TINY MUSIC LIFE

音楽を仕事にする方法やビジネス論、考察や小ネタなどをお届けする音楽情報ワンパーソンメディア。by TINY RECORDS八木橋一寛

「何もしないかめっちゃ何かするかのどちらか」という音楽アーティストへの回答

f:id:TinyBicycleClub:20200829232040j:plain

「何もしないか、めっちゃ何かするかのどっちかかな?」

 

コロナショック以降、ミュージシャンの友人・知人に現状の活動指針などを問われた際にいつも即答している私の回答です。

 

これを言い始めてから3ヶ月は経っていると思いますが、相変わらず、というよりもむしろ今の方がその思いが強まっているかもしれません。

 

というわけで、今日も昨日に続いてスーパー持論タイムとなってしまいますが、そんな話を書いていこうと思います。

 

 

ブランディングや枯渇感の維持

 「何もしないか、めっちゃ何かするかのどちらか。」

という考えに至ったのは、緊急事態宣言というワードが飛び交い始めた以降だったと思います。

 

前提として、これは音楽活動でトップアーティストになる事や、数千人数万人の会場を埋めるアーティストを目指すなど、ある種"狭き門をくぐり抜けた先に目標設定をしている場合"においての考えになります。

 

ステイホームを合言葉に、多くのアーティストがZOOMなどのビデオ会議ツールを用いてライブセッション映像をネット上で公開する流れが始まった頃に少し遡ります。

 

最初は、

「確かにこれくらいしか音楽演奏でファンと時間を共有する方法は今はないかぁ。」

とも思いましたし、それを喜ぶファンも存在しました。私自身も分割された画面内での演奏にはいくばくかの新鮮さや観れる喜びも感じました。

 

ただ、配信や公開される内容ではなく、視聴者数や再生数が同時にとても気になりました。

たとえば星野源さんのような著名アーティストであればその限りではありませんが、私が好んで聴いているいわゆるインディーアーティストに関しては、想像や想定よりもうんとその数字が少ないと感じたのです。

 

「あまり良い兆候ではない。」

 と私は思ってしまいました。

 

MVであれば数万回ほどの再生はされるアーティストでも、数百回〜千回台の再生数に留まる動画を多く見ました。

 

ファンの中にはまるで意に介さない方も多いかもしれませんが、関係者は再生数に限らず数字をとても良く見ますし気にします。

組織に属していれば、その中の個人の評価のみでは通せない話もありますし、そんな際に周囲にプレゼンや説得材料として、フォロワー数や再生数、動員数といった数字が会議のテーブルに上がる事も多々あります。

 

とはいえ、イレギュラーな動画なのでそこまでナーバスになる事はないとも思えますが、これを連発するとなるとネガティブ要素はやはり感じてしまいます。

 

イレギュラーとはいえ、少ない再生数の動画が続いてしまうと、

「人気あると思ってたけど、違ったのか。」

とファンやシンパが不安になる事も懸念されますし、それは求心力やブランディングにも少なからず影響を与えてしまうはずです。

 

また、各々で自室などで撮影した分割画面内でのライブセッションですから、クオリティがそのアーティストの魅力を存分に引き出した物にはなりにくいですし、数回は「観れるだけでも嬉しい!」と思えても、既存ファンがリアルなライブ体験をしていた場合は脳内補完して誤魔化してくれている部分もあるようにも感じたので、やはりクオリティがベストでは無い物はそう多く露出すべきでは無いと私には思えたのです。。。

(音楽・芸術性を強みとしているアーティストほどに。)

 

これはかなり微細な影響ですが、YouTubeも例えばこのブログでも、再生や評価の低い投稿は全体のチャンネル評価が下がり表示の優先度も下げてしまう事もあるので、そんな意味でも望ましくは無いと考えられます。

 

きっかけとしては、この自宅からのライブ配信の流れとここに挙げたような理由から、「何もしないかめっちゃするかどちらか。」と考える発端になりました。

 

表現・活動欲求との戦い

f:id:TinyBicycleClub:20200829231243j:plain

上に書いた事は、おそらく大半のアーティストも懸念を持ったまま配信を行っていたように思います。

 

しかし、何しろ未曾有の事態ですし、日本国中があれだけの期間、外出を控えるよう指示を出された経験はありません。

毎週当たり前のようにライブハウスでライブを行っていたアーティストであれば、ライブをしたい気持ちは高まりますし、1人でもファンが早く観たいと言えばそれに応えたいとも思うはずです。

 

それでも上述の理由から、私の個人的な考えとしては、クオリティが担保できない状況であればグッと堪える方が目標達成の確度は上がるように思ってしまいます。

 

冒頭には「むしろその思いが強まっている」と書きましたが、最近では人数を30名〜50名などかなり制限して観客をいれたライブもパラパラと開催されています。

SNS上では「早くライブハウスでライブが観たい!」といった内容のファンの投稿もかなりの数を見ました。

ただ、通常の数分の一まで下げたキャパシティでも売り切れていない公演がとても多いそうです。

アーティスト側の投稿を見ても「え、このアーティストがこのキャパで売り切れてないの。。?」といったケースも散見しました。

 

これはあくまでも予測でしか無いですが、

「早くライブハウスでライブが観たい!」

というのは紛れもない本心だと思いますが、これは"今"ではなく、

「(コロナが終息したら)早くライブハウスでライブが観たい!」

という意味なのでは無いでしょうか。

 

再生数の話同様、イレギュラーな状況とは言え、動員がうまくいっていないサマを見せるのはデメリットはあってもメリットはありません。

 

これはこのブログでも度々書いている、”人は人の集まっている所に集まる”為です。

多くの再生数や、常にソールドアウトという状況は、飲食店の"行列"に例えることができます。

反対に、少ない再生数や動員を露出する事は、かんこ鳥が鳴く飲食店に近いネガティブなループを生むリスクがあります。

 

そして、「何もしない」側の最も大きな理由は、存分に楽しめない事があるからです。

いわゆるライブバンドであればあるほど、2mの間隔でバミられたスカスカのフロアで歓声も控え、マスクや場合によってはパネルや幕で仕切られた場内でのライブ演奏では楽しみきれない事もあるはずです。

 

日常生活の時点で強いストレスに晒されているケースもあるでしょうし、大半の人はナーバスな状況下です。

仮に観客を入れたライブ演奏がストレスや不満の高まりになってしまうのであれば、無理して今やる事はないと思ったのです。(無い場合は勿論この点は問題ありませんが)

 

どちらにしても、現状の制限下では十分な満足感が得られないのであれば、無観客のライブ配信のクオリティ向上に割り切っても良いかもしれません。

 

心理的に活動を控える事が酷であるのは承知の上で、ブランディングや求心力の維持の為にも、強行して活動を続ける事がストレスを生む場合があれば尚更、今は動かないことも勇気や良策となる場合もあるという考えに至ったのです。

 

一際目を引くチャンスに転換も

f:id:TinyBicycleClub:20200829231221j:plain

”何もしない”の方はおおよそそんな理屈からとなりますが、”めっちゃ何かする”の方もあります。

 

多くのアーティストが活動ペースやクオリティを落としていたり、今は動かないという選択をしているのであれば、ペースアップや高クオリティな配信は一際目を引きます。

 

配信ではリアルなライブに勝る表現が不可能と判断した場合であれば、レコーディング音源のみに注力する期間として楽曲リリースやそのプロモーションプランに時間を割くのも良いでしょう。

もちろん、ライブ配信のクオリティ向上やアイデア次第でアーティスト性を知らしめることも不可能ではないはずです。

 

ただし、これらは基本的には一定の資金のかかる事ではあるので、言うは易し行うは難しです。

 

アーティストのビジョンや性質にもよるので具体的な案は出しにくいですが、認知を高めたり既存ファンとの関係性を強める施策であれば、大きな資金を使わずとも方法は多数あると思います。

 

これもあくまでも持論ですが、(大きな資金力がない場合に)上昇する軌道を作ろうとするのであれば、途切れる事なく良質なトピックを作り続ける事が最良で唯一とさえ思っているので、可能なのであれば、アーティスト性を損なってしまう点にだけ注意をしてトピックを作り続ける事は好機を生むかもしれません。

 

最後に

改めて繰り返し書きますが、"狭き門をくぐり抜けた先に目標設定をしている場合"において、その目標到達の確度を高めるのであればを前提とした場合、「自分だったらどうする?」への今のアンサーというお話でした。

 

「個人的には何もしないかめっちゃ何かするかのどちらか。」

まずアバウトに「どうした方がいいっすかねぇ?」と聞かれた時に、そんな理由からこんな風に答えています。

 

"何もしない"といっても、表向きの不用意な露出を避けるだけであって、水面下でできる事もあるでしょうし、伝え方次第では必ずしも少ない観客や再生数が求心力やブランディングを下げるとも限りません。

 

何しろ異常な状況下にいて多くのストレスや心労を抱えやすい時期なので、裏方目線で書いた際と同様、自分には音楽しかないとは思い過ぎぬよう「死んだら終いや。無茶はよせ。」と書いたニュアンスや、サイボウズの「がんばるな、ニッポン。」というコピーの感覚にも近いかもしれません。

お店や会社が潰れるのと同じように、アーティストであれば解散やモチベーションの低下が一番の大敵ですし、達成の難しい高い志があったとしても、自身を追い込み過ぎずに楽しさはキープすべきだとも思います。

 

これも過去記事の↓同様の話かもしれません。

緩やかにではありますが、強い自粛派の意見にも角が取れて丸みが出てきているようにも感じますし、観客を入れた公演数も増えてきてはいます。

無理はせずに自分の中で思い切りやれると思えたタイミングを見定めて、各々の目標を達成するアーティストが増えてくれることを祈るばかりです。

 

ではまた明日◎ 

にほんブログ村 音楽ブログへ

 

↓今後新たにスタートしていきたい企画やサービス・情報もあるので、以下のLINE@友だち追加やTwitterのフォローもお願いします◎↓