TINY MUSIC LIFE

音楽を仕事にする方法やビジネス論、考察や小ネタなどをお届けする音楽情報ワンパーソンメディア。by TINY RECORDS八木橋一寛

【音楽業界への就活】音楽系専門学校は就職や仕事に役立つの?

楽専門学校。

 

本当にたくさんあります。 

たくさんあるという事は、それだけの需要があるという事になるでしょう。

 

そして、その多くは、”就職”を目的とした学校になります。

 

実際、音楽業界で仕事をしていると、音楽の専門学校を卒業した方もたくさんいらっしゃいます。

知人・友人にも専門学校の先生が多数います。

現場仕事などでは、生徒さんとやりとりする機会も業務柄少なくありません。

いくつかの学校へは、仕事で出入りした事もあります。

 

私自身はというと、服飾と美容師の専門学校には通いましたが、音楽の専門学校へは行っておりません。

ですが、音楽に関わる仕事を20年くらいなんだかんだで続けています。

 

そこでどうしてもよぎってしまう疑問があります。

音楽の専門学校って、就職にどこまで役立つの?

そんな疑問です。

 

この疑問をクリアにしたいなと思い、あこれこ調べてみつつ、自分の体験からくる考えなども織り交ぜてまとめてみたいと思います。

 

 

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人気の音楽専門学校

”学ラン”という様々な専門学校をランキング化したサイトがありましたので、いったんそのランキング(2021年度版)を見てみましょう。

  1. 専門学校ESPエンタテインメント東京
  2. 専門学校ESPエンタテインメント大阪
  3. 神戸電子専門学校
  4. 専門学校東京ビジュアルアーツ
  5. キャットミュージックカレッジ専門学校
  6. ビジュアルアーツ専門学校大阪
  7. 放送芸術学院専門学校
  8. 総合学園ヒューマンアカデミー
  9. 名古屋ビジュアルアーツ
  10. TOKYO STEPS ARTS

自分の周りには、日本工学院や東放学園、尚美学園尚美ミュージックカレッジの卒業生も多い印象だったのですが、ここには入っていませんね。

 

このランキングについては、算出方法もはっきりとは書かれていなかったので、あくまでもご参考程度として見てもらうのが良いかなと思います。

 

ビジュアルアーツやバンタンのように、音楽に特化した学校ではなく、"音楽系の学科もある"という学校も多いです。

 

学べる学科は?

実際に学べる内容はどういったものなのでしょう?

先ほどのランキング1位の”専門学校ESPエンタテインメント東京”を例に見ていきます。

 

6学科、32コースに分かれているようです。

その内訳は、

  • 音楽アーティスト科
  • 芸能タレント科
  • 音楽芸能スタッフ科
  • ピアノ調律科
  • 管楽器リペア科
  • ギタークラフト科

この6つの学科があり、その中でさらに各コースに分かれています。

 

最も大きく分類をするならば、

自分自身が演者となる為の学科と、それを支える裏方になる為の学科

この2つに分かれると言って良いでしょう。

この中だと、上の2つは前者向けになりますね。

 

このブログは、私自身がそうである事から、"裏方"を目指す人や既に裏方として働いている方に向けたものですので、裏方向けの学科をさらに詳しく見ていきます。

下の3つは楽器を管理・調整・作成するようないわゆる職人に向けたものとなりますので、”音楽芸能スタッフ科”を見てみましょう。

  • アーティストスタッフコース
  • レコーディングコース
  • PA&レコーディングコース
  • PAコース
  • 照明コース
  • ライブハウスコース
  • バンドスタッフ・ローディーコース
  • 舞台製作コース
  • 企画制作コース
  • 音楽スタッフ総合コース

この10通りのコースに分かれています。

まさに、私自身にも当てはまり、このブログでも対象としている内容です。

 

続いて、この10コースをさらに深掘りしていきます。

 

授業内容や音楽専門学校のメリット

学科やコースにどのようなものがあるのかは、理解できました。

 

一番気になるのは、その授業内容や、実際に就職をした上でどのように役立つのかです。

ちなみに、PAや照明以外は、私がこれまで仕事としてやってきた業務に当てはまっています。

 

日々の授業内容については、私自身が受講をした事がないのと、それこそ学校やその先生により大きく異なると思いますので、ここでは割愛します。

基本は大学のように、その業界の経験や知見のある講師から、講義という形でそれを学ぶものという認識で良いでしょう。

 

ここでは、私自身も何度か関わった事のある、"卒業制作イベント"を軸に深掘りしていきます。

 

多くの学校では、その学校案内でも卒業制作イベントを大きく取り上げていたりもします。

実際にお客さんを入れたライブイベントなので、”実習”です。

机上で知識だけを学ぶより、大きな経験になると思います。

 

卒業制作に限らず、実習は何度も行う場合が多いと思うので、基本的な授業内容についても、実習に向けた準備を授業としているケースが多いでしょう。

 

音楽専門学校の卒業制作イベントや実習イベントについては、何度か立ち会ったり関わらせていただいた事があるので、実例を挙げていきます。

  1. 学校主催の音楽イベントとして、企画が立ち上がります。
  2. 日程や会場については、学校側で用意するケースが多いと思いますが、日程・会場を受けて、出演アーティスト案など企画のプランを立てます。
  3. コースに応じて、出演交渉(直接のアーティストへの連絡は学校側で行う場合が多いです) 、舞台装飾、楽器や音響・照明、イベント告知、アーティストケアなどの段取りを練ります。
  4. 開催当日も、コース毎にセクションを分担し、進行します。

つまり、職業として音楽イベントを開催する1〜10までを実際に学生さんの手で実施をするわけです。

 

小規模会場でのコンパクトなイベントもあれば、1000人以上の大きな会場で行う場合もあります。

 

私自身の考えとしては、小規模なイベントも大きなフェスも、大まかな作業内容は同じだと思っています。

そういった意味では、積極的に取り組んで流れをしっかり自分のものにできれば、大きな財産になると思います。

 

現場を実際に見ていてやや気になった点は、仕方がない事ですが、1つのセクションに対して、人数過多になってしまう点があります。

例えば、PAや照明スタッフが、1アーティストのライブ中に何人も入れ替わる事もあります。

転換なども、大人数で取り掛かるので、一人一人が実際に手を動かしたり、ステージプロット全体の把握もしにくい気もします。

 

とはいえこの辺りは、”積極的”に取り組めば、大人数だろうとしっかり身に付ける事はできるでしょうから、それぞれのやる気次第で十分補える問題でしょう。

 

その費用

音楽専門学校の多くは、2年制になっています。

 

学費については学校により差はありますが、

おおよそ2年間で200〜400万円

が 多いようです。

 

金額だけ見ると安くはない気もしますが、実際に就職に繋がる事ができるのであれば、そう高額でもないように思えます。

 

いくつか音楽専門学校の中へも行ったことがありますが、基本的にどこも設備はとても良いです。

フィットネスクラブでもなんでもそうだと思いますが、その設備を使い倒せるかは自分次第なので、せっかくなら学校にある設備は許される範囲でフル活用して、学びに繋げたいですね。

 

必要性の高い業種とそうでない業種

どんな内容であれ、学ぶ事自体にデメリットはないと思います。

 

ただし、実際に通うとなれば、2年間という時間と、数百万円 というお金を使う事になります。 

つまり、費用対効果は気にせざるを得ません。

 

音楽専門学校に通うからには、"なりたい業種"があり学科やコースを検討すると思います。

 

まず確実に言えるのは、その”なりたい職業”が、”PA”、”照明”、”エンジニア”といった技術職であれば、学校に通った方が良いと思います。学校に通わずにそれらの職業に就くのは少々難しいです。

 

未経験で知識さえない状態であれば、会社としては”教えているのに給料を支払う”格好となります。

誰しもが最初は未経験ではありますが、専門学校に通った事が、ある程度の知識を持ってくれている保証になってくれます。

どの業種にも通じますが、特に技術職の場合はこの保証は大きいと思います。

 

個人的に気になるのは、マネジメントやレーベル、ライブ制作や舞台制作などへの必要性です。

 

技術職についても同様ですが、音楽業界の仕事のそのほとんどは、資格などのように形として能力を証明する手段がありません。

技術職であればまだ、「この場合はこうする」といったルールやセオリー、最低限必要な基礎知識なども明確です。

 

マネジメントやレーベルの実務となる、「アーティスト管理の方法」や「プロモーションの方法」などは正解がありません。

セオリーから外れる事が好結果になることもありますし、その考え方はまさに十人十色であるでしょう。

 

一方、ライブ制作や舞台制作については、一定のルールやセオリーは明確に存在していると思います。

特に舞台周りについては、学校で得た知識や経験は実務に直結しやすいと言えるでしょう。

 

そう考えた場合、マネジメントやレコード会社といった業種については、個人的には専門学校で得る知識や経験が業務に直結しにくいように感じてしまいます。

 

とはいえ、全くの未経験で社会経験も無い場合には、やはり先にも書いた通り、

”一定の知識ややる気を持っている保証”

として専門学校に通う意味は大きいと断言できそうです。

 

まとめ

本文では触れていませんが、専門学校のもう一つのメリットとして、”求人票”といった、企業からの求人情報を得やすい事もあると思います。

 

美容師や弁護士、会計士になりたいのであれば、試験や免許・資格が必要ですが、音楽業界の場合はそういったものがありません。

 

私がそうであるように、学校でその知識を積まずとも入れる業界です。

例えば、学校に通うための数百万円を、学費ではなく、音楽に関わる起業に使うのもアリだと思っています。

自分はその考え方も込みでレコード店を開業しました。詳しくは↓

音楽業界で働ける人材だと思ってもらえる経験や知識、やる気がある事を証明できる形や実績を作る事が重要だと考えています。

 

その一つの手段として、専門学校は有効であるというのが、今回改めて考えてみての結論でした。

 

では、また◎


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