TINY MUSIC LIFE

音楽を仕事にする方法やビジネス論、考察や小ネタなどをお届けする音楽情報ワンパーソンメディア。by TINY RECORDS八木橋一寛

コロナ禍によるライブハウス/クラブの再アングラ化への期待

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7月以降、東京のライブハウスでもお客さんを入れた営業がパラパラと再開されています。

 

とはいえ、バンドなどのライブとなるとまだその数はかなり少なく、バー営業やその延長上のような緩めのDJイベントがその大半。

 

私も先週、およそ100日振りに客入れで営業中のライブハウス(DJイベント)に行きました。

 

そこで感じた小さな違和感が、ポジティブに捉える事ができそうだったので、今回はそんなお話をしたいと思います。

 

 

ライブハウスの再アングラ化

 

現状の整理

私自身、フリーランスなのでオフィスに出勤する事がそもそも無い為、緊急事態宣言以降は生活必需品の購入時と散歩以外で外出する事は全くありませんでした。

 

人と会って会話をする機会もなく、電話があまり好きでは無い事もあり、外部の情報収集はSNS上がメインな為、タイムライン上に流れてくる情報は音楽好きや音楽関係者など自分に近い属性の方の投稿が大半です。

 

そんな音楽業界贔屓なタイムライン上においても、

「イベントやライブハウス営業はやめて欲しい。」

「やっても良いけど、その様子をSNSにアップしてこれ以上ライブエンタメへの風当たりを強めないで欲しい。」

といった、再開には否定的、慎重派な意見も多く見られています。

 

直接意見を耳にする機会はありませんが、タイムラインという自分に都合の良い情報の集積地でさえ、否定的な意見を散見するくらいなので、一般の方からすると更に否定的意見の割合は高まると考えています。

 

前提として、私自身が一番恐怖に感じているのは病死よりも経済の破綻なので、一貫して過度な自粛には反対というスタンスです。

 

かといって、それを押し通したいとは思っていません。

数パーセントであっても新型コロナで死亡する事を恐れる気持ちも理解できますし、高齢で要介護な父親に感染させたくないという強い気持ちもあるので、100日以上の間、実家には戻らずにずっと自宅で過ごしてきました。

 

緊急事態宣言が解除された以降も、営業自粛を続けているイベント主催者やライブハウスは多くあります。

営業をしてはいけない訳では無いのにです。

 

理由は、政府や各都道府県の要請や制限が出ている事により、それに対応する入場者数制限や環境整備を行うと収益性が極端に落ちる事と、その少ない収益性に対して世間の非難を浴びるリスクが高過ぎて収益見込みとリスクが伴わないからでしょう。

 

仮に指定のガイドラインを遵守した営業を行っても、感染者が出てしまった場合に晒される批判の凄まじさは想像に難くありません。

 

「再開しないと経営が立ちいかないけれど、再開して感染者を出して批判の矢面にたってもまた立ちいかくなる。」

という狭間にイベンターや会場の多くは置かれています。

 

そんなファーストペンギン待ちのような状況だからこそ、SUPERSONICの開催意義の大きさを過去記事でも触れました。

出演・来場への新たな高い敷居

営業を再開しているイベントやライブハウスも当然、そんな世論や空気感は察しています。

だからこそ、多くの飲食店以上に感染対策は細かに行っているライブハウスは多いです。

 

10日ほど前に、実際に一度居酒屋(大規模チェーン店)に久しぶりに行きましたが、入り口でアルコール消毒をする以外は、密集度含め、特に何か対策をしている様子もなく、

「これならライブハウスの方が感染しないんじゃないかな?」

と感じました。

 

そして、先週の100日以上振りのライブハウス。

開催内容はバー営業にDJが数名入るような内容で、平均滞在者数はDJを入れても10名前後。

 

明らかに多くの居酒屋よりも密集度は低いですが、大々的な営業告知や、開催中にイベントの様子をSNS上にアップしていったりという積極的なプロモーションや楽しさのシェアは控えている印象を受けました。

 

理由は当然、”叩いてくる人がいるから”です。

 

その是非は今回の主題ではないので置いておきますが、会場も出演者も来場者も、個人差はありますがそれぞれ幾ばくかの後ろめたさを抱えているように感じました。

これが冒頭に書いた小さな違和感です。

 

同時に、そんなリスクの中、わざわざ出演をしたり来場をする人はこれまでとは違うハードルを一つ越えてこの場に来ているようにも思ったのです。

この事に、ポジティブに捉えられる可能性を感じました。

 

私がクラブやライブハウスに出入りし始めたのは90年代半ばでした。

当時特に深夜のクラブイベントでは、実際に喧嘩も多かったですし、知らないDJなどでも何故か「挨拶しないとヤバイ」みたいな慣習もあったり、今と比べると誰でも行きやすい場所ではありませんでした。(ピースフルなクラブも勿論ありましたが、ファッションやサブカルに無頓着な人はほとんどいなかった印象でした。)

 

その敷居の高さ故に、志や行動力の高い人が集まっていたように思えたのも事実で、その頃を共にした身の回りの友人・知人の多くは、各ジャンルで一定以上の成果をあげています。

 

この敷居の高さを持ったカルチャーは衰退してしまいますが、その後は敷居を下げる事でライト層の取り込みを計り延命してきた側面もあると思っています。

 

「行けば必ずヤバイ奴と知り合える。」

というかつて存在した対価が薄れて久しかった中、先週のライブハウスで会った人達からは、コロナ禍でひっそりと、しかし気概を持ち高い敷居を越えて集まっているように感じました。

 

奇しくもコロナによって生まれたライブハウスやクラブに出入りする為の敷居の高さが、刺激的な人をふるいにかけているような感覚。

 

規制やNGが多いほど反動の大きなカウンターが生まれる土壌になるはずです。

 

「こんな時にこそ、面白いカルチャーがまた出てきてくれるのでは?」

という期待を込めたかなり主観的な展望だと自覚はしていますが、久しぶりにライブハウスに立ち寄ってみて、そんな風にも思えたので楽しみの一つとしてお伝えしてみました。

 

ではまた◎ 

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