TINY MUSIC LIFE

音楽を仕事にする方法やビジネス論、考察や小ネタなどをお届けする音楽情報ワンパーソンメディア。by TINY RECORDS八木橋一寛

「アンテナは鈍るという事を自覚した方が良い」というお話

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アンテナの鈍りと向き合う筆者...

日は、直接的に音楽や音楽仕事に関わる話というよりも、もう少し視点を遠ざけた輪郭のお話をひとつ。

 

「"アンテナ"は鈍るという事を自覚した方が良い。」

という自戒を込めた教訓(?)を。

 

私も齢42にもなりますと、様々な場面で老いを実感するものでして。

常にどこかしらの体の不調もありますし、どこにも不調のない完璧な体調を最後に感じたのがいつだったのかという記憶すらありません。

 

人の名前は全く覚える事もできず、昨日何食ったかさえままならぬ、もしも私の傍に婆さんがいたら、確実に「メシぁまだか?」と毎分訪ねてしまう事でしょう。

 

まあ、こういった老いは分かりやすく自覚できる症状なので良いのです。

問題は"アンテナ"です。

 

アートやカルチャー、エンタメのような明確に良し悪しや勝ち負けの無い世界において、この感度は最重要とさえ言える要素かと思います。

このアンテナ感度というのが厄介で、肉体や記憶力の衰えとは違って衰えや鈍りを自覚することが極めて難しいのです。

 

分かりやすい例を挙げるなら、かつて松本人志が著書で大御所お笑い芸人を指して「裸の王様だ」と指摘していましたが、今やその彼が同じ状態になっています。

(私はほぼ全ての彼の出演作品を観ているくらいに熱心な松本人志フリークですが、それでさえそう見えます。それでも彼はグレートですけどね◎)

 

身近な所に例を探してみても、職場で上司が現代の感性をキャッチできておらず、企画を通すのに難儀した経験を持つ人も少なく無いでしょう。

私自身も、随分とそういった年長者との感性の不一致による不具合やストレスに苦しんだ経験もあります。

 

そんな私も42歳。

自分では、同年代の平均と比べたら体はまだ動く方だと思っていますし、情報や感性も意識的にキャッチし磨くよう心掛けてもいます。

それでも絶対的にアンテナは鈍っていると思います。

 

で、ここからが本題ですね。

鈍るのは当たり前の事なので、さっさとその事を受け入れた方が良いと思うのです。

それを遅らせる努力はするにこしたことはないですが、衰えをきちんと受け入れないとシンプルに周囲に迷惑が掛かります。

 

厄介なのは、特に会社組織などではアンテナの鈍った年長者が裁量権を握っているケースが大半だという点。

若い人の時代を捉えた意見や企画が、それを理解できない年長者に簡単に握りつぶされ、結果、大きな収益の機会を失ったり、若い人のモチベーションや可能性を削ぐという二重のロスを発生させてしまう事が起こり得ます。(音楽業界の場合は未だにSNSを軽視している人も沢山いますしね...。)

 

ここは音楽やその仕事にまつわるサイトなので、音楽の仕事に置き換えます。

レコード会社が音源を売りたい時、事務所がアーティストのライブ稼働や物販で収益化したい時、コンサートプロモーターがライブで集客をしたい時、その核となるアーティストの選定やブランディング/プロモーションはターゲットの需要を的確にキャッチするアンテナが必須です。

(面を取りにいく場合ならまだ良いですが、尖ったことをやろうとするのならよりアンテナ感度は重要でしょう。)

 

ターゲットが40代であれば、42歳の私のアンテナで問題ないかもしれません。

しかし、ポップミュージックは若者による若者の為のものである側面がありますし、日本に関しては少子高齢化が叫ばれる現在においてもメインターゲットは今なお若者です。

 

若者をターゲットにしているにも関わらず、アンテナの鈍りを自覚していない上司や年長者によって、可能性のある企画や未来のアーティストの才能を握りつぶされるケースというのは非常に多いように私は感じています。(あくまでも私はですよ。)

 

と言うと、

「じゃあ、ロートルは仕事に口出しをするなって事?」

という話になってくるかと思いますが、鈍ったアンテナを補うに値する知識と経験で代替できるでしょう。

視点やアイデアは良くても、それを実現する術はやはり年長であればあるほど心得ている可能性は高いはずです。

 

「若者には負けへんで!」

のマインドは大いに結構ですし、私もそんな気持ちを持っています。

ただ、アンテナ(センスや感性)という同じ土俵で相撲を取るべきでは無いというお話です。

 

ひとつ私自身の例を挙げますと、もう10年くらいは前から、私は音楽ライブイベントを主催する際には必ず(する際というか日常的にですかね)、メインターゲットである20台前半のお客さん(特に女性)に意見を求めていました。

アンテナは若者に借りて、それを形にする精度を経験によって高めるといった戦い方です。

ある種のモニター調査みたいなものとも言えますよね。

 

このブログは音楽業界にゆかりの無い方も多く読んでくださっている実感がありますので、そんな方からすると「何を当たり前な。」と思われるでしょう。

そう、ほんと当たり前ですよね...。

しかし、本当に音楽業界の場合、他業種では当たり前のマーケティングやリサーチをしていなかったりもしますし、それ以上に、特定の誰かの裁量権のみで物事が決定する事が傾向として多いのです。

 

裏方の我々は、極端に言えば

「このアーティストが上手くいかなかったから、その経験を踏まえて次のアーティストで頑張ろう。」

で済みますが、アーティスト本人からしたらたまったものではありません。

 

アーティストとしての彼らの人生は一度きりですし、若者をターゲットにする以上はある程度ブレイクスルーを狙いやすい期間は限られてしまいます。

 

それを「私はこの世界をうん十年見てきている。その私がダメだと言うのだからダメだ。」的な根拠のない上司ブロックで潰される事だけは、アーティストの為にあってはならないと思ってしまうのです。

 

あまり長く書くような内容でも無いと思い、かなりはしょった書き方をしているので、私よりも更に年長者の方にとっては不愉快に感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、私自身を心の底からロートルだと認めた上での自虐ですので、どうかお鎮まりください...。

 

何より、アンテナが鈍ったと認めてそこは若者に任せた方が、結果として自分の仕事もスケールやサイクルして得すると思いいますので。

という訳で、私の周りの若い人、引き続き私の代わりに受信してください。笑

 

ではまた明日◎ 

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