TINY MUSIC LIFE

音楽を仕事にする方法やビジネス論、考察や小ネタなどをお届けする音楽情報ワンパーソンメディア。by TINY RECORDS八木橋一寛

娯楽費から通信費へ。音源にかかる支出の感覚の変化について

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レジットカードの明細を見ていてふと思った事があります。

 

「Spotifyなどの音楽配信サブスクリプションの月額利用料金って、登録後はある種無意識に支払っているなぁ。」

と。

 

そして、その支払う感覚としては、スマホやWifi、Dropboxのような通信固定費に近い感覚であるように思ったわけです。

 

この事について不思議な感覚を抱きまして、その不思議をクリアに出来ればと考えてみたいと思います。

 

 

当たり前に必要な音源消費

必要な時のみの消費であった音源消費

この感覚を”無意識”と感じるのは、「毎月決まった金額を口座引き落としで支払っている」ことが要因になっていると思います。

 

これまで音源を好きな時に聴く為には、CDやレコードなどのパッケージソフトを買うかダウンロード購入をするという、特定の作品に対しての消費でした。

 

その曲を「欲しい!」と思って行動に移した時に初めて消費行動に至るわけですから、洋服や食事をする時のように都度消費活動の実感が強くありました。

 

音源の無意識な消費へ

定額制消費のサブスクリプションの台頭で、これを利用する人にとって音源の消費行動は大きく変わりました。

 

利用者が選択するのはこれまでの曲やアーティストではなく、配信プラットフォームです。

 

また、最初にプラットフォームを選んでサービス利用を開始した以降、消費の選択を迫られる事はありません。(サービス利用を辞める時くらいですね。)

 

クレジットカード情報を登録した以降は毎月自動引き落としで支払いを行なっています。

 

もちろん、カードの利用明細を毎月しっかり見れば金銭を支払っている事は認識できますが、作品を選んでCDを買ったりダウンロードをしていない為、その実感はどうしたって薄れます。

 

私の場合、10代20代の頃はアナログレコードに平均して毎月10万円ほどお金を使っていたのですが、「今月はちょっと買い過ぎてお金ないなー。」と思うことも多々ありましたし、”音源にお金を使っている”という実感はかなり強いものでした。

 

しかし、転職や仕事内容の変化もあってアナログレコードを買う事は次第に減り、さらにサブスクの台頭が重なった現在では、月に10万円使っていた音源消費金額はSpotify月額の1000円程度です。(今やCDやレコードは2ヶ月に1枚買うかどうかくらいですかね、、、。)

 

改めてこう考えると、100分の1しかお金を使わなくなってしまったって結構すごい事ですね。。。

 

サブスクの安すぎる月額料に関しては以下の過去記事にもあったので、そちらを参照いただきつつ、今回は無意識な消費に特化して進めます。

数千円の自動引き落としでも、毎月消費してるという実感を強く感じる人も中にはいるかもしれませんが、私も含め利用者の多くはあまり気に留めずに利用と支払いを行なっているのではないでしょうか。(全然使っていなければ気になりますけど、使っていればおそらくは。)

 

近似サービスである有線放送との違い

それ以前からあったやや近いモデルとしては、有線放送があると思います。

月額で利用料を支払うので、近いというかこれもサブスクリプションサービスではありますね。

 

店舗をメインとした印象がありますが、個人ももちろんサービス対象です。

ですが、家で有線放送を聴いている人はなかなかレアな存在だと思います。

 

高校生の頃、友人が「家にUSEN引いたぜ!」と友人を自宅に招いて会心のドヤ顔を披露していましたが、かつてはそれくらい月額を支払って音楽を聴くのはハードルも高く珍しい事だったと思います。

 

有線放送は現在、USENとSTARDAMが2大シェアのようですが、今でもやはり工事などの初期費用もかかりますし、月額も個人でも3000円台、法人だと5000円前後するようです。

 

月額も昨今のサブスクプラットフォームと比べると割高に感じてしまいますし、やはり初期費用が発生するのも気にはなってしまいます。(初期費用無料キャンペーンは頻繁に行なっているようではありますが。)

 

また、試聴スタイルも用意された番組を選ぶ形になるので、受動的なリスナー体験になると言えます。プレイリストやラジオ番組を選ぶ感じに近いですかね。

 

この受動的な形は「知らない曲に出会える」という大きな楽しさはありますが、「聴きたい曲を聴きたいと思ったタイミングで聴く」という欲求には対応していません。

かつてであれば、知らない曲に出会える事はCDを買う行為の手助けになりましたが、特定の音源を買う行為自体が不要になった現在では聴きたいと思った瞬間に聴けない事のデメリットは非常に大きいように思います。

 

というと有線放送全否定っぽくなってしまいますが、1点決定的に良い点はあります。

 

JASRAC(ジャスラック)への著作権使用手続きや支払いを、代行して行なってくれるという点です。

 

個人が家庭で楽しむ際には関係がない話ではありますが、この事が有線放送といえば店舗利用というイメージの理由だと思います。

 

著作権申請をされた楽曲を公衆に聴かせる際には、その著作権管理団体へ使用料を支払う義務が発生します。

 

単純に手間でもありますし、これを例えばUSENならUSENが代行して利用申請と支払い業務を行なってくれるわけです。

 

「Spotifyとか店でかければ良いじゃん」

と実際にかけている店舗もありますが、当然その場合は著作権使用料を管理団体に支払う必要があります。

 

それもあり、公式にアナウンスをしているかはちょっと分からないのですが、Spotifyなどの音楽配信プラットフォームは、プレイリストなど自社サービスの店舗利用を推奨していません。

 

このように、店舗などビジネスシーンでの利用となると有線放送に強みはありますが、個人利用に関していえば、低価格で任意で聴きたい曲を選べる配信プラットフォームに軍配が上がると思います。

 

※ジャスラックについては以下の過去記事も参照いただければと。

無意識でも支払える理由

その低価格さも手伝い、普段は無意識に音源サブスクリプションに月額を支払っていても、もちろんたまにふと思い出す事はあります。

 

ですが、現在も音源サブスク市場は右肩上がりで市場を拡大しています。

これは月額料金の安さ、スマートフォンでも利用できる点が大きいと思っています。

 

他の自分の金銭消費と照らし合わせてみると、このように毎月固定で支払っている消費って、家賃、スマホ代、Wifi代、Dropbox使用料、Adove CC使用料あたりなのかなぁと思います。

 

家賃の場合は消費というよりは生きていく為に必須の支出ですし、感覚的には税金や保険料に近い感覚がありますが、スマホやWi-Fiとは結構近い感覚で支払いをしている気がします。

 

通信費用の定義が難しいところではありますが、ちょっと今調べたところ、音楽配信サブスクリプションの月額は確定申告時などの精算科目的には【支払い手数料】とするのがベターだそうでした。

 

しかしながら、必要な人や情報にアクセスをする事を通信と考えると、必要な音源データにアクセスする訳ですから通信費のような感覚も覚えますよね。

 

音源を聴く必要性を感じている人にとっては、聴くために金銭が発生することになんら疑問も抵抗もないはずです。

 

それがかつての1枚3000円のCDで10曲50分前後の1作品しか聴く事ができなかったのが、1000円足らずで好きな時に何曲でも選んで聴けるのですから、音楽を聴く必要がある人にとっては1000円でその必要性を満たしてくれる訳です。

 

スマホやWiFi環境が必要な支出であるのと同様に、無意識かつ事務的な感覚で、この1000円足らずの月額を支払っていても不思議はないかもしれません。

 

娯楽費から必要な固定支出へ

先にも書いた過去の私の月10万円のレコード購入は、例え音楽を家で聴く行為が私自身にとって必要な消費だったとしても、それはおそらく誰がどう見ても娯楽費になると思います。

 

私自身もだからこそ、月のお財布事情によってはこの支出をセーブしたりして生活をしていました。

 

これが月額で固定化された今、かなりの金欠状態にあったとしても音源サブスクの利用をストップしようとは考えないと思います。(より低価格なサービスを探す事はあるかもしれませんが。)

 

音源を聴く必要性を感じる人にとって、支出が固定化された配信プラットフォームへの月額支払いにより、音源を聴く為の支出=娯楽費という感覚が薄れ、生活に必要な支出になってきているのではないかと思った訳です。

 

冒頭に書いた不思議な感覚というのは、そんな風に長年趣味や娯楽として支出していた感覚が薄まったり変化した事が原因だったのかもしれません。

 

まとめ

今回は、ふと思った音源消費にかかる支出への感覚の違和感の解消を主軸に書いてきました。

 

その楽曲に魂を込めて生み出したアーティストにとっては、インスタントな消費のようで快くは感じない消費の変容なのかもしれません。

 

ここではその是非には言及しませんが、音源に対しての支出が減った分、ライブチケットやグッズ、ライブ配信への投げ銭などの別の消費にフィードバックされている可能性も考えられると思います。

 

ちょっとそんな音源提供事情も考えつつ、たまには「良い曲聴かせてくれてあざす!」と心の中で感謝を唱えるくらいはしてもバチは当たらないと思うので、唱えてみてください。 

 

ではまた◎


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