TINY MUSIC LIFE

音楽を仕事にする方法やビジネス論、考察や小ネタなどをお届けする音楽情報ワンパーソンメディア。by TINY RECORDS八木橋一寛

繰り返される自粛要請とコンサート業界・ライブハウスの現在

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京都では8月3日〜31日の間、酒類の提供を行う飲食店やカラオケ店に対して営業時間の短縮要請が再び出されました。

 

これを受け、SNS上などではライブハウスやクラブを含めた多くの飲食店関係者の怒りや悲痛の声が投稿されています。

 

このブログでは政治的な意見の発信をしたい訳では無いので極力私見は控えたいと思いますが、今回出された要請の内容には疑問やお粗末さは禁じえません。

 

店舗経営をされている方などの当事者は、この要請が出された時点でそれによる損失の大きさを把握していますが、無関係な方にはピンと来ない部分もあるかと思うので、その説明や派生して起こりうる懸念を今回は書いていこうと思います。

 

多分にポジショントークも含まれるでしょうし、あまりポジティブな内容にはならないと思いますが、知る・考えるきっかけのひとつになってくれれば本望です。

 

 

自粛要請の内容とその損害

以下は今回の要請についての報道の抜粋になります。

東京都は30日、新型コロナウイルスの感染防止策として、都内全域の酒類を提供する飲食店とカラオケ店に再び営業時間の短縮を要請すると発表した。営業時間を午前5時~午後10時とし、期間は8月3~31日となる。

新型インフルエンザ対策特別措置法に基づく要請で、応じた中小事業者に20万円の協力金を支給する。業界ごとのガイドラインに従った感染防止策への取り組みを示すステッカーを掲示する店舗が支給対象となる。

※日本経済新聞より引用

要約すると、

「酒類の提供を行う飲食店の営業は22時まで。応じた事業者には20万円の協力金を支給。」

というもの。

 

出された要請内容のみで言えば、かなりゆるい制限なので感染防止策としての効果は期待でき無いようにも思えますが、内容はどんなものであれ、"感染拡大警報"や"自粛要請"を出した事自体に飲食店は大きなダメージを負います。

 

自粛警察という存在が多発したように、今回も営業自体は許可しているスタンスを取りつつ、ゼロリスク派を駆り立てて再び同調圧力の呼び起こしをしています。

都としては、補償を最小限にしつつ外出をさせない方法として、極めて意識的にこの同調圧力を利用しているはずです。

 

つまり今回も、都政の舵きりという人災により、

「22時までなら営業はして良いのに、営業をすると批判にあったり、来店控えが起こる。」

という事態を招くでしょう。

 

多くの飲食店は、自粛そのものに声を上げているのではなく、この点に怒りや悲観を覚えているのです。

 

何度でも出されるであろう自粛要請

国も都も、一度ゼロリスクを目指した舵きりをしている以上、 感染者数が増える都度、このような自粛要請を何度も出すであろう事は多くの人の想定の範囲内でした。

 

その為、私も以下の記事のような内容を書きました。

個人的な感情だけで言えば、私も多くの飲食店同様、今回の自粛要請内容に大きな不信感は持っています。

 

おそらくこの先、何度も出されるであろう今回のような同調圧力を利用した自粛要請。

ライブイベントを生業のひとつにしている私としては、今回のコロナショックでこの同調圧力が心底恐ろしいと思いました。

そして、個人ではどうにも抗えない強大な物だとも思い知らされました。

 

上述の記事で書いた、

「少なくとも年内は、ライブイベントにキャッシュポイントを求めるのは無理があると感じた。」

というのは、そんな理由からです。

 

その記事とあえて重複して書きますが、この先また自粛と緩和が繰り返されるのは明白なので、やはり観客を入れたライブイベントにキャッシュポイントを求める選択肢は捨てた方が良いと思ってしまいます。

 

ライブイベントというものは、当日思い立って開催できるものではありません。

事前に出演オファーや各種手配を行なった上で開催をするものです。

その準備をしても、この先何度も中止をする事になりますし、中止になれば赤字は出ても利益は発生しません。その準備にあたったスタッフ人件費(固定給であってもそれはコストです)も無駄になります。

 

資金的体力があるのであればそんなリトライを繰り返しても良いとは思いますが、無いのであれば別のマネタイズを考えるべきです。

ライブに拘らずとも、音楽を用いたマネタイズはいくらでもあります。

 

どうか、

「私達にはライブしかない。」

という固定観念は捨てて、延命する方法を模索して欲しいと願っています。

 

懸念される余波

今日8月1日に、横浜赤赤レンガ倉庫エリアで2005年より毎年開催されている野外音楽フェス「GREENROOM FESTIVAL」の今年の開催が中止発表されました。 

 主催者からのステイトメントでは、

  • 政府からの野外フェスティバルの自粛要請
  • お客様、アーティスト、スタッフ、関係者、全ての方々の安全を最優先するため

という中止理由の説明が書かれています。

 

非常事態宣言があけ、緩やかに再開の兆しやムードを掴みつつあった音楽フェスやコンサート業界でしたが、再び逆風へと風向きが変わりました。

 

次なる不安は、9月の19、20、21日に開催を予定しているSUPERSONIC(スーパーソニック)の開催可否でしょう。

 

無観客の配信フェスとしては既にいくつかの大規模フェスが行われていますが、観客を入れたものとしては唯一開催の意向を見せているビッグフェスです。

 

この9月の段階で観客を入れた開催のロールモデルが作れるのと、これが中止になるのでは多くの音楽フェスや大規模イベントの見通しに影響することも考えられます。

 

SUPERSONICの場合、海外アーティストをラインナップの主軸としたフェスの為、兎角開催ハードルが高い事もあり、今回の自粛要請によるムードの変化で開催確度はかなり下がってしまったかもしれません。

 

都のアナウンスの文面だけを見れば、「22時までならライブハウスやクラブも営業して良い」という今回の自粛要請ではありますが、これにより生まれた空気感は月並みな表現になりますがまさに魔女狩りです。

 

音楽コンサート業界やそのファンが、社会的にはそもそもマイノリティである以上、そして不要不急と名指しされた状況下では、仮にルール上は"可"であっても強行は困難です。

 

予想されていた事ではありましたが、繰り返される自粛要請、そしてその都度正義をくすぐる"自粛ムード"というのはそれほどに恐ろしいと感じています。

 

最後に

やはり題材的に今回は随分と悲観的な内容になってしまいました、、、。

そして、結局まあまあ私見も書いてしまっていますね、、、。 

 

私見ついでに書き添えると、ことライブハウスを含めた飲食業や音楽コンサート業界の目線で考えると、直面する脅威は新型コロナウイルスではなく、アジテートされた大衆心理だと私は感じています。

それはコロナが終息しない限りは変わらない潮目だとも思っています。

 

しかし、私はこの潮目に抗おうとは思っていません。

”恐ろしい”と書いた通り、抗えないとも思っていますが、

「不要不急な営業で感染を拡大させるな!」

という世論も理解できるからです。

 

ですので、政府機関は極力財布の紐をほどかないで済むよう、対立構造を煽ってはきますが、どうしても対立するのであれば、せめて対立関係にある対象の状況も理解した上でという事で、今回は状況を掘り下げさせていただきました。

 

ではまた◎ 

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