NME JAPANの記事でちょっと興味深いものがありましたので、今日はそのお話を。
元記事は以下の「YouTube、音楽の権利所有者への支払いについて自身の姿勢を説明」という記事。
ここで何が書かれているのか一言にまとめるのならば、
「YouTubeは音楽の権利所有者(アーティストやレーベルなど)に対し、めちゃくちゃお金を支払っていますよ。とYouTube側が言っていました。」
そんな記事です。
記事の中では、「YouTubeからの収益によって、レコードレーベルが2025年までに音楽業界における1位の収入源になり得る」とYouTubeにより作成された証類に書かれていたとしています。
YouTubeのみの収益でそこまで大きな収入源となるかは置いておいて、レコードレーベルが再び音楽業界の収入の柱になるというのは私も同様の見立てでしたので、その点で興味深く、一緒にこの記事を読み解いてみましょう。
「YouTube、権利保有者への支払いについて〜」記事概要
この記事は、イギリスのデジタル・文化・メディア・スポーツ省による音楽ストリーミング経済への調査に対し、YouTubeの公序・政府担当であるケイティ・オヤマが国会議員の質問に回答した内容が元となっています。
この質疑の場にYouTube側が提出した証拠書類には、
「レコード・レーベルは2025年までに音楽業界における1位の収入源になることは可能だということに合意しています」
という記述があり、これに加えてケイティ・オヤマは、YouTubeが2019年に「30億ドル(約3150億円)を音楽業界に渡している」と述べ、この金額はスポティファイを上回るものだとも付け加えています。
一方で、英国レコード産業協会のCEOであるジェフ・テイラーはこれに反論し、自身の体験を「反映していない」と述べたそうです。
ケイティ・オヤマは、YouTubeの音楽業界へ渡す金額は「年々成長しています。」とし、
「昨年2020年の第4四半期について出した最新のプレス・リリースでスポティファイは四半期に10億ドル(約1050億円)を権利保持者に渡していると述べている。
音楽がもちろん大部分を占めるわけですが、ポッドキャストやその他のものもあります」
「なので、そうしたデータを見れば、私たちは1位の収入源に近づいており、間違いなくそうなりたいと思っています。
音楽業界にとって最良のパートナーになりたいと思います。私たちが儲かれば、アーティストが儲かります。
私たちの興味は非常に一致しており、そうありたいのです。私たちはこの産業を成長させたいのです」
このように述べています。
「ヴァリュー・ギャップ」と呼ばれる、スポティファイやアップル・ミュージックが提供している音楽から音楽業界が受け取る金額が少なすぎるとする問題に関してもケイティ・オヤマはこれを否定しています。
国会議員のケヴィン・ブレナンによる「法律がYouTubeへの免罪符になっているか?」
という問いに対しては、「2019年までにYouTubeが権利所有者に120億ドル(約1兆2600億円)を支払っている」とケイティ・オヤマは回答しています。
NMEの記事は、
デジタル・文化・メディア・スポーツ省による調査では新興アーティストはストリーミング・サービスで大物アーティストとの「巨大な競争」にさらされていると指摘されている。
と締めくくられています。
よりカジュアルでインスタントな娯楽としての音楽業界の伸び代
この記事から受けた率直な印象は、「権利保有者に支払われる金額が適正か否かは置いといて、その総額は非常に大きくなっている。」というものでした。
このブログでも、これまでストリーミングによる音楽市場の売上増についても度々触れてきました。
それによって、楽曲の権利保有を巡る各社の争奪戦の激化についても、ボブ・ディランやニール・ヤングの権利売却ニュースと共に触れてきています。
ここで起こるヴァリュー・ギャップについては、再生数に対して権利保有者に支払われる正確な数字やレートを私は把握していないのでなんとも言えませんが、現時点でも成長を続けている事は事実でしょう。
そして、ストリーミングサービスの拡充や発達によって、音楽鑑賞はこれまでの特定の楽曲やアーティストが獲得したファンに向けた娯楽から、より不特定多数に向けたカジュアルでインスタントな娯楽として伸び代があるようにも私は感じています。
ですので、レコードレーベルが音楽業界の収入の柱に返り咲くという未来予測に関しては、概ね同意というわけです。
そのため私自身、音楽業界全体の収益としては、特に懸念や心配する事はないという考えではありますが、NME記事の最後にあった
「ストリーミング・サービスで大物アーティストとの「巨大な競争」にさらされている」
こちらが心配事ではあります。
これについても度々ここで書いてはいますが、現状のストリーミング市場は、既に面を取り切ったアーティストには優しい構造ですが、そうではないアーティストが十分な収益を確保するとなると一変してベリーハードモードになります。
以下の過去記事などでも言及していますが、ライブ配信にしてもMVや音源ストリーミングにしても、そのプラットフォーム上という全く同じ土俵で既存のビッグアーティストと競わざるを得ない状況だとも言えます。
収益構造上も、音源やライブチケットを単体で売り切る形であれば、必要最低限の数量を売り切れば達成できましたが、ストリーミングとなると膨大な視聴数を生む必要が出てきます。
このベリハードモードなフィールドをインディペンデントなアーティストが主戦場にするのは生存確率が低過ぎるので、私個人的にはストリーミングをキャッシュポイントに設計するのはビッグアーティストのみのお話かなぁと考えています。
「では、インディペンデントなアーティストはどこを主戦場にすれば良いの?」
については、私なりの考えはあるにはあるのですが、あまりにも長くなるので今日はこの辺で...。
最後に(まとめ)
最近はこのブログでも、音源の権利ビジネスについての記事が多めですね。
なにしろタイムリーな話に限定するのであれば、ライブコンサートの話をすれば暗くネガティブな話題になってしまいますし、明るい話と言えば音源ビジネスくらいですからね...。
そろそろコロナも関係のない【Works紹介】なんかの記事でも久しぶりに書いてみようかと思います。
ではまた次の記事で◎
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