TINY MUSIC LIFE

音楽を仕事にする方法やビジネス論、考察や小ネタなどをお届けする音楽情報ワンパーソンメディア。by TINY RECORDS八木橋一寛

バンドとDJによるイベント中の音出しトラブルに寄せて

f:id:TinyBicycleClub:20201020194518j:plain

「一旦、落ち着こう。」的なポーズをたまたま取っていた筆者...

ンドとDJが交互に進行する音楽イベントというものがあるのですが、どのくらいの方がご存知なものでしょうか?

 

私の良く知る限りだと、ジャンルとしてはロック系のイベントに多くある開催形式なのですが、しばしば論争やいざこざがこの両者の間で起こることがあります。

 

その内容で最も多い原因というのは、

「DJプレイ中に、バンドがサウンドチェックでDJの音を搔き消すのは如何なものか?」

というもの。

 

私はこういったイベントの主催者も数百回はやっていますし、DJもそれ以上にやっています。バンドは自分が演者としてはやった事はありませんがそのスタッフとしてバンド側の気持ちでこの形式のイベントに関わったこともあります。

もちろん、お客さんとしてそういったイベントに遊びに行くことも何度もありました。

 

そんな会場に関わる四者いずれの目線からも、この論争やいざこざを見聞きして考えた結果として、こう思っています。

 

責任の所在は主催者一択。

 

かなりニッチなテーマにはなってしまいますが、今日はそんな話を深掘りしていきたいと思います。

 

 

トラブルの原因となるバンドのサウンドチェック

口火を切るのはほぼ100%、DJ側

いざこざが度々起こるとは言いましたが、口火を切るのは私の知る限り100%DJ側になります。

 

なぜなら、DJのプレイ中にバンドのサウンドチェックをされてしまうと、DJが流している音は全くと言って良いほどにフロアの観客からは聞こえなくなります。

つまり、DJプレイという行為が完全に無効化されてしまうのです。

 

これ、「そういうものだ。」と割り切ってしまうことができれば良いのですが、そうではない場合には確かに相当に腹は立ちます。

というか、虚しいとか悲しいと言った方が適切かもしれません。

 

せっかく準備をして会場入りをして時間を使って、物理的に誰も聴いてくれないという状況になる訳ですから、調理した料理を口もつけずに捨てられたような感じとでも言いましょうか。。。

 

では、「逆のケースは無いのか?」と言うとありません

バンドの本番中(演奏中)にはPA卓の方でDJブースの音を切っているので、仮にDJがバンドの演奏をDJの音で掻き消そうと試みたとしても、スピーカーからDJの音が出ることは無いのです。

 

そんな理由から、この論争や口論の発端というのは基本的には常にDJ側から始まります。

 

開演後のバンドのサウンドチェックは必要か否か

「DJプレイ中にサウンドチェックしなければ解決じゃん。」

と思う方もいらっしゃるかと思いますが、なかなかそうもいきません。

 

まず、小規模なライブハウスなどの場合、必ずしもバンドが開場前にリハーサルを行っているとも限りません。

この場合、確実に転換時(DJプレイ中)に音を出す必要がある為、主催者がそもそもその転換時間にDJを組むべきでは無い、もしくはその旨をDJに事前に伝える必要があります。

このいずれかを主催者がクリアしておけば、リハ無しのケースは解決です。

 

次に、リハーサルを行った上での転換時のサウンドチェックについてですが、必要か否かで言えば必要です。

しかし、どうしても必要なのは文字通り"チェック"程度ではあるので、例えば15分や20分間、ずっと音を出し続ける必要はありません

 

DJ側から口火を切るタイミングの多くは、"必要以上”に音を出し続けた場合だと感じています。

 

DJ目線から言うと、仮に主催者からDJについて何も聞かされていなかったとしても、イベント詳細などには"DJ"という表記もあるはずなので、「わざとやっているのかな?」とさえ感じてしまう事もあります。

 

バンド目線から言えば、無論わざとやっている事はありません。

シンプルに"DJ"というものに対しての知見がなく、無自覚に音を出してしまっている事がほとんどだと感じています。

 

多くのバンドマンは、当たり前ですがその日のライブで最大限のパフォーマンスを発揮する事に意識のほとんどを費やしています。

そのためには音質やモニター等のバランスにも極力気を配りたいですから、特に誰からも何も言わなければ、DJが音を出していると認識ができたとしても、自身のサウンドチェックに気のすむまで時間を割こうとするのは当然です。

 

だからこそ主催者がバンド側へDJがいる事の説明を行うべきであり、それを怠ったのであれば冒頭に書いた通りに責任の所在は主催者だという訳です。

怠らずに伝えお願いをしてもガンガン音を出すバンドもいますが、だとしても「そういうバンドとDJを同じイベントに組んだ。」という責任としてやはり主催者が責められるべきだと思っています。

 

主催者に向けるべき矛先

理解されにくい転換DJの心理や立場

上述した通り、主催者の事前の気配りでこのトラブルというのは大半は回避が可能です。

 

バンド側には、

「DJがいる事やDJも含めて出演者としてイベントを作り上げている旨を伝え、その為、転換時のサウンドチェックは最小限に留めてほしい。」

というお願いを行い、DJ側には、

「バンド演奏というものはリハーサルを行っていたとしても、数分程度の音出しの必要はある旨を伝え、リハ無しのバンド前の転換にはDJは組まない。」

とするだけで、大半のバンドとDJ間でのトラブルは回避できるはずです。

 

それでもこのいざこざが頻発するのは、主催者がなかなか転換DJの心理や立場を理解しづらい為かと思っています。

 

先にも書いたように、時間や労力をかけて会場入りをしてDJを始めたらその行為を無効化される虚しさは、やられてみないとなかなか理解ができないでしょう。

加えて、多くの場合、事前のイベント告知などの段階から、バンドを強調していてDJは添え物的な見せ方になる場合が多いです。

知らぬ間にバンドに比べてDJは扱いが悪くなってしまうケースが割合として多いという訳です。

 

しかしこれも主催者側は無自覚にそうしてしまっている場合も少なくないとも感じます。

 

せざるを得ない出演者の優劣付け

無自覚な場合も少なくないと書きましたが、主催者という立場上、自覚的にある種の優劣付けをせざるを得ない部分も発生してしまいます。

例えば、出演者数が多い場合には与えられる楽屋の広さなどの優劣は発生してしまいます。

 

しかしおそらく一番は、数字になると思います。

 

主催者が例えば、「1年に1度、趣味として好きなバンドやDJを呼んでイベントがやりたい。」という事であれば、貯めたお金を使って数字(売上や集客)を気にせず開催をしても良いと思いますが、仕事としている場合にはこの限りではなくなります。

 

多くの来場者や高いイベントの満足度を生んだ出演者には必然的に感謝の念も強まります。

そんな気持ちの面だけではなく、10人集客してくれた出演者よりも、100人集客してくれた出演者を優遇せざるを得ない場面も出てきます。

 

集客という意味では、DJよりもバンドに依存しているケースが割合としては多いように感じていますので、そうなった場合にはDJ側は冷遇を感じる機会が増えてしまうように思っています。

 

不満は主催者に対するホスピタリティに向けて

DJ側の不満や憤りの声として一つあるものとして、

「バンドだけじゃなく、自分達DJもアーティストなのだから対等にして欲しい。」

という声も散見します。

 

この場合、主催者の都合上、集客の多い側を優先せざるを得ない場面があり、DJ側の集客が少ない場合、その不満や要望に応えることがどうしてもできません

対等かそれ以上にする為には、バンドを上回る集客や来場者への満足度をDJが生み出すしか方法はないと思っています。

 

分かりやすく、あえて極論を書いてみます。

例えば、ノエル・ギャラガーの前にDJをやる機会があったとして、DJ中にノエルが音出しをガンガンしていたら、ノエルに対して怒りは湧くでしょうか。

 

反対にカルヴィン・ハリスのDJ中に、次のバンドが音出しをしていたとしたら、観客がそのバンドを睨みつけるような気はしませんか?

 

主催者がつけるプライオリティというのは、チケットセールスに多く結びつくという事でもありますが、それは同時に来場者の需要に応えたいという意味でもあります。

 

私も何度も自身のDJプレイをバンドのサウンドチェックで無効化された経験はありますが、そもそもその事を来場した観客が気になっていない時点で、観客は私のDJよりも次のバンドを楽しみにしている事がはっきりしています。

そのことに対して、バンドに対して不満を述べるのは矛先が違うように思っています。

 

矛先としてはバンドに対してではなく、説明不足だったり、優劣を付けてきた主催者に向けるのが適切です。

しかし、「出演者として対等にしろ。」と迫るには、バンドに並ぶ集客や満足度を作ってからでないと、主催者も汲み取りにくい部分があります。

 

ですので、私はこう訴えかけるのが良いのではないかと考えています。

「集客や来場者に与える満足度がバンドに劣っていたとしても、時間や労力を使ってDJとして参加してくれたという事に対しての、感謝や尊重の念は持つべきだ。」 

こう迫るのであれば、至らなかったところがあれば主催者側も改善や謝罪がしやすいような気がします。

つまり、数字や結果云々ではなく、 "DJという出演者に対するホスピタリティに対してのクレーム"という訳です。

 

最後に(まとめ)

最初に書いた通り、一応はこのトラブルに関わる四者全ての目線を経験した上で極力フラットな考察にしたつもりではありますが、先日以下の記事で書いた通り、DJは辞めてしまっていて自身の取り組みの真剣度が下がっているので、もしかしたらDJからするとドライな印象になってしまっているかもしれません。。。

主催者側になる事が一番多いので、主催者にはもっと厳しくなっているかもしれません。。。

 

DJに限らず、私は物事の価値を決めるのは自身ではなく他者だと考えているタイプなので、"音楽イベント"という場でのプライオリティや主張の強度は、来場者にとっての価値で決めるべき事かなぁという前提に立っている事も補足いたします。

 

よほど主催するイベントが軌道に乗り高いステータスを確保している場合を除けば、バンド・DJ・来場者のどこかからは必ず不満を浴び続けるのが主催者の常だと思っているので、特に小規模イベントの主催者は良い事が極端に少なく、かなりのハイリスク・ローリターンで切なくなりますが、そういうものなので仕方ないですね。涙

 

反対に、うまく軌道に乗るとインフラや共通認識が確立されてある種の無双状態に入りとても楽しいと思うので、主催をこれからしてみたいという方は、なんとかして軌道に乗せて無双してください。笑

 

ではまた明日◎ 

にほんブログ村 音楽ブログへ

 

※今後新たにスタートしていきたい企画やサービス、情報もあるので、以下のLINE@やTwitterのフォローもお願いします◎