TINY MUSIC LIFE

音楽を仕事にする方法やビジネス論、考察や小ネタなどをお届けする音楽情報ワンパーソンメディア。by TINY RECORDS八木橋一寛

ミュージシャンが活動時に定義・共有すべき「売れる」というゴール設定

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れたい。

 

バンドマンでも芸人でも役者でも絵描きでも、表現者や芸術家の多くが目指し、願う目標だと思います。

 

しかしながら、ひとくちに「売れる」と言っても、どんな状態を指しているのかは、案外人それぞれだとも感じています。

 

そして、たった1人でこの目標に立ち向かう場合を除き、この”売れるという状況”の認識は必ず統一すべきだと思っています。

 

これをするかしないかだけで、結果が大きく異なってくると私は考えています。

 

今回は、そう考える理由について、書き進めていきたいと思います。

 

 

”売れる”とはどのような状態を指すのか?

まず、このブログは音楽のブログなので、ミュージシャンやバンドマンのケースとして進めていきます。

 

ミュージシャンが”売れる”という状態はどのような事を指すのでしょうか。

 

一昔前であれば、100万枚のセールス、いわゆるミリオンヒットを飛ばすだとか、オリコンチャートで1位を取る、地上波の音楽番組にバンバン出るなど、なんとなくイメージがしやすかったように思います。

 

ですが、音源をリスナーが楽しむ手段が多様化し、かつてのような権威ある音楽番組も無い現在、売れるという状態がやや漠然としたもののように感じられます。

 

一つの到達点として長らく存在した、”メジャーデビュー”も、現在では手放しに喜べるような成功ルートとは言い切れ無いでしょう。

 

そもそも、”売れる”というのはその作品が多く売れるという意味ではなく、”売れっ子”とも呼ばれるように、”人気の度合い”を示した言葉です。

 

知名度は数値化ができるかもしれませんが、人気の数値化は難しいです。

 

そのため、人それぞれの”売れる像”にはズレが生じてきます。

 

「フェスのヘッドライナーになる!」

という人もいれば、

「年収1億円!」

「ドームでワンマン!」

という人もいるでしょう。

 

中には

「バイトをせずに音楽活動で生活ができればそれでも大成功。」

という人だっているでしょう。

 

”売れる”というワードを使用する際、”ゴール設定”と言い換える事もできます。

 

実際に、アーティストや音楽業界の人などとの会話の中でも、それぞれ違うゴールを見ている事を感じます。

 

他愛もない雑談の中でこのゴールがズレても差し支えありませんが、共に目指す場合、このズレはいくつかの支障が発生しますし、統一すれば強い力にもなるはずです。

 

目標の統一(ゴール設定)のススメ

合理的な決断

ミュージシャンは活動を続ける中で、日々いくつもの選択を迫られます。

 

ライブオファーがあれば、”出演するかしないか”という選択をします。

音源のリリースがあれば、”どの曲のMVを作るのか”、”アートワークは誰に頼もう”などの意見を出し合うでしょう。

 

1人だけであれば、その1人の決断で進めていくしかありませんが、バンドなど複数名の場合はそうもいきません。

 

信頼の置ける絶対的なリーダーでもいれば信じて突き進めますが、多くの場合は意見を出し合って決定をするはずです。

 

その際には当然意見の食い違いが生まれる事もあります。

この時に、発言力の強さや多数決で決定をしてしまう事があるとすれば、非常に好ましくないと考えています。

 

”売れる”事を目標に活動をしている場合、全ての選択は”売れる”を(も)意識すべきです。

 

例えば、

「俺はこんな映像が好きだから、この人にMVを頼みたい。」

という意見が挙がったとします。

 

その場合、他のメンバーは

「俺も好き」

とか

「いや俺は好みじゃない」

そんな意見の出し合いになると思います。

 

絶対的に時代感を捉えたセンスや感覚を持った集団であれば、そんな意見の出し合いで決めても良いでしょう。

ですが、”売れる事”を目標にしている場合、マーケティング目線がある方がゴールに近く可能性は高まるはずです。

 

売れる、つまり人気を得るためには、認知がまず必要です。

であれば、どんな映像であれば人の印象に残り、更に人に伝えたい・話題になると思うかを考える必要もあるでしょう。

 

センスや好みで決断をしようとすると意見が異なりますが、その際に多数決や発言力で決断をしてしまうと、このマーケティング目線を欠きがちです。

 

意見が割れた際、

「売れるというゴールを意識して決断する」

という決め事を作っておくだけでも、合理的な決断ができるように思います。

 

加えて、この考え方が統一できていれば、決断におけるミーティングなどの時間も短縮が期待できるというメリットもあるかもしれません。

 

私はしばしばこの事を「組織内で憲法を作る。」と表現していますが、これがあると意思決定の精度や合理性は非常に高まると考えています。

 

もちろん、MV制作は例えばなので、「MVの芸術性だけはマーケティングではなく、好きな表現をしたい。」というのも良いと思います。

 

ミュージシャンはアート活動であることが大前提なので、全てをセルアウトする必要は無いと思っています。(全てをセルアウトして、売れた後に好き勝手やるのは最高にカッコイイとも思います)

 

ですので、大前提として、

「売れる為ならなんだってやる」

のか否かという事や、

「ここは譲らない」

という部分を決めるべきだとも言えるでしょう。

 

解散・脱退のリスク回避

ゴール設定を明確にするメリットとして、解散・メンバー脱退リスクの回避という事もあると思います。

 

ミュージシャンに限らず、複数人で何かをすれば、当然考え方の違いやモチベーションの違いが生まれます。

 

「一緒に売れよう!」

とスタートしたものの、そのテンションに温度差があると温度が高過ぎる人や低過ぎる人は、共に活動がしづらくなっていきます。

 

そうなった際に、往々にして解散や脱退が起こるものです。(もちろんその理由だけではありませんが)

 

明確に、

「ここをゴールに考えているから、その為にはこのくらいの覚悟や努力が必要だ。」

という指針があれば、少なくとも

「自分の理想と違った。」

という事は起きにくくなるはずです。

 

プラスにならない活動の排除

SNSの普及した近年では、ミュージシャンはステージ上からだけでなく、容易にファンやリスナーに発信が行えます。

 

このSNSからの発信には、うまく活用できているケースとそうでは無いケースが確かに存在しています。

 

うっかり失言をして大炎上。というのは論外にしろ、その使い方次第でゴールまでの距離や、そもそも辿り着けるかさえ左右されると言っても良いほどだと感じています。

 

例えば、アイドルなどではエゴサーチをして自分達に関する投稿全てにLikeを付けたりするグループも多いです。

ファンからすれば、本人からアクションがあった訳ですから嬉しく無いはずはありませんし、一層好きになってしまいます。

 

これは分かりやすい活用例ですが、ファンやリスナーには、”して欲しい事として欲しく無い事”があります

 

売れる、つまり人気の獲得を目指すのであれば、して欲しい事は多く行い、して欲しく無い事は極力やらない事は、人気を左右します。

 

中でも、”して欲しく無い”事を行なっているケースを個人的には多く感じてしまっています。

 

分かりやすく極端な例を挙げますが、

「金欠で電話料金が今月払えないかも。」

というツイートは基本的にはあまり見たくはありません。

 

今の時代、ミュージシャンを偶像化するようなファンの取り方はあまりありませんが、それでもファンであれば好きなミュージシャンにはカッコ良くいて欲しいものですし、プライベートの切り売り自体、望んではいない場合が多いと思います。(ある程度大きなマーケットを目指す場合は)

 

逆に具体的な例で言うと、ツイートのようなテキストだけでなく、映像も容易に投稿できる時代のため、未完成な映像コンテンツを公開して損をしているように感じるケースもあります。

 

せっかく良い楽曲や映像(場合によってはレーベルの好プロモーション)でMVがたくさん再生されて話題になったのに、スマホでサクッと撮影をしたような不完全な動画をアップロードして50回再生のような寂しい再生数になっている場合も散見します。

 

最近は特にSTAY HOMEの時代なので、気持ちとして何か動きたい事は非常に共感できますが、”売れる”目線で言えば、不完全な映像の公開や少ない再生数を可視化させてしまう事は、マイナスはあってもプラスは無いとも思ってしまいます。

 

ライブ稼働についても同じようなことがあります。

有名なフェスなど大きなイベントに出演をして話題になったりステータスがせっかく上がったのに、翌月には良いとは言えないラインナップの小さなイベントに出演しているケースです。

 

仲の良いバンドや会場に誘われて。といった理由が想像されますが、これも”売れる”目線で言えばマイナスはあってもプラスは無いと感じています。

 

”売れる”事を優先して考えた場合、露出内容のクオリティや再生数、ライブキャパシティなどは、基本的には”後退”を見せるのは得策では無いと考えます。

 

以前別の記事でも書きましたが、人は人のいる所に集まります。

 

例えハッタリが含まれていても、勢いや右肩上がりにガンガン突き進んでいる姿を見せ続ける方が近道です。

 

気持ちの部分ではこうしたいという事はたくさんあると思いますし、素晴らしい事だと思います。

ですが、その行動は売れる為に必要な行動なのかどうかを照らし合わせる事で、売れる確度と速度を高められるのでは無いかと言う事です。

 

まとめ

かつてほどレーベルが大きなプロモーション予算を割く事も減り、娯楽も多様化をしている今では、分かりやすい成功像をイメージしにくくなっています。

 

反面、局所的な人気や知名度でも十分な収益や達成感を得やすくなっているでしょう。

 

それだけに、”売れる”という言葉が指す状態も多様化していると感じていました。

 

多様化した事で、「必ずこうすれば。」という共通したセオリーも薄まってきていると思いますし、よりケース・バイ・ケースになってきていると思います。

 

今回は

「売れたいと思う場合、どういう状態を売れるというのかを決めておくべき。」

という書き方をしましたが、これが、

「趣味で楽しくやっていきたい。」

だとしても、メンバーで意思統一すべきだと思います。

 

「楽しくやっていきたいけど、できれば売れたいな。」

では売れる可能性は極めて低いでしょうし、賛同者(シンパ)も作りにくいです。

そのあわよくば心が音楽性のブレやメンバー間の不協和にもなってしまうとも思います。

 

良い音楽を作るアーティストには出来るだけ長く活動を続けて欲しいですし、そういったアーティストには出来るだけ掲げた目標を達成して欲しいと思います。

そんな訳で今回はこのようなテーマで書いてみました。

 

この記事での話を要約すれば、

「目標を設定して、到達する為のマーケティングをしましょう。」

という話なので、芸術家・表現者であり、なにより自分ごとであるミュージシャン自らに求めるのは非常に難しい事であります。

 

だから事務所やマネージャーがいるわけですね。

 

ではまた◎


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