TINY MUSIC LIFE

音楽を仕事にする方法やビジネス論、考察や小ネタなどをお届けする音楽情報ワンパーソンメディア。by TINY RECORDS八木橋一寛

【コロナ禍】ライブハウスにおける「営業できるだけでも満足。」というタームの怖さ【東京】

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ロナショックによる緊急事態宣言も明け、多くの業種で営業の再開も始まりました。

 

ライブハウスなどの音楽イベントも地域や店舗によっては、配信での無観客ライブや条件付きでのバー営業もパラパラと再開している様子です。

 

SNSなどを見ていても、多くの会場スタッフや関係者の再開を喜ぶ声を散見します。

もちろん私も喜ばしく感じています。

 

しかしながら、こうも思います。

 

「一定の条件下での営業の再開が出来ただけで、この内容では商売としては成立していない。」

と、、、。

 

 

精神的ストレスからの解放

過去記事でもそのように書きましたが、ライブハウスなどライブ周りの業界で働く人には、非常に強い想いを持って働いている方が多いと思っています。

 

そんな人にとって、最大のストレスは収益の不安以上にライブ営業が出来ない事だったはず。

金銭以上に精神を削られていたように感じていました。(もちろん収入面で本当に追い込まれている人もいると思いますが。)

 

そう感じているからこそなおさら、まずどういった形であれ、営業再開ができる事を喜ばしいと私は感じました。

 

私は今日現在、まだライブハウスなどには顔を出していませんが、再開をした当事者の喜びの表情はSNSを眺めているだけでも痛いほど伝わってきます。

 

”何も出来ない”というストレスや恐怖は音楽業界に限らず多くの人が感じたことでしょうから。

 

戻らない収益

ですが、「金儲けの為にやっているわけじゃない。」としても、継続する為に収益は必要です。

 

コロナ禍におけるライブハウスの状況などは以下の過去記事も参照いただければ。

上の記事にもあるように、換気やソーシャルディスタンスといった解消の難しい課題が存在しています。

 

ライブハウスは定義上”飲食店”ですが、収益モデルとしてはチケット商売となるので、集客可能なキャパシティの減少は売上に直結します。

 

店舗構造や都道府県によっても異なる部分はありますが、2mのソーシャルディスタンスを確保しようとすると、おおよそ10分の1ほどのキャパ設定を余儀なくされます。

 

チケット価格が同一であれば、売上も10分の1な訳です。

 

向き合うべき理想と現実

キャパの減少分だけ売上も下がるという表現をしましたが、それを回避すべく、ライブ配信の動きは高まっています。

 

しかし、アーティストが納得・満足できる映像やサウンドのクオリティを担保する為にはコストもかかります。

何より、ライブ配信に課金するリスナーがどこまでいるのか現時点ではわからない部分が多いです。

 

大局的な視点で言えば、私はライブ配信からの収益化には、非常に高く大きな可能性を持ってはいます。

 

ですが、「日本ではまだCDが売れている。」という論調と同様で、一部のみがその中の大きな売上を構成するように考えています。

 

日本におけるCDセールスは確かに今でも他国と比べ圧倒的な売上を保っています。

ですがそのほとんどはAKBグループや、往年のビッグアーティストによるものです。

 

同じように、ライブ配信も一部の収益増により、全体で見ると成立している形にはなるけれど、大半は不成立になる可能性が高いと考えてしまいます。

 

音楽ライブの場合、いわゆるトップアーティストのチケット代相場は5000〜10000円ほどです。

大きなフェスで活躍しているようなアーティストでも5000円を切る場合も少なくありません。

 

一方で、小規模会場で行われるマイナーアーティストのチケット代相場は2000〜4000円ほどです。

 

会場やアーティスト規模が変わってもチケット代にさほど大きな価格差はないと感じます。

 

このことが成立出来た理由の一つには、ステージと客席の距離があると考えられます。

 

ドームやホールのライブでは、最前列が取れたとしてもステージとは数メートルの距離があります。

ライブハウスは200人程度のキャパであれば最後列からでも10mも離れてはいません。最前列であれば触れられるくらいの距離です。

 

距離も近く、その狭さゆえに場内の一体感もドームやホールのそれとは全くの別物の魅力があります。

 

しかし、配信となれば、そのアドバンテージを失うことになります。

 

トップアーティストと同じ条件でライブの勝負をしなければならないとも言えてしまうかもしれません。

 

さらに、過去記事のノルマの話でもしましたが、ドリンク売上で売上確保を考えてきた会場はその売上を失います。

まとめ

営業再開も徐々に始まり、何も出来なかったというタームは脱しました。

しかし、想いが強いだけに「営業ができるだけでもありがたい。」という空気感を強く感じてしまい、その点は非常に心配です。

 

「ライブ配信に未来を感じる!」

という多くのライブハウスの声を見ても上記のような理由から、

「本当にそうだろうか?」

と思ってしまうのです。

 

厳しい事を言えば、コロナショックで真っ先にクラスター源として名指しされたライブハウスは応援・同情票を得やすい状況にあると言えます。

今のタイミングはまだ、ライブ配信にも投げ銭などで課金も集めやすいかもしれません。

 

「スタンダードになるのでは?」

とまで言われたZoom飲みもあっと言う間にその勢いを失いました。

 

消費者の時間やお金にも制限はあるので、長期間利用してもらう為には、心から消費者を満足させるほかありません。

 

そのことから目を逸らさずにいて欲しいという願いと、自分への戒めも込めて、やや否定的とも取れるかもしれませんが、本記事を書かせていただきました。

 

ではまた◎

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