特に「青空」は思春期真っ只中の自分には深く突き刺さりました。

 

BUST WASTE HIP - バスト・ウエスト・ヒップ (1990)

昔の記憶がどんどん消えていくタイプなのでおぼろげな所も多いのですが、初回限定のプラケースで買って今でも持っているので、この作品からリアルタイムに聴くようになったはずです。

 

前作から顔を覗かせていたブルースやソウルなどルーツ色も強まり、河口純之助による初ボーカル曲「真夜中のテレフォン」ではスタックス・ビートだったり、「ナビゲーター」ではハワイアンなギターによる牧歌的な一面も見せるなど、意欲的でバラエティに富んだアルバムになっています。

円周率をひたすらメロディに乗せて歌う「キューティパイ」「殺しのライセンス」も挑戦的で印象的でしたが、やはりこの作品と言えば「情熱の薔薇」

 

冒頭の

「永遠なのか本当か 時の流れは続くのか いつまで経っても変わらない そんな物あるだろうか」 

はロック史に残るパンチラインだと個人的には思っていますし(1位は反町の「ポイズン」で決まりでしょう。汗)、たった1度のサビ(コーラス)でのカタルシスにはブルーハーツ史上随一の感動があります。

 

HIGH KICKS - ハイ・キックス (1991)

発売を心待ちにCDショップへダッシュして手に入れ、CDデッキに入れた日を昨日のようにとは言えませんが、鮮明には覚えています。笑

1曲目の「皆殺しのメロディ」で「お!この感じ戻ってきた!」と期待が高まったものの、最後まで聴き通してみると正直な所、少しがっかりというか肩透かしをくらったように感じてしまいました。

ただ、中学生の私にとってブルーハーツは神様のように心酔していたので、同じくブルーハーツ狂(教?)の友人にもがっかりしたという気持ちを言えずに、「最高だったな!」と嘘をついてしまっていました。。。(確かセールスもあまり良くなかったと思います。。。)

 

とはいえ、「HAPPY BIRTHDAY」「TOO MUCH PAIN」など聴き所は十分にありますし、クレイアニメみたいなジャケットも好きではあるのですけどね。

 

STICK OUT - スティック・アウト (1993)

6枚目にして一番好きなアルバムです。

これが出た時には前述の友達とも「来たな!!」と騒ぎ散らしました。

 

その後のTHE HIGH-LOWS(ザ・ハイロウズ)に通じる、より広い対象が共感できる抽象的で日本語遊び的な歌詞も見受けられ(忌野清志郎的と言いますか)、全編通してかなりキャッチーな楽曲が並びます。

「夢」のCMタイアップなども手伝いセールス面でも存在感を再び示した作品になりました。

 

「旅人」「台風」「すてごま」「テトラポットの上」等々名曲揃いではありますが、個人的には少々キャッチー過ぎるきらいも感じるところがあり(それでも最高ではあるのですが)、「インスピレーション」での河口純之助のコーラス部分や、ファンの中でもフェイバリット・ソングに挙げる人も「1000のバイオリン」に特にハマって何百回も聴きました。

しかしながら本作のみならず、ブルーハーツ全曲中でのフェイバリットは「月の爆撃機」で、当時は延々とこの曲をリピートして聴き続けていましたし、やはり今聴いてもすごい曲だと思わされます。

 

DUG OUT - ダグ・アウト (1993)

アップテンポな楽曲が揃えられた前作『STICK OUT』と、スロー&ミディアムを中心とした本作は「合わせて1つのアルバム」と甲本ヒロトにより事前に公言され、リリースされました。

 

オーケストラやボコーダーを使用したオープニングナンバーの「手紙」は、これまでのイメージを良い意味で裏切った中期ザ・ビートルズ・マナーなキャリア中でも屈指の名曲だと思っています。

 

「雨上がり」「緑のハッパ」「ムチとマント」「パーティー」などからは、ヒロト&マーシーがクロマニヨンズに至る現在まで、単なるパンクやロック・アーティストとしてだけでなく、優れたポップミュージシャンとして走り続けられる理由が分かる気がします。

 

『STICK OUT』の影に隠れてしまっている印象がありますが、好みを選ばず多くの人が聴ける名盤だとおすすめできます◎

 

PAN - パン (1995)

ラストアルバムという扱いにはなりますが、個人的にはこれはイレギュラー作品という位置付けで、オリジナル・アルバムとは捉えてはいません。。。

 

というのも、

「レコード会社との契約が残っていたため、仕方なく作った」

と甲本ヒロトが話していた通り、解散決定後にメンバーで集まる事なく、4人がそれぞれ製作して持ち寄った楽曲をコンパイルした内容となっています。

 

ビートルズの『ホワイトアルバム』を共通コンセプトに作られている事もあり、ブルーハーツとしての期待を持たずに聴いてみると、実験的で聴くべきところはあると思っています。

 

世代の代弁者としての初期〜中期

同世代の人あるあるだと思われますが、小学校・中学校と、学校の机にはかなりの高確率で、「THE BLUE HEARTS」とか「BOØWY」、「JUN SKY WALKER(S)」といったバンド名が掘られまくっていました。

私自身、ブルーハーツを認識したのは学校の机に掘られていた事からその名を知りました。

 

先のディコグラフィーで触れた通り、彼らのデビュー時はまだ私は9歳だったので、世代というには少々間に合ってはおらずで、4作目以降で思春期にジャストぶち当たるという滑り込み世代に当たります。

 

反抗期真っ只中で「大人なんてクソだぜ」と正しくグレてしまっていた為、ブルーハーツを初めて聴いた時には「ウソだろ...?」と思う程に、自分の気持ちを代弁してくれていると感じました。

周りにはボウイやジュンスカにそんな風に自己投影する友達も沢山いましたが、自分にはブルーハーツしかどうにも刺さらず、小6〜中3くらいにかけては、ほぼブルーハーツ以外の音楽を聴いていませんでした。(自分の部屋もブルーハーツのポスターや切り抜きだらけという)

 

等身大かつ若者に向けた讃歌的な側面の強い初期3作は、まさに世代を代弁した作品でした。

 

ブルーハーツを評した発言として、スピードワゴンの小沢一敬のこの言葉にいたく共感したのですが、

「俺らの世代でダウンタウンとブルーハーツの影響を受けていない人はいないと思う」

これは本当にその通りだと思います。

"俺らの世代"どころか、"それ以降の世代"と言い換えても良いくらいに感じます。

もちろん両者共にピークアウトしているので、下の世代が直接的な影響を受けたとは言えませんが、彼らが発明や開拓をしたフィールドを基に以降のカルチャーが成り立っている所は多々あるはずです。

 

と思い入れが強すぎて脱線しましたが、私が小中学生の頃にピークを迎え、高校生の頃には解散してしまった為、ライブを観に行く事は叶わず、初めてヒロトとマーシーを観れたのは、THE HIGH-LOWS(ザ・ハイロウズ)の最初のツアーでした。

 

この頃は既に完全なるポップ・ミュージシャンとして楽曲やパフォーマンスも確立されており、世代の音楽として熱くなるものは感じることはできませんでしたが、それをネガティブに感じることはなく熱狂させてくれました。

 

2010年のMODS MAYDAY(モッズメーデー)ではネアンデルタールズというクロマニヨンズのメンバーによる変名バンドで出演し、ザ・フーやザ・ローリング・ストーンズなど往年の名曲のカバーを披露したり、私がレコード店で働いていた時にはマーシーがザ・ジャムの紙ジャケBOXか何かを購入した次の日にヒロトが同じ物を買いに来るなど、根っこはずっと自分と変わらぬただの音楽キッズなんだなぁと嬉しくなったものです。

 

稀代のポップアーティストとして

中期以降はストレートなメッセージも残しつつ、以降のハイロウズ、クロマニヨンズにも通じるような抽象的なワードセンスや言葉遊びが顔を覗かせてきます。

これはセルアウトでもなんでもなく、キャリアや年齢を重ねた上で初期衝動的なメッセージを放ち続ける方が不自然で不誠実でしょう。

 

当初からメロディラインやフックの作り方は傑出していましたし、アウトプットが変わっただけで、人を惹きつける言葉選びは常人が300年の寿命を与えられても辿り着けないレベルだと思うので(笑)、後期から現在まで続く表現の方法論は完成された独自のフォームとして見事で美しいです。

 

これを書いている間ずっと改めてザ・ブルーハーツを聴いているのですが、ほぼ全曲と言って良いくらいに、最初のAメロに乗せる歌詞にその曲で伝えたい事、もしくは一番強いパンチラインが集約されているのでは?と気がつきました。

というか、Aメロがサビのように強い曲が多いからかもしれませんが。

 

人生で初めてのめり込んだ音楽アーティストがブルーハーツで、パンクやロックという側面よりもメロディや歌詞の素晴らしいポップミュージックとして解釈していた為、自分の音楽の好みはメロディ志向になっていったのかなぁ。と、その位大きな影響を受けたのでした。

 

最後に(まとめ) 

そんな感じで6000字を超えるボリュームになってしまいましたが(汗)、人生で最も沢山聴いたバンド「ザ・ブルーハーツ」について、思い出と思い入れオンリーで鬼のブラインドタッチをキメてしまいました。。。

 

強い思い入れを持った方も多いと思うので、「セイセイ、その解釈はどーなのよ?」と感じた箇所もあるかと思いますが、同じバンドを愛した者同士、改めてゆっくり一席設けてカウンターバーなどで語らいましょう。笑

 

ではまた明日◎ 

にほんブログ村 音楽ブログへ

 

↓更新情報やイベント情報、各種お知らせなど情報配信もしています。音楽業界や音楽ファン同士の交流にご興味ある方は、以下のLINE@友だち追加やTwitterのフォローもお願いします◎↓