TINY MUSIC LIFE

音楽を仕事にする方法やビジネス論、考察や小ネタなどをお届けする音楽情報ワンパーソンメディア。by TINY RECORDS八木橋一寛

悪意のネーミング「密フェス」と「音楽フェス=密」はまた別の話

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型コロナウイルスの感染拡大により、中止や延期の相次いでいる音楽フェスティバル。

 

前回の記事では、3日間の有観客開催を終えたフジロックについて触れましたが、その中で私は、「フジロックはルール内での開催」と強調をして書いていました。

そのすぐ後に開催されたのが、8月29日に愛知県で開催されたヒップホップの野外イベント「NAMIMONOGATARI2021」でした。

 

ニュースやSNSで多数、そして大きく扱われていますので、このフェスで起こった細かな事柄はこの記事では割愛して、ここでは「密フェス」と名付け、「さあ、もっと燃え盛れ!」と薪をくべ続ける風潮について、考えてみたいと思います。

 

 

奇しくも発揮された「密フェス」というネーミングセンス

不謹慎な言い方かもしれませんが、「密フェス」というこの通称、生贄として非常に優れたネーミングセンスだと私は感じてしまいました。

コロナ禍の現在、これほどに分かりやすくて不名誉な呼称はなかなかありません。

一目で"悪"だと誰もが認識ができます。

 

無論、実際にこの「NAMIMONOGATARI2021」での状況が、全て報じられている通りであるのなら、許容できるものではありませんし、叩かれて然るべきだと私も思います。

 

ただ、多くのメディアが揃って正式名称ではなく、「密フェス」と見出しを付ける理由は正義感と言えるのでしょうか。

世の中の関心やアクセス数を稼ぐために、そう呼ぶ方が有効だという下心を、私は強く感じます。

 

"フェス=密"という誤認識への誘導

SNS隆盛の現代において、ネット上にはストレスのハケ口なのか、過度な正義感なのかはそれぞれでしょうが、いわゆる燃やし屋のような生贄を探しては炎上をさせる人々が一定数いるようです。

そして、そういった燃やし屋は投稿回数も多く使う言葉も強いので、それが世論の声だと誤認しがちになってしまいます。

メディアもそう誤認している節があり、燃やし屋の声を世論と誤認し、世論の需要だと思い込んで、彼らが喜びそうな見出しで炎上のための燃料を投下し続けています。

 

で、密フェスこと「NAMIMONOGATARI2021」です。

これは私の推察になりますが、フジロックの有観客開催で「けしからん!」と声を挙げた人も、声は挙げずとも否定的に感じていた人も、どこかに「でも、ガイドラインには沿っているしなぁ。」という理解はあったと思います。

肯定・擁護派がその根拠にしていたのもこの点かと思います。

 

しかし、「NAMIMONOGATARI2021」は、このガイドライン遵守に疑問や問題が及んでおり、開催肯定派であっても庇いようがありません。

 

ここまでは良いです。

引っかかるのは、この"密フェス"というキャッチコピーの秀逸さ故に、『音楽フェス=密』と、フェス全体に対するネガティブイメージを深めているのではないかという事。

 

前回の記事でもこれまでも度々書いていますが、改めて繰り返すと、私自身の音楽フェスやコンサートに関する考えは、

「長く音楽関連の仕事をしている心情的には、出来るだけ早い再開や最小限の廃業数に留まって欲しいと願いますが、最短でコロナ以前に近い状態に戻すのであれば、今のタイミングで動くべきではない。」

というものです。

 

今回の「NAMIMONOGATARI2021」によって、音楽フェスやコンサートへの視線は、より厳しいものになったと思われます。

コロナ以降、有観客で開催された音楽フェスやコンサートのほとんどは、ガイドラインを遵守した開催だと言えますし、その理由についてはこのブログでも何度か書いた通り、国内最初のクラスターがライブハウスだった事に起因します。

なので、遵守するばかりでなく、集客ビジネスの中でも上位にナーバスな対策をしている業種だと私は感じています。

 

それでも、燃やし屋や集団心理に対しては、そんなナーバスな感染対策の実態はなかなか届きませんし、届いたとしてもおそらくお構い無しです。

 

いかにナーバスで厳格にガイドラインを遵守し感染対策を行っても、結果として感染者が出たり、瞬間的な密集やマナー違反を切り取られたら、それが否定派の根拠になってしまいます。

私はコロナ以降に有観客の音楽フェスや大規模イベントには行ったことがありませんが、コロナ以前はそれが仕事でもありましたので、それこそ毎日のように行っていました。

 

その経験則から私が不安視していたのは、音楽ライブという性質上(特にフェスは)、興奮などによって瞬間的に密集が起きてしまったり、マスクを外す、大声を出す、お酒を飲むといった状況や来場者が発生する可能性はあるという事。

 

上述の「最短でコロナ以前に近い状態に戻すのであれば、今のタイミングで動くべきではない。」と私が考える理由がこれでした。

 

主催側や大半の来場者がルールを遵守しても、一部の来場者や、瞬間的熱狂を切り取られると非常に分が悪いのです。

 

最後に(まとめ)

話をくっきりとさせるために、やや極端気味な書き方はしましたが、ガイドラインやマナーを遵守しても、他の集客ビジネスと比べてそれが崩れるリスクが高い音楽フェスやコンサートだとは思います。

 

その割合の変化は実数として把握できませんが、キャッチーに煽る「密フェス」というワードと「NAMIMONOGATARI2021」の状況は、音楽フェス開催否定派の比率を少なからず高めたように感じています。

 

心情的には私は肯定派なので、ポジショントークと取られても致し方ありませんが、多くのフェスは非常に細かくガイドラインを遵守していますし、その点については他のフェスまで"密"だとイメージを引っ張られない事を望んでいます。

但し、一部の来場者によって、それが破られる可能性があることは否定できないので、その点を許容できるか否かを争点にするのが、現時点での適切な各々のジャッジと言えるようにも思っています。

 

ではまた◎ 

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