触れずに書き進めるのも困難ですし、不自然なので致しかなく触れようと思います。
新型コロナウイルス蔓延により、ライブハウスが直面する現在についてです。
書きたくなかった理由は、単純に面白くないからです。
私自身も面白くないですし、読む人も面白くないのではないかと。
新型コロナウイルスの話をして、楽しい・面白いと感じる人はどこにもいないですからね。
また、このブログは「音楽業界でこれから働きたい人」を主な読者として書いています。
そんな方に、今の状況を伝えても、「うわぁ、音楽業界はやめておこう。。」と思われるだけでしょう。
「音楽の仕事、面白いですよ」といった事もこのブログでは伝えたかったので、ネガティブ要素しかないコロナについては、触れたくなかったんですね。
その為、既に書いた「音楽業界のおおまかな未来予測」でもコロナショックについては無視して書いています。
ですが、当然、今後音楽業界で働く上では、コロナによる状況の変化は無視はできません。
この状況が続く以上、少なくとも観客を入れたライブコンサートはできないのですから。
今回これから書き進めるコロナショックによる影響についても、前々回の記事で書いた通り、各々のポジションにより実情や見解は異なるでしょう。
この記事では、"ライブハウス"のみにフォーカスし、今回は未来についての考察はせず、「今どうなっているのか?」という現状を一旦整理する内容にしたいと思います。
未来や今後については、またすぐに記事にしたいと思います。
【目次】
コロナショックで停止したライブハウスの店舗営業
影響が表面化したのはいつ?
新型コロナウイルス感染拡大が、ライブハウスの営業に影響を及ぼしたのはいつだったでしょう?
地域やキャパシティ、会場それぞれの運営方針などにもよるので、明確には言えませんが、2020年2月20日の時点では、私はライブイベントを開催していました。
アルコール飲料メーカーを冠とした、いわゆる企業イベントでした。
開催前日に「中止すべきではないだろうか?」という相談がその企業からはありました。
この時点でも既に、ドラッグストアなど街からはマスクが消え、把握している限りでは、ライブハウスでも消毒液の設置や、スタッフのマスク着用をパラパラとし始めているタイミングだったと思います。
ですが、他の都内の多くの会場もまだこの頃は通常通りの営業を行なっており、それもあり私は、「必要な対策をした上で、開催をしましょう。」と伝え、開催に至りました。
講じた対策は、"会場スタッフのマスク着用"、"受付に消毒液を設置し、来場時に消毒をしてもらう"、"咳やくしゃみエチケットの場内周知"というものでした。
企業関連イベントだったので、上記対策の上での開催というのも、早かった方だと思います。
そのすぐあと、状況が大きく変わったのが2月29日です。
大阪のライブハウスで集団感染(クラスター)が発生したという報道がありました。
これにより、急激に潮目が変わりました。
クラスターという形では、国内では(ほぼ?)出ていなかった為、"ライブハウス=クラスター源"のような認識が広まりました。
【密閉、密集、密接】という3密にあたるライブハウスは、世論からバッシングの対象となりました。(3密というワードそのものが出てきたのは、これより後の3月に入ってからだったかと思います)
以降の数週間は、主催者や会場の判断により、中止や延期をするケースも増え始めました。
ですが、ライブハウスはスペースや環境を売る商売です。
公演は中止や延期となっても、会場側で穴埋めのイベントやバー営業、ライブ配信を行う事により、辛うじて営業は続けるという形をとっていたかと思います。(あくまでも穴埋めであり、そのほとんどは固定費を支払うまでの売上にはなっていないはずです)
日々新たな報道や、国や都からの要請がアナウンスされるにつれ、この穴埋め営業さえ難しい状況へとなっていきます。
この時点の要請は、”営業をしてはいけない”というものではありませんでしたが、「こんな時に営業をするなんて非常識だ」という声も多く、それに押される形でほぼ全てのライブハウスが営業を自粛していきました。
3月の中旬頃には、ほぼ全ての"観客を入れたライブ(生演奏)"は自粛、穴埋めとして行なっていたバー営業やDJイベント(DJは歌わず飛沫を飛ばすことがない為)も、3月下旬には開催の情報を見ることは無くなりました。
ちなみに私が最後にライブハウスに行ったのは3月27日でした。行った理由は"ライブハウスそのものや、そこで働くスタッフに経済破綻して欲しくない為"でした。
そして、ライブハウスにとっては死刑宣告とも言える"緊急事態宣言"が4月7日に出されました。
これまで営業の主としてきた"ライブ演奏者と観客を集めた営業"はもちろん、"場"を使った最後の手段とも言える、"ライブ配信"までもが行えない状況が訪れました。
「観客のいないライブ配信であっても、店舗としての営業を行なった場合は、助成金が出ない」
という政府の見解や、
「ライブ配信でも会場に行くまでに交通機関を使うだろう」という世論の声、「配信だろうと、営業をしてクラスターを発生させないで」 という周辺住民の反発が強まり、実質営業が不可能な状況へと陥りました。
その後、署名活動やSNSを中心とした抗議や反発が届いたのか、"ライブ配信を行うと助成金が下りない"というのは撤回されましたが、今日5月7日現在でも、多くの会場が営業を完全に停止しています。(ライブ配信は多くはありませんが、時折会場によっては行われています)
また、当初はまず5月6日までとして出された緊急事態宣言ですが、5月31日まで延長となっているので、少なくともそれまでは状況改善は期待ができないという状況となっています。
可能な営業形態には何があるのか?
ライブ配信
既に書いた通り、観客を入れた営業は行えません。
ライブ配信についても先に書いたように、"やっても良いものかどうか?"と、世論や倫理感を気にせざるを得ず活発化はしていません。
また、ライブ配信については、店舗によっては設備投資のコストや技術的な障壁もあります。
なにより、"主たる売上として期待するのは難しい"ということがあると思います。
ライブ配信を行うには、ライブをするアーティストが必要です。
会場主催でイベントを行う場合、アーティストに対して基本的には出演料を支払います。
会場の売上以前に、その出演料はどこから出せば良いのでしょう?
観客を入れたライブであれば、入場料を来場者からいただき、ドリンク売上も発生します。
「ライブ配信はどこで収益化ができるの?」
というと、"ライブ配信の閲覧権をチケットとして販売する"もしくは"閲覧者による投げ銭"になるはずです。
これまで行なってきたライブ同様、来場者(閲覧者)にライブに参加をする権利として、お金を支払ってもらう訳です。
でも、そう簡単ではありません。
言うまでもなく音楽ライブは、音が重要です。
ライブは「生」とか「生きる」という意味でもありますよね。
演奏者との距離はより近く、生きる人の息づかいや熱気を肌で感じたいです。
最大限に音楽ライブを楽しんだり感動する為に、音質や音量(振動含め)、演奏者との距離は大きく関わってくるはずです。
例えばスポーツ観戦であれば、"モニターで観る方が細かなプレーが大きく見れるのでむしろ配信で良い"といった側面もありますが、音楽ライブの場合はそれすらないという訳です。
"ボーカルの顔をはっきり見たい"とか、"スーパーギタリストの指元が見たい"、と思うことはあっても、それは音楽ライブを楽しむ上での主目的ではないですよね。
「コーチェラは配信してるから行かないでも別にいいやー。」
と言っている人は見たことがありません。(ちなみに無料です)
配信を見たことによって、「いつか行きたい!」と思っている人がほとんどだと思います。
このような、
ライブの楽しさや興奮、感動を知っているからこそ、"あくまでも疑似体験でしかない配信で、生で行うライブの代わりには(収益的にも)ならない"
と感じてしまうという訳なのです。
私個人の私見となりますが、将来的にはそれでもライブ配信は伸びていき、大きな収益を生むことになるとは思っています。
コロナショックで困窮する今現在の主な収入源とするのは難しいという所感として書いています。
ドリンクチケットの先売りやグッズ販売
既に、多くのライブハウスがこの"ドリンクチケットの先売り"や"グッズ販売"を始めているのは目にしているかと思います。
具体的な売上を多数把握している訳ではありませんが、比較的売れているような印象があります。
これは会場側も重々承知の上で行なっているはずですが、これらはあくまでも店舗を潰さないように今月、来月という急場をしのぐ手段です。
ドリンクチケットについては、営業を再開した際にはここで販売をしたドリンクチケットが使われます。
という事は、その日にはドリンクはチケットと引き換えに提供はするけれど、売上は入りません。
未来のドリンク売上を前借りしているに過ぎないのです。
グッズについては、売上の前借りではありませんが、信用の前借りに近い気がしています。(ドリチケも多少その面はあると思いますが)
ライブハウスはアパレルブランドやセレクトショップではありませんし、製作にかける時間だって今はありません。
消費者は本来なら、無数にある洋品店から最も気に入った品質やデザインの商品を書いたいはずです。
分かりやすくする為、少し嫌な表現にはなりますが、
「このグッズ自体は本当はそんなに欲しくはないけれど、この売上によってこれからもライブハウスとして楽しませてくれるなら、買います。」
このような、そのライブハウスへの信用を購入動機として、販売が支えられているように思います。
もちろん全部が全部ではなく、時間の無い中でも商品としてイケてる物を作って販売しているライブハウスもあります。
クラウドファンディング
グッズ同様、もしくはそれ以上に"信用の前借り"になると思います。
リターンとして、上述したドリンクチケットやグッズが含まれる場合も多いです。
全てのライブハウスのクラウドファンディングの達成金額を見ている訳ではありませんが、多くの店舗が"100万円以上"、多い店舗では"3,000万円以上"集まっています。
ライブハウスとしてはある種、これまで営業を重ねてきた"甲斐"が実感できますし、支援したいと思うお客さんの想いはとても感動的です。
ですが、 "救済"が目的となるクラウドファンディングである以上、達成金額の大小に関わらず、これも急場しのぎにはなると思います。
それとは別に、クラウドファンディング本来の活用ができれば、ライブハウスの営業収益になり得なくはないとも考えています。(今はそんな状況ではないので今後になりますが)
本来のクラウドファンディングの通り、「実現できたら自分も嬉しいな。」と多くの人が思えるビジョンやプランを立ち上げるのです。
"あの場所で野外フェスを立ち上げたい"、"キッズスペースを設置したい"、"入場無料で24時間イベントをやりたい"、これらは例えばなのでグッドアイデアではありませんが、こんな具合にです。
単発ではなく、ひとつひとつを実現して継続的に行います。集まった金額を収益にするのではなく、"楽しませてくれるライブハウス"というマーケティングを行い、その楽しさに集まったインフラから収益を作るのです。
とはいえ、これを実現可能な店舗にはいくつかの条件はあると思いますし、難易度が高いのは間違い無いです。
現状のみを書くはずが、未来の展望を書いてしまいました。。
いずれにしても現時点では、多くの店舗にとっての急場しのぎとしては最も有用ではありますが、急場しのぎの域を脱しにくいと言えると思います。
業態のピボット
ライブハウスは法律上は"飲食店"です。
そういった意味ではピボットとは言えないかもしれませんが、フードのテイクアウトやデリバリー販売を始めている店舗もいくつかあります。
オンラインサロンを始めている店舗もあるようです。
他にも私が知らないだけで、別のビジネスを始めているお店はあるのでは無いかと思います。
この業態のピボットが、コロナ禍を乗り切る一手になるか否かは一概には言えませんが、個人的にこれは特に賛成です。
無論、新たに始めたのであれば急場しのぎに変わりありませんが、これに関してはコロナが終息をした以降も、そのお店にとって継続したビジネスモデルになる可能性がある。という事が理由です。
まとめ
この記事では、ライブハウスが直面する現状についてを書いてきました。
音楽業界でも様々な業種に影響が出ている中で、なぜ最初にライブハウスに絞った記事を書いたのかと言うと、私自身、過去にもやっていましたが、現在もライブハウスのブッキング業務も行なっている当事者だからです。
ですので、非常にたくさんのライブハウスのスタッフの方々と、現状や今後についての意見交換を交わした上でこのブログを書いていますし、しんどさをとても強く理解しています。
私の元職場であったライブハウスも先日コロナショックの影響で閉店となりました。
中には、
「リスクヘッジをせずに一つの業態にこだわった結果なのだから、自業自得だろう」
と思われる方もいるかもしれません。
確かにおっしゃる通りと思います。
再度書きますが、このブログは主に、"音楽業界で働いてみたい人"や"音楽業界で働いている人"に向けて書いています。
音楽業界の置かれる現状を知るほどに、冒頭に書いたように「音楽業界で働くのはやめよう」と思う方もいると思います。
おそらくライブハウスに限らず廃業に追い込まれる事業社(者)はまだまだ増えると思います。
ここでまとめた通り、ライブハウスの現状としては、そのどれもが"急場しのぎ"です。
ですが、主観抜きにしても、音楽は必要とされるでしょうし、"お金を払ってでも音楽が必要"という人は多くいると思っています。
そういった方がいる限り、音楽は職業としても成立すると考えています。
今は急場しのぎが精一杯ですが、必ず環境や時代にフィットした形で息をふきかえすでしょう。
それもコロナ禍での経験を経て一層パワーアップした形で。
なので、「もう音楽業界はいいや。」などと思わず、引き続きご愛読くださいませ笑。
やっぱりコロナの奴ってば、どういじっても面白くないですね。
では、また◎