TINY MUSIC LIFE

音楽を仕事にする方法やビジネス論、考察や小ネタなどをお届けする音楽情報ワンパーソンメディア。by TINY RECORDS八木橋一寛

スパソニ(SUPERSONIC)のクラウドファンディングに委ねられた音楽コンサート再開の未来

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9月に開催予定となっているSUPERSONIC(以下スパソニ)がクラウドファンディングを昨日2020年6月18日正午よりスタートしました。

コロナショック以降、すでに多くの音楽イベントやライブハウスによるクラウドファンディングは行われていましたが、この規模のイベントが主体となった物は私の知る限りでは初めてです。

 

ちなみにこのスパソニの主催会社が私の前職にもなり、色々思うところがありますので今回はこのスパソニのクラファンについて書いていきたいと思います。

 

 

SUPERSONIC(スーパーソニック)について

フジロックと並ぶ夏フェスの代名詞、SUMMER SONIC(サマーソニック)を主催するクリエイティブマンプロダクションによる大型フェスティバル。

 

苗場スキー場という立地や環境に非現実性のあるフジロックに対し、幕張の野球スタジアムや幕張メッセという都市部からの距離も短く整備された環境下で開催される都市型フェスとして打ち出しています。

 

2000年より毎年8月に東京と大阪でラインナップを入れ替え同時開催されるサマーソニックですが、2020年は東京オリンピックとの開催時期のバッティングにより開催を見合わせ、代替する形で9月にSUPERSONICと名称を変え開催が予定されています。

 

海外アーテイストを中心とするラインナップにも特色があり、今年はTHE 1975、SKRILLEX、POST MALONEをヘッドライナーに、現在第2弾アーティストまでの発表や、チケット先行販売が行われています。(一般発売は7月11日)

 

クラウドファンディングの内容

大前提として今日現在、スパソニの中止や延期アナウンスはなく、開催を前提としています。

 

クラウドファンディングの目標金額は10,000,000円となっており、その資金の使い道としては、

  • スパソニ開催に向けた感染症対策費用
  • 延期や中止となった公演の振替開催時の感染症対策費用
  • リターン商品の費用とクラウドファンディング会社への手数料

が挙げられています。

 

従って、スパソニ単体に対するものではなく、スパソニを含めたクリエイティブマン主催公演におけるコロナ感染症対策費用の資金調達という趣旨になっています。

 

支援のリターンについてはプロモーターらしく、チケットやグッズをリターンの主体としています。

 

同社のSNSなどをチェックされている方ならご存知かと思いますが、コロナショック以降、毎日のように中止や延期のアナウンスがありました。

 

その数はすでに100公演を超えるとの事で、特に海外アーティストを招聘した公演の多い会社なので、アーティストの渡航や対策に関する障壁は、国内アーティストのそれを遥かに上回る事が想像できます。

 

大規模フェスがクラウドファンディングを行う理由

リスクヘッジ先の減少

フェスでも単独公演でも、ライブコンサート興行はチケット売上が収益のベースになります。

そしてこの売上は、売りはじめてみないと実数が掴めませんし、開催終了後にならないと確定しません。

 

しかし会場使用料やアーティスト出演料、スタッフ人件費や設営資材費など開催インフラには固定の費用がかかります。

 

そのリスクヘッジや見込みを立てるために、協賛や出資企業が必要になります。

過去の以下の記事にこの事についてはある程度まとめていますので参照ください。

上の記事でも懸念している通り、中止や延期リスクも高く、もっと言えば開催ができても世論の批判の対象となる可能性の高い音楽イベントには、協賛や出資が集まりにくくなる事が想定されます。

 

事実、スパソニ公式サイトに現在掲出されている協賛ロゴは2社のみとなっており、私自身その点はずっと気にはなっていました。

 

仮に見込みよりもそれらが集まらなかった場合には、開催インフラにかかる費用全てをチケット売上(グッズや飲食の収益はあるにせよ)で採算を見立てる事になってしまいます。

当然資金的なリスクは高まりますし、トータルのインカムも下がる可能性が高まります。

 

既に100公演以上の中止・延期が重なった事により、見込んでいた収益をロスした状況下では、新たに開催を行う際に必要になる感染症対策費用を捻出するのは難しいという事は容易に想像ができます。

 

その費用確保の代替策として、クラウドファンディングを選ぶしかなかったという事なのだと理解しています。

 

ポジティブなクラウドファンディングを

「選ぶしかなかった」と上に書いたように、スパソニに限らずイベント主催者やライブ会場は、このような形のクラウドファンディングを行う事は極力避けたいと考えているはずです。

 

「新企画を立ち上げたい!」

「こんなサービスを始めたい!」

のような顧客にメリットをフィードバックできるような夢のあるプロジェクトであればその限りではないと思いますが、マイナスの穴を埋めるような趣旨になってしまうと”夢”ではなく”募金”のようにどうしても映ってしまう事があります。

 

顧客であるチケット購入者や来場予定者に、本来提供するサービス以外で資金を募るというのは、「来場者に楽しんでもらう」というポジティブな体験を商品にした業種にとっては特に避けたい事ですし、そこに誇りを持っているのでプライドに傷が付くとも思います。

 

それでもクラウドファンディングをスタートした事からは、自体の緊急性を感じますし、苦渋の部分もあったようにも思います。

 

また、「来場者に楽しんでもらう」というコト消費の原則を理解しているからこそ、代表のステイトメントに書かれていた、

「もう誰かがコンサート業界やライヴハウスに夢と希望があることを語って、それを現実にしていかないといけないタイミングに来ています。」

という言葉があるのだと思いますし、"募金"的なネガティブなクラウドファンディングにはしないという意思も感じる事ができます。

 

最後に

ここに書いたのは考察になるので、勿論真意のほどは分かりません。

 

7月、8月開催の夏フェスと呼ばれるイベントは軒並み中止・延期となっている中、タイミングがややディレイした9月開催のスパソニを契機に再開されるとしたら、ステイトメントにもあったように非常に希望のある事です。

 

国内最大規模であるからこそ、その意味は大きいと思います。

 

「いやいや、まだやらないで欲しい。」

という意見もあると思います。

 

しかしながら、対策の上で開催を模索する事自体は悪い事ではないはずですし、問題なく開催を終える事がもしできたとしたら、コンサート業界にとっては非常に大きな一歩となります。

 

知名度や規模も大きなフェスであるからこそ、開催タイミングの是否にも多くの意見が出るでしょうし、コンサート業界の置かれる窮地の認識はより広まるでしょう。

 

私個人的には、黙って待っていても状況が好転する事はないと感じているので、この姿勢は貫いて欲しいと思っています。

  

ではまた◎

 

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