TINY MUSIC LIFE

音楽を仕事にする方法やビジネス論、考察や小ネタなどをお届けする音楽情報ワンパーソンメディア。by TINY RECORDS八木橋一寛

一発撮りのオーディション「THE FIRST TAKE STAGE」を考える

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うまい具合にサムネを作れた手応えを感じる筆者...

THE FIRST TAKE STAGEの告知をご覧になりましたでしょうか?

 

YouTube上での音楽コンテンツにおいて、現在完全に一人勝ち状態となっている「THE FIRST TAKE(ザ・ファースト・テイク)」によるオーディションです。

 

THE FIRST TAKEについてや、その勢いについては以前以下の記事にまとめていますので、ご存知ない方はこちらを是非ご覧ください。

このタイミングでのオーディション実施というのは、なかなかに攻めていて興味深いと感じたので、今日はこの人気コンテンツ内での新人オーディション「THE FIRST TAKE STAGE」について考えてみたいと思います。

 

 

THE FIRST TAKE STAGEオーディション概要

まずは本オーディションの概要を見ていきます。 

 

以下の公式サイトには、

「まだ見ぬ本物のアーティストに出会うため」

「ルールはTHE FIRST TAKEと同じ。一発撮りのパフォーマンス」

とあり、先行ポイントには

「一発撮りのパフォーマンスを通して、自分の人生を、自分らしく表現できていること。」

とあります。

オーディション優勝者には、

  • THE FIRST TAKEへの出演
  • THE FIRST TAKE MUSICよりデジタルリリース

が与えられ、これが本オーディションの参加意義になります。

 

応募資格や方法など詳細を見ていきましょう。

 

参加資格は、

  • 12歳(中学生以上)~25歳(ご応募時点での年齢) 
  • 国籍不問(日本国内在住の方に限ります) 
  • 性別不問 
  • 特定のプロダクション、マネジメント、 レコード会社、音楽出版社等との契約が無い方

という4点。

 

応募方法は、

  • 一発撮りの歌唱動画をYouTubeに「限定公開」でアップロードのうえ、応募フォームより

とあります。

 

応募締め切りは、2020年12月15日(火)17:00まで

 

審査・選考は2次、3次、ファイナルステージと4度に渡り、優勝者の収録は2021年4月上旬予定となっています。

 

YouTubeの同チャンネル上には、オーディション選考のポイント動画もアップされています。

 

THE FIRST TAKE STAGE を考える

レーベル・マネジメント的収益モデル設計

まず「THE FIRST TAKEがオーディションを実施」という事のみの所感から。

 

過去にこのブログで書いた記事には、

「出演アーティストのレーベルの枠を外せば、よりリーチや影響力の拡大が狙え、このチャンネルそのものから収益化が図れるのでは。」

考察的にはおおよそそんな風な事を書いたと思います。

 

しかし、そうではなく"オーディション"に舵を切っています。

 

「そうきたか。」というのが最初の印象です。

というのも、私の上述の考察はレーベルの垣根を超えた大型音楽チャンネルへの舵きりでしたが、オーディションとなればそれとは真逆です。

 

オーディションという事は、運営会社(明言はされていませんが、ソニーミュージックと言われています)が選考後にそのアーティストを抱えるという事になりますから、チャンネル再生数や視聴者からのダイレクト課金、出演枠の販売といったチャンネルそのものからの収益を取ろうという舵きりでは無いという事になります。

 

つまり、レーベルの垣根は存在させつつ、一定の影響力をチャンネルが持った時点で新たなアーティストの抱え込みを図る施策となるわけですから、ビジネスモデルとしてはレーベルやマネジメント・ビジネスと同様の施策です。

 

もっと言えば、音楽業界全体の盛り上げや底上げという意味合いよりも、一社独占の意味合いが強いです。

 

運営会社を伏せTHE FIRST TAKEという名を立てた施策だったので、私はオンラインベンチャー的にこれを考えてしまっていましたが、オーディション実施ニュースから真っ先に感じたのは非常にレコード会社的な取り組みであったという印象でした。

 

パーソナリティを重視した選考ポイント

もう一点、興味深いのは応募時の動画内容に関する注意事項のひとつに、

「歌唱前にあなたの音楽に対する想いや意気込みをお話しください。」

という一文がある事。

 

更に、上述の選考ポイント動画の5つめには、

「人間として愛されるか。多くの人が愛してしまう魅力を持っている。」

という説明があります。

 

これらは、才能や技術的な項目ではありませんが、私も音楽アーティストに限らず現在もっとも表現者に求められている資質だと感じています

 

製造や飲食業に限らず、音楽業界についてもコモディティ化が進んでいると感じています。

そうなった場合にリスナーがアーティストを愛する動機として、「この人を応援したい。」という心理の占める割合は高まると考えています。

 

では、どんなパーソナリティのミュージシャンに応援心理が生まれるかと言えば、一生懸命ひたむきに夢に向かっている人や、人柄が音楽そのもの以外の差別要素を持った人になってきます。

 

この人柄というのも、一昔前なら"カリスマ性"というパーソナリティに価値高かったと思いますが、おそらく現在では違います。

例えば親しみやすさだったり、時に失敗や挫折もする負け顔を見せてくれるようなパーソナリティが好まれるケースが増えているように感じています。

 

その為のパーソナリティについての言及のように私は感じました。

 

この審査の過程や、優勝後のアーティストプロモーション手法は現時点では分かりませんが、もしそのプロセスを閉じずにオープンに公開するようであれば、この施策が欲している(作りたい)アーティストモデルはきっと、かつてのASAYANだったり近年のNiziU、またはYouTuberやInstagram等のインフルエンサー的な"応援消費"を強く意識していると断じてしまっても良いかと思います。

 

確かに、私が当初推察したモデルよりも、所属アーティストが大きなヒットをする方が大きな収益が取れますので、業界全体やファン目線で見れば大型音楽チャンネル路線に進む方が広がりはありそうですが、運営会社の収益を優先して考えるとTHE FIRST TAKE発信で次世代スターを作り上げる方が良策ですね。

 

奇しくもコロナ禍でオンライン主体となった今、"一発撮り"というコンセプトはどこか物足りなさが浮き上がってしまうライブ配信以上に、手触り感(ライブ感)を感じられるようにも思えるので、"応援"にはとてもフィットしたコンテンツかもしれないなぁと思ったりもしました。

 

最後に(まとめ)

という感じであれこれと思いを巡らせてみましたが、もはや音楽業界に留まらず、エンタメ業界全体を見渡しても最も好調なコンテンツのひとつにまでなったTHE FIRST TAKE。

 

どんなアーティストが応募をして優勝者に選ばれるのかは分かりませんが、おそらく近年行われた様々なアーティスト・オーディションの中でも成功可能性が特に高いものになると感じています。

 

選考段階でもYouTube上で応募アーティストのパフォーマンスは見ることができるようなので、ライブハウスに行けない代わりに、その段階からチェックしてみるのも楽しいかもしれませんね。(ライブハウスは営業していますし、ルール上は行っても良いのですけどね。汗)

 

オリンピックや甲子園、ワールドカップなどスポーツに顕著なように、人間にとって最大の娯楽って応援かもしれませんしね。

 

ではまた明日◎ 

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