TINY MUSIC LIFE

音楽を仕事にする方法やビジネス論、考察や小ネタなどをお届けする音楽情報ワンパーソンメディア。by TINY RECORDS八木橋一寛

音楽イベントの作り方(ライブハウス編)

「イベント主催をしてみたい!」

と考えている方へ、今回は"開催までのフロー"をまとめていきます。

 

もし、

「自分なんかに主催なんてできないんじゃないか。。」

と思っている人がいるとしたら、こう断言できます。

 

誰でもできます。

必要な能力的には、飲み会の幹事と同程度です。

 

一口に音楽イベントと言っても、大小様々ありますが、今回は小規模なライブハウス(300人キャパシティ以内程度)やDJバーのような個人レベルでもハードルの低い規模での話をしたいと思います。

 

 

音楽イベントの作り方(ライブハウス編)

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コンセプト設定

コンセプトと言うと、難しく考えてしまいそうになりますが、"やりたい事"ですね。

 

「好きなバンドを呼んだものがやりたい!」

でも、

「友人だけでわいわい楽しめるものがやりたい!」

でも、

「新しいシーンを作りたい!」

でも、なんでも良いと思います。

 

何は無くともコンセプトがないとイベントは始まりません。

進めていく中で、コンセプト通りにいかない場面も多々出てくると思いますが、そこは修正すれば良いだけの事。

 

どんな出演者に出てもらって、どんな会場で、どんなお客さんに来て欲しいのか。

イベント名や告知素材のイメージもこの段階でできるとベターです。

 

主催をする中で、もしかしたら一番ワクワクして楽しい時間かもしれません。

 

会場レンタル

イベントを開催する為には、場所と出演者が必要です。

出演者に事前に出演相談をする場合もありますが、会場レンタルを先にするのが一般的です。

 

会場にもそれぞれお店のカラーがあります。

特定のジャンルに強いお店もありますし、アコースティック向きな落ち着いたお店、ライブとバーのフロアが分かれたお店、ご飯やお酒が美味しいお店など様々です。

 

定めたコンセプトと照らし合わせて、やりたい事にフィットしそうな会場を探します。

 

併せて、会場キャパシティ(収容人数)や使用料金(会場レンタル代)もリサーチします。

 

資金に余裕があれば、料金を気にせずコンセプト通りの理想の会場選びをしても良いでしょうけれど、大半の場合はそうもいかないと思います。

動員目標や見込みに応じた料金・キャパシティの会場を選ぶ必要があります。 

 

ほとんどの会場には、お店のサイトに使用料金が表記されていますし、されていない場合でも電話などで問い合わせれば、すぐに教えてくれるので安心してください。

 

開催をしたい日程が決まっていれば、その日程が空いているかどうかを確認します。

ピンポイントで希望日程がなければ「○月の空いている日を教えてください」と聞いても良いです。

 

会場レンタルを行う際には、"仮押さえ"というものがあります。

"決定"としてレンタルをしてしまうと、もしなんらかの理由で開催ができなくなった場合に、キャンセル料金が発生してしまうので、仮押さえが可能なお店であればそうしてください。

店舗により、"開催日の何日前までのキャンセルはいくら"とキャンセル料の設定があるので、仮押さえをする際にその点も確認しておくと安心です。

 

小規模なライブハウスであれば、会場使用料に含まれている場合が多いですが、PA・照明スタッフの人件費や楽器のレンタル費についても聞いておくと良いです。

会場使用料に含まれている場合でも、例えば"この楽器だけは有料"などはありますので。

 

これらは、お金に関わる事なので、疑問点や要望があれば先延ばしにせず、どんどん会場に質問する事を強くオススメします。

質問をして万が一、嫌な顔をするような会場があれば、その会場は当日も気持ちよくイベント可能性も高いです。

 

初めてイベント主催をするのであれば尚更、お店の方の協力が必要になるでしょうし、色々質問をしてみて、話をしっかり聞いてくれる会場を選びましょう。

 

採算ラインの設定

自己資金や協賛、グッズ販売などがない限り、イベント主催はチケット売上のみが売上です。

逆に支出は、会場使用料と出演者への出演料が主になります。

ですので、採算ラインの計算は以下のようにとてもシンプルです。

  • チケット売上 −(会場使用料+出演料)=収益

小規模ライブハウスの場合、この点が非常にスッキリしていて取り組みやすいです。

また、フライヤー(告知チラシ)や会場装飾など、他にも見込まれる支出があれば応じて計算に加えてください。

 

この時点では、会場使用料のみがはっきりと分かっているので、最低その金額のチケット売上を作る必要があります。

 

例えば、15万円の会場使用料だとしたら、

150,000円=チケット代×動員数

となりますので、それに届くようなチケット代と動員数を設定します。

 

「チケット代を安くして沢山の人を呼び込むのか」

「多くの人は呼べないかもしれないので、チケット代はしっかりと取るのか」

そんな風に考えてみてください。

 

アーティスト・ブッキング

お楽しみ、出演者への交渉です。

日程と会場が既に決まっている場合は、その日程に出演が可能かをアーティストに確認するわけですが、「いついつ空いてますか?」とだけ聞くわけにはいきません。

 

  • いつ
  • どこで
  • 何故出て欲しいのか
  • どんな出演条件で
  • どんなコンセプトで
  • 他にはこんなアーティストを考えていて

といったイベント概要を伝えます。

 

既に知り合いであったり、何度も開催をしていて内容を理解してもらえていれば、 「いついつ空いてますか?」でも良いかもしれませんが、初めてのイベントを交流のない相手に相談するのであれば、出来るだけその内容が相手に分かるように伝える必要があります。

 

これらは、相手側の目線に立って考えると分かりやすいと思います。

"自分だったらこんなイベントなら出てみたい"とか、"この情報がないと検討しにくい"といった事を伝えられるとベターです。

 

初めての主催イベントであれば、上記の全部を細かく伝えないでも良いかもしれません。

"何故出て欲しいのか"に強い気持ちがあるのであれば、それをしっかりと伝えるのが良いでしょう。

素直に、「ライブをいつも観に行っていて、初めての主催イベントなので是非出て欲しいです」と率直に伝えて、理解してもらえれば少なくとも検討はしてもらえると思います。

 

アーティストについても、ライブハウス同様に公式サイトに"CONTACT" などの連絡ができるフォームがある事がほとんどです。

もしサイトになければSNSのDMや、ライブ会場の物販などで直接相談をするのでもOKです。というか"直接"ができるのであればそれがベストです。

 

"メールやDMをしても返事がない"という事も珍しくありませんが、めげないで出演をして欲しいアーティストにコンタクトを取ってみてください。

面識がないアーティストに相談をしたのであれば、返事が来ない方が当たり前くらいに思っておく方が、精神的に楽です。

そもそも、自分だって知らない人からメール来ても返さないですしね笑。

 

おそらく最初は、このブッキングが一番スムーズにはいかないはずです。

想定している出演者数が決定するまで苦労はあるかもしれませんが、断られても次の候補アーティストに相談というのを繰り返してください。

 

この繰り返しの中で、"どんな相談の仕方が良いのか"も分かってくるとも思いますので。

 

告知・宣伝(プロモーション)

告知をしなければ当然誰も来てはくれません。

日程や会場、出演アーティストも決まったら、そのイベントの告知です。

 

告知や開催に必要な情報には以下があります。

  • 日程
  • 会場
  • 開場・開演時間
  • イベント名
  • 出演者
  • チケット代
  • 販売・予約方法

他にも、キャッチ文やイベント説明文、公式サイトURLなどもあるようなら入れ込みます。

併せて、会場と出演者にもこれらの情報を伝えてください。

 

告知の際にはできれば告知用のイメージ画像やフライヤーデザインがあると効果的です。

上記全てを入れ込む必要は必ずしもありません。

イベント名のみの画像でも良いですし、その画像そのものがブランディングやマーケティングでもあります。

 

注意点としては、"販売・予約方法"です。

告知をしていても「どこでチケットを買ったり予約をしたら良いのか分からない」となっては身も蓋もないです。

 

ほとんどの会場は、依頼をすればプレイガイド(イープラスやチケットぴあ等)の手配をしてくれます。

ですが、おそらく初めてのイベントでプレイガイドを使ってもあまり動かないと思います。

手間や手数料もかかりますので、最初は"予約受付のみ"で問題ないはずです。

予約受付用のメールアドレスを自身で用意をするか、会場の方で予約受付が可能であればそのどちらかの予約メールアドレスを告知に入れ込んでください

 

動員力の高い出演者がいる場合は、スムーズに予約も入り動員の苦労はないですが、そうではない場合は、主催者が告知をしてお客さんを呼び込むしかありません。

 

幸い、現在ではSNSなど自宅にいながらにして告知をする手段はありますが、よほど観たいアーティストがいない限りは、告知を目にしても来てはくれません。

ここがイベントを主催する上での最大の山場ですので、全友人に連絡をする勢いで、誘ってみてください。

 

開催資料作成・回収

告知と並行をする形になるかと思いますが、当日に向けた情報をまとめます。

大きく以下の2つになります。

  • タイムテーブル
  • ステージプロット(セット図)

 

タイムテーブルについては、本番とリハーサルが必要です。

本番を先に作る方が、やりやすいはずです。

会場使用可能時間に収まるように、出演順や持ち時間、転換時間を組み立てていきます。

 

小規模ライブハウスでの開催であれば、本番演奏時間30分、転換20分で組めば進行上は間違いはないと思います。リハーサルについても同様のイメージで差し支えはありません。

組み終えたら、出演アーティストに確認をした上で、会場にも共有してください。

 

このタイムテーブルもイベントを形作る大きな要素となり、決まったものがあるわけではないので、最初は思うまま作ってみてください。

問題があれば、会場や出演者が指摘してくれますので。

 

ステージプロット(セット図)については、出演者に「セット図をください」と連絡を入れ、回収したものを会場に共有します。

 

必要な大きな理由としては、"使用する楽器を事前に把握したい"為です。

会場に無い楽器をレンタルするつもりでアーティストが当日来てしまい、「その楽器は無いです」となったら大変ですよね?

また、"転換の段取りの為、使用楽器や置き位置を把握したい"という事もあります。

 

目安としては、開催日の1週間前に集めておけると安心です。

 

開催当日

作成をしたタイムテーブルのリハーサル開始時間や、入り時間に応じて、会場に行きます。

よほどの事情が無い限り、出演者よりも先に到着するのがマナーです。

会場のスタッフさんと当日の進行の確認も行います。

 

準備するものとしては、主に印刷物になります。

「タイムテーブル」、「予約リスト」、「曲順表(セットリスト)」、「音響や照明のリクエスト表」

あたりになりますが、大半のライブハウスではお店の方で準備をしてくれています。

ただし、これはあくまでもご好意ではあるので、主催側でも気にはしておく必要があります。

 

出演者が到着をしたら、楽屋や物販位置の説明、出演者側で受けた予約の確認をします。

 

小規模ライブハウスの場合、多くの作業を会場スタッフ側で行ってくれるので、主催者はあまりやることが無いかもしれませんが、耐えてください笑。

 

リハーサルを終えたら開場時間を待つだけです。

客入れ作業も会場が行ってくれるとは思いますが、予約漏れなどの対応がある程度です。

開場をした以降も、主催者の実作業はほとんどありません。

ライブ時間を「オンタイム進行のままにするか、少し押すか?」の判断をするくらいかもしれません。

 

当日の振る舞いについては、人それぞれです。

出演者と多く会話をして感謝を伝えることに時間を使っても、来場者を盛り上げる事に全力を注いでも良いです。

 

来場者が「楽しかった。また来たい」、出演者が「また出たい」、会場が「またやって欲しい」、そして自分が「またやりたい」と思って終えれるかが肝心だと思います。

 

開催後

ライブハウスで予約のみで行う場合は、大半が当日終演後すぐに会場と精算ができると思います。

出演者についても、その日にすぐ出演料やバックを渡しても問題ありません。

 

何人の来場者があり、主催者として赤字だったのか黒字だったのか。
終えてみて、明確に数値としての結果が出ています。

 

もし「また次回もやりたい!」と考えているのであれば、来場者数や赤字か黒字かという事にしっかりと向き合ってみてください。

「チケット代を見直そう」、「もっと告知を頑張ろう」など改善点があるはずです。

 

音楽イベントはただただ楽しいですが、志しや理想を持ってイベント主催をする場合については、数字としっかり向き合うべきです。

赤字では続けられませんし、集客が少なくてもまた続けられません。

 

ですが、それとは別に「お客さんがとても楽しそうで嬉しかった」とか、逆に「退屈な顔をしていた」といった数値化できない喜びや反省もあったと思います。

 

"数字と向き合うべき"とは言いましたが、最重要では無いとも思います。

人がたくさんいれば、それだけで必ずしも満足度が高まるわけでは無いはずです。

音楽イベントは、物を売っているわけではなく、体験の満足度で成り立っています。

数字がなかなか上手くいかないからといって、価値がないわけでは全くないです。

 

イベント後の反省や改善を考える際には、この"満足度"を提供できたかどうかにウエイトを置くと、楽しくやりがいを保ったまま続けていけるのではないか?というわけです。

 

まとめ

またしても、思ったよりも長くなってしまいました。

そのため、「誰でもできます」と冒頭に書いたわりに、難しそうに見えてしまったかもしれません。。。

 

"開催"自体は本当に簡単です。

"継続する"となると、確かにいくつか難しいポイントはあると理解してもらえればと思っています。

 

今回書きたかったのは、「誰にでもできるから、興味があるのであれば、まず1回やってみては?」という事かもしれません。

やってみないと継続したいかどうかも分かりませんから。

 

そして、自分がそうだったからかもしれませんが、1回やってみたら絶対にもう1回やりたいと思うはずです。

なにしろ、めちゃ楽しいですからね。

 

今度は、もう少し大きな規模でのイベントの作り方も書きたいと思います。

 

では、また◎

 


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