TINY MUSIC LIFE

音楽を仕事にする方法やビジネス論、考察や小ネタなどをお届けする音楽情報ワンパーソンメディア。by TINY RECORDS八木橋一寛

チケットキャンプ問題とは何だったのか?問題点や閉鎖までの流れのおさらい

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からおよそ2年前の2018年5月にそのサービスを終了した「チケットキャンプ」。

 

コンサートチケットの高額転売が問題視される中、その販売(転売)サイトの最大手であったチケットキャンプは大きな議論や反発を浴びメディアでも大きく取り沙汰されたのでご存知の方が大半かと思います。

 

同サービスの閉鎖により、一旦の落ち着きを取り戻したようにも見えますが、この高額転売問題は現在も尚、解消したとは言えない状況です。

 

コロナショックから緩やかに再開の兆しも見せるライブコンサート業界ですが、おそらく短くとも向こう1年間はキャパシティの制限を行い公演を行うことになるでしょう。

 

販売数が減るほどに、需要の高い公演のチケットは争奪戦になることが懸念されますし、チケット高額転売問題が再燃しないとも言えません。

 

閉鎖から2年が経ち、記憶も薄れかかっている部分や、若い方の中にはそもそもこのチケキャン問題をご存知ない方もいるとも思いますので、今回は簡単に振り返りまとめていきたいと思います。

 

 

チケットキャンプ問題の概要

チケットキャンプ(通称:チケキャン)は、2013年にスタートした株式会社フンザが運営するオンラインチケット売買サービスで、2015年に株式会社ミクシィが同社の全株式を取得し以降完全子会社化しました。

 

プレイガイドとは異なり、消費者間取引(C2C)による消費者任意の価格で売買を行う為、非正規価格での取引が可能となり、それによる転売目的の高額出品が横行。

 

インターネット上でのチケット売買サービス最大手であるチケットキャンプはその最大の温床と目されました。

 

2016年に主要音楽関連4団体により「私たちは、音楽の未来を奪うチケットの高額転売に反対します」というメッセージを新聞全面広告で打ち出し、2018年5月にサービスを終了しサイト閉鎖となるまでの間、同サービスや高額転売に対する大きな反対運動や議論が起こりました。

 

高額転売の問題点

ダフ屋行為の増加

「チケットを買ったけど他の予定により行くことができなくなった。」

というチケット購入者と、

「行きたかったけれど、チケットが売切で購入できなかった。」

という購入希望者をマッチングするという意味においては、消費者にとっては有益なサービスにも見えます。

 

実際にそのような側面を果たした面も存在したかもしれませんが、自由価格での取引である以上、大きな問題点も生まれます。

 

プレイガイド等で購入した正規価格以上で販売が行える為、営利目的でチケットを転売する業者や個人の発生、いわゆるダフ屋行為の横行です。

 

インターネット普及以前からダフ屋行為は存在していますが、その多くの場合、公演当日に会場周辺で直接販売行為を行なっていました。

対して、オンライン上でこのダフ屋行為が可能となると、購入希望者への接触機会や転売目的の出品者数が飛躍的に増え、取り締まりも難しくなります。

 

このダフ屋行為はいくつかの法令で取り締まりが行われています。

会場周辺など公共の場所に立ち直接販売行為を行うことは「迷惑防止条例」に違反する為、警察への通報等で防止や抑止を比較的行いやすい面がありました。

 

インターネット上での販売については、物営業法の無許可営業や詐欺罪などでの検挙や、インターネット上も"公共の場"とした逮捕事例もありましたが、その絶対数の増加に対応した状況とは言い難いものでした。

 

空席問題

高額転売が行われる対象は、チケットの入手が困難な人気公演です。

つまり、即日完売になるようなソールドアウトになった公演のチケットなので、興行主に直接的な収益のロスはありません。

 

コンサート業界にとっての最大の問題は、転売目的での大量(買い占め)購入による空席の増加です。

 

高額転売目的でチケット購入を行なったとしても、目論見通りそのチケット全てを転売できるとは限りません。

売り残してしまった場合、興行主としてはソールドアウトだったとしても、売り残した分だけ実際の来場者数が減少してしまいます。

 

極端に言えば、ソールドアウト公演のはずが、客席の半分以上が空席という状況さえ起こり得ます。

 

満員の来場者を見込んで準備したスタッフ数や物販販売数見込みにロスも生じますし、何より、アーティストのモチベーションに大きな影響を引き起こします。

 

また、仮に高額転売によりチケット購入をした純粋な来場者で会場が埋まったとしても、来場者がチケット代金に高額を費やす事でグッズ販売売上に影響を与え、全体の収益としてはやはりロスを生むことになります。

 

アーティストや興行主は、収益のみを考えチケット価格を設定している訳ではありません。

仮に2万円のチケット単価でソールドアウトが見込めたとしても、多くのコンサートはチケット販売で収益の最大化はしていません。

学生など若年層でも来場できるような価格設定をする事で、来場者の年代のバランス化を図り、平等に来場機会を設計する事でカルチャーとしての役割も意識的に果たそうとしています。

 

サービス終了・閉鎖に到るまで

音楽団体の抗議ステイトメントや、多くのアーティストの声明・呼びかけにより、チケットキャンプや高額転売に対する風当たりは高まりますが、それでも「どうしてもライブに行きたい。」というファンにとっては正規価格の何倍もの金額であってもその需要は沈静化は見ませんでした。

 

そんな中、2017年12月、チケットキャンプ上で「ジャニーズ応援キャンペーン」と銘打った企画が行われます。

このキャンペーン内で商標登録されているグループ名を使用した事で、商標権の侵害と不正競争防止法違反として強制調査が行われます。

 

この強制調査内容を受けて、ミクシィはチケットキャンプを2018年5月末で閉鎖することを決定し、サービスは終了となりました。

 

以降の高額転売対策

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「チケトレ」公式Twitterより

売買サービス最大手のチケットキャンプの閉鎖や、本件で湧き上がった消費者の問題意識向上などにより、コンサート業界で強く問題視されていた高額転売問題は落ち着きを取り戻した感もありましたが、解決を見た訳ではありません。

 

現在でも転売可能なサイトは多数存在しています。

 

興行主やプレイガイドでは、チケットに購入者名の印字と来場時の身分証提示を実施するなど転売対策も活発に行われています。

 

前述の音楽関連団体(音制連、音事協、ACPC)では、公式チケットトレードリセールとして「チケトレ」を立ち上げ、サービス内では全て券面価格(正規価格)での売買が可能となっています。

 

加えて。2019年6月14日からは、高額転売を禁止する「チケット不正転売禁止法」も施行されています。

 

最後に

今日現在はコロナショックにより、観客を入れた音楽コンサートはほとんど開催されていませんが、冒頭に書いたように、キャパシティ制限(チケット販売数制限)下での再開が見込まれる為、人気公演のチケットは一層入手が困難になるでしょう。

 

反面、ライブ配信が活発になり、チケット販売上限の無いライブ配信であれば、高額転売の入り込む余地は狭められそうではあります。(カメラアングルやその他付加価値による数量限定チケットが出てしまうと高額転売が可能になりそうではありますが。。。)

 

私自身、一度だけ高額転売(確かヤフオクでの個人売買)でチケットを購入した事があります。

2005年にスタジオコーストで行われたSUPERCARのライトライブを20,000円位で購入しました。(正規価格はおそらく5000円程度だったかと。)

 

当時は自分の中に"高額転売"という問題意識を持っていなかった為、純粋に「いくら払ってでもどうしても行きたい」という無邪気さで購入をしました。

 

「自分は購入しても必ず行くしグッズも買う。」

としても、上述の「チケット不正転売禁止法」により、法律上は購入者側も処罰の対象になっています。

 

法整備がされたとしても、購入者がいる事で、高額転売を行う業者や個人は後を絶たないとも思います。

 

私も知識不足から高額転売に一度加担してしまった過去もありますが、今後買うことはありません。

同じように、もし音楽というカルチャーが好きだったり、本当に好きなアーティストがいるのであれば、正しい知識を得て、「この購入は音楽や自分の好きなアーティストの妨げになっていないか?」と考えてみると素敵なファンになれると思います。

 

ではまた◎ 

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