TINY MUSIC LIFE

音楽を仕事にする方法やビジネス論、考察や小ネタなどをお届けする音楽情報ワンパーソンメディア。by TINY RECORDS八木橋一寛

アイドルの物販にみる秀逸な収益モデル

イドルはお好きでしょうか?

 

かくいう私は数年前まで毛嫌いをしていました。

毛嫌でしたので、特に理由はありません。申し訳ありません。

 

今はというと、結構好きです。

きっかけは、4年程前に勤務先で主催する音楽フェスで、行きがかり上、アイドルの担当をあてがわれてしまった事に遡ります。

 

「嫌だな。」とはその時思いましたが、グループによっては大きな動員力や求心力を持っている事くらいは知っていました。

 

プライベートであれば「嫌です。」で一蹴していたかもしれませんが、仕事でしたので取り組む事としました。

 

チケット販売力や動員力のあるアーティストは、当然、フェスのチケットセールスや盛り上がりにも影響します。

仕事である以上、フェスのチケットセールスは、自分の収入や生活にも関わりますし、単純な愛社精神としてもチケットはできるだけ売れて欲しいと願います。

なので、"仕事として"その時は一生懸命取り組むことにしました。

 

ドライですね。

 

ですが、すぐにドライからウェットな春先な心持ちへと変わっていきました。

 

 

仕事目線で見たアイドルの魅力

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仕事としては真剣に取り組んだものの、当初はまだ、心は湿度0%の真冬の佇まいでした。

しかし、やりとりを重ねたり、いざライブを当日観てみると、目が覚めました。

 

曲が良いのです。

 

そして、メンバーさんの礼儀正しさも衝撃的でした。

 

その時「アイドルがこれだけ盛り上がるわけだ」と思いました。

血の通った人間であれば、あれだけ元気良く、会場入りと退館の際に挨拶をされれば心情的に、「頑張って欲しいな」と思ってしまいます。

挨拶だけでなく、ステージもその懸命さがとても明確に伝わってきます。

関わる先々でシンパ(共鳴して協力してくれる人みたいな意味)が増えていくのも当然だなと思いました。

 

「これまで毛嫌いをしてしまっており、申し訳ありませんでした。」

と心の中で謝罪をしました。

 

純粋に音楽そのものが好きでこの仕事はしていますが、人柄や熱意で動かされる事は多々あります。

その上、正直ナメていた曲も良かった訳ですから、土下座モノでした。

 

現場を見ていても、ファンの方のモラルが非常に高いと感じています。

基本的に

「応援しているグループやメンバーに迷惑がかからないように」

という事を、とても考えて会場内でも振舞われているように感じました。

 

この後、物販周りについても書きますが、同じ来場者数と内容のものを、他のジャンルの公演でやろうとしたら、おそらく同じようにスムーズには進行できないのでは?と思っています。

 

そんな経緯を経て、現在では結構なアイドル好きなのです。

(もちろん、カワイイなと思ったりする事もあります苦笑。)

 

アイドルが持つビジネス面での強みとは?

優れたマネタイズ

アイドルグループやそのシーンについては、全くの専門外で知見が無いで、この記事ではビジネス視点に特化して書いていきます。(裏方指南ブログですので。)

 

収益化という意味では大きく2つ、優れていると感じている部分があります。

  • ひとつは、少ない持ち時間で来場者に満足感を与えられること。
  • ふたつめが、物販で大きな収益を出せる事です。

具体的にこの2つがどのように優れていると感じたのかを、深掘りしていきます。

 

少ない持ち時間で満足感を提供できる理由とそのメリット

少ない持ち時間でも、来場者に満足感を与えられる理由も複数あります。

 

まず、基本的には生楽器の演奏が無く、セッティングや会場リハの時間がほとんどかからない事。機材車も必要ありません。

複数のグループが出演していても、転換ナシでバンバンライブができます。

 

楽曲も良いとは書きましたが、とはいえそこはアイドル。生で見れる事自体にも満足感を持つことができます

いかついロックンロールバンドが3曲でステージから去ったら「もっとやれー!」などと怒号が飛び交いそうなものですが、アイドルの場合はノープロブレム。

もちろんその後にある特典会などによるところも大きいとは思いますが。

 

少ない持ち時間で満足度を与えられる事の何がメリットなのか。

 

イベント形式であれば、持ち時間やリハ、転換時間が少ないほど沢山のグループが出演可能です。

沢山のグループが出演できれば、動員を担保しやすくなります。

イベントを主催する側としたら、動員不足による赤字リスクを回避しやすくなります

そのリスクが回避できれば、開催頻度も増やせますし、そうなればライブ本数も増やしやすいです。ライブが増やせれば新規ファンの獲得にも繋がりますし、出演料や物販での売上からの収益も伸ばしやすくなります。

新規アイドルグループをスタートするにしても、出演グループが多ければ、1つのグループに要求される動員も分散できますし、たくさんのイベントがあれば出演枠を取りやすくもあります

非常に好循環だと思います。

 

加えて、ライブ1本に要する時間が短ければ、1日に2ステージ、3ステージとこなすことが可能です。

出演料やチャージバックがもらえるようであれば、バンドであれば基本的には1日1本であるライブ本数を、複数本行うことで倍増できるのです。

ライブを複数行わないにしても、ライブ出演に多くの時間を拘束されなければ、プロモーション稼働するなり、何か別の活動が行えます。

なんにしたって、同じ1日の中でやれる活動内容が増えるのです。

 

初めてアイドルフェスに行った時には、1日に4ステージとかしているグループがいて、驚きで鼻水吹き出したものです。。

 

物販での収益力の強さ

AKBの握手会に代表されるように、アイドルの物販といえば、単なるグッズ販売に留まりません

 

基本的にはメンバー稼働によって行われる「特典会」というものがあります。

 

握手会やチェキ会などの写真撮影、ハイタッチなどなどいくつもその内容があります。

 

メンバー稼働ということは、直接会話をしたり握手など触れる事もできるのですから、ファンであれば当然、いくら並ぼうとも参加しますし購入もします。

 

初めてアイドルのワンマン公演に関わった時には、ライブ時間45分、物販・特典会150分などとあり、驚きで鼻水吹き出したものです。。。

 

特典会という秀逸な収益モデル

これが今回の主題です。

初めて知った時は深く感嘆しました。

 

グッズ販売のデメリットと限界

単に制作したグッズを販売するだけであれば、制作できるバリエーションに限界があります。

 

新たなグッズを作るには時間もかかりますし、原価もかかります。

飛ぶようになんでも売れるグループであれば問題ないですが、販売ロスで在庫を抱えてしまうリスクもあります。

 

毎回ライブに通うファンであれば、

限られた商品数のグッズなどあっという間にコンプリートしてしまい、物販で買うものがすぐに無くなってしまいます。

 

でもファンはグループを支えたい気持ちがあるので、もっとお金を使ってあげたいのです。

 

そうなると、持っているグッズをもう一度買うしかなくなってしまうのですが、健全な消費ではありません。

 

ビジネス的にもこういった販売機会ロスは避けたいですし、ファン心理や欲求に応えられていない事も良いことではありません。

 

無限の商品となるチェキ会というモデル

グッズの制作・販売が抱えるデメリットや限界として挙げた問題点を、特典会は完全に解決しています。

 

特に、チェキ会に当初とても感嘆をしたので、ここではチェキ会で話を進めてみます。

 

グッズを製作して売るデメリットは、「バリエーションに限界がある点」だと書きました。

また、製作には時間と原価がかかり、販売ロスのリスクがあるとも。

 

チェキ会だとどうでしょう。

  • バリエーションについては、その日に撮影する写真なので、全く同じものは2枚と存在しません。
  • 時間は、撮影をする数秒。
  • 原価はチェキ本体とフィルム代だけです。
  • 購入都度写真を撮影するので、在庫を抱える心配もありません

 

なんという事でしょう。

 

「ザッツオール!」

と叫びたくなりませんか?

なりませんね。。

 

まとめ

そもそも

「買いたいのに買うものが無い」

というのは先に書いた通り、まさに販売機会ロスです。

商いの原則としては、最も避けなければならない状態です。

 

それを解消するだけでも大変なのに、ずいぶんと沢山の問題を同時に解決してしまっているのです。

 

握手会も更に短時間で沢山のファンに対応できるという意味では悪く無いのですが、いかんせん、モノとして残らないのが寂しいです。

(モノよりも触れたいという方もいらっしゃるとは思いますが)

 

なにより、写真というのが良いですよね。

写真はみんな好きですし、しかも推しの写真なので、毎回でも撮りたくなります。

 

その写真を収納するファイルをグッズにもできるでしょうし、サインを書いてもらうにも、もってこいです。

 

会場の構造や人数によっては整列場所に困るとか、時間がかかるとか、メンバー稼働をさせるとトラブルリスクがある等々。

そのようなデメリットもあるにはあるのですが、それを差し引いても

「みんながハッピーでお金も回る良くできたシステムだなー」

と常々思っていたので、今回取り上げてみました。

 

ザッツオール!(おしまい)

 

では、また◎

  


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