TINY MUSIC LIFE

音楽を仕事にする方法やビジネス論、考察や小ネタなどをお届けする音楽情報ワンパーソンメディア。by TINY RECORDS八木橋一寛

【Artist File②】 比類なきポップソング・メイカー、FOUNTAINS OF WAYNE

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きなアーティストを尋ねられた際、相手やその日の気分に応じて名前を挙げるアーティストには入れ替わりがあります。

 

とはいえ、ある程度の選択肢は決まっていて、だいたい10組くらいから入れ替わっていると思うのですが、その中には必ずFOUNTAINS OF WAYNE(ファウンテインズ・オブ・ウェイン)が存在し続けています。

 

前回はThe Strokesにフォーカスした記事を書きましたが、同シリーズ的に今回はFOUNTAINS OF WAYNEについて、基本情報や当日の記憶を辿った印象などを書いていきたいと思います。

 

 

FOUNTAINS OF WAYNE 基本情報

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クリス・コリングウッド(Vo/Gt)、アダム・シュレシンジャー(Ba)を中心に1996年に結成されたニューヨーク出身のロックバンド。

 

1996年から2011年にかけて、5枚のオリジナル・アルバムと1枚のレアトラックス・アルバムを発売。

 

また、クリスはソロプロジェクト「LOOK PARK」、アダムはTAHITI80プロデューサーのアンディ・チェイスらと「IVY」、スマパンのジェームズ・イハらとの 「TINTED WINDOWS」でも活動を行っています。

 

アダムは今年2020年4月1日、新型コロナウイルス感染と合併症により亡くってしまいました。本当にショックです。。。

 

バンドは既に2011年の5thアルバムをラストアルバムと呼んでおり、解散とは明言していないはずですが、実質活動休止状態となっていました。

 

ディスコグラフィー 

1枚ずつレビューしていくとそれだけで終わってしまうので、タイトルとアートワークに簡単なコメントを添えるのみで進行していきます。

一つ確かなのは全作名盤です◎

 

Fountains Of Wayne (1996)

WEEZER(ウィーザー)の1stと双璧を成す、モダンパワーポップの金字塔となった1stアルバムです。

パワーポップ然としたミドルテンポの「Radiation Vibe」から「Survival Car」のような疾走ポップまで、瑞々しさの溢れる楽曲が詰まっています。録音も楽曲のテイストにフィットした荒々しさがあり、青春度数の高いデビュー盤らしい作品です。

 

Utopia Parkway (1998)

前作の延長線上のナード感溢れるキャッチーソング「Red Dragon Tattoo」、「Denise」なども健在ですが、「Troubled Times」のような憂いあるバラード寄りの楽曲も顔を出し始めた2ndアルバム。

ちなみに私的には「Troubled Times」が全楽曲中で1番好きかもしれません。

 

Welcome Interstate Managers (2003)

絶妙な歌メロとコーラスワークのオープニングナンバー「Mexican Wine」で既に大傑作の気配しかありませんが、リードシングルになっていた「Stacy's Mom」の大ヒットが当時本当に印象的というか驚きでした。

全米9位を記録し、さらにグラミーの最優秀新人賞にノミネートされるという、商業的ヒットとは無縁のイメージがあったFOWとしては考えられない快挙だったように思います。

「Stacy's Mom」はリアルに500回くらいDJでかけたのではと思います。笑(そのために7インチレコードも5枚くらい持っていました汗)

 

Out Of State Plates (2005)

シングルBサイドやデモ、カヴァー楽曲などをコンパイルしたレアトラックス集ですが、オリジナルと遜色のない名曲が揃っています。

中でもFOWらしい3分間ポップソング「I Know You Well」や、ジャクソン・ブラウン「These Days」カヴァーあたりは白眉です。

 

Traffic And Weather (2007)

シンセを象徴的に使ったものや、「Someone To Love」のようなダンスポップ的楽曲、ルーツミュージック寄りのものまでパッケージされた、全アルバム中で一番チャレンジングで振り幅の広い作品かもしれません。

 

Sky Full Of Holes (2011)

ラストアルバムとなる5作目。

「Someone's Gonna Break Your Heart」をはじめ、2ndあたりのFOWらしい楽曲に回帰した感もある中で、長いキャリアで培ったアレンジ能力も感じられる彼らのポップアルバムとしての集大成といった貫禄を感じます。

個人的には「Action Hero」は全キャリア中でもベストに挙げたい名曲だと思っています。

 

ポップソング・メーカーとしての功績

1990年代〜2000年代を代表するパワーポップバンドとして知られるFOUNTAINS  OF WAYNEですが、アダム・シュレシンジャーのソングライターやプロデューサーとしての評価も非常に高いです。

 

1996年公開のトム・ハンクス監督・脚本・出演映画「すべてをあなたに(原題:That Thing You Do! )」では、架空のバンド”THE WONDERS”が歌う主題歌「That Thing You Do!」の作曲をしたことでも知られています。(超名曲!)

 

アダムが亡くなった際には、グリーンデイのビリー・ジョーが追悼の意を込めて同曲のカヴァーを披露したことも話題となりました。

 

グリーンデイをはじめとするいわゆる”メロコア”や”メロディックパンク”、”エモ”と呼ばれるようなバンドは、そのトリビュート盤の多さからも分かるようにウィーザーをルーツやリスペクトの対象に持つバンドが多く、次いで90'sパワーポップを象徴するFOUNTAINS OF WAYNEも多大な影響を与えたと言えるでしょう。

 

日本でもアジアンカンフージェネレーションやエルレガーデンといったバンドからもFOWから影響を受けているような印象があります。(アジカンは公言していると思いますが、エルレの方はそんなに熱心には曲を聴いていないもので違ったらすみません。汗)

 

何より、トレンドやシーン感関係なく、真正面から良い歌やメロディだけで存在感を示せていた事は、「良い音楽を作れば評価されるんだ」的な夢も感じましたし、素晴らしいと思っています。(加えてクリスの声も素晴らしいです。)

 

リアルタイムで追いかけた印象や活動遷移

パワーポップ文脈で語るとウィーザーが比較対象となりやすいですが、シーンを双方で盛り上げるとか交流をするような関係ではなかったように記憶しています。

 

ウィーザーは3rdあたりからリヴァースのナード感も減退し、多バンドとの交流も多く極端に言えばリア充化していった印象を受けましたが、FOWに関してはキャリア通じてずっと職人気質を感じる孤立したイメージがあります。

 

楽曲も(ジャンルとしての)エモ要素はほとんどありませんし、パワーポップ的なアプローチなのは1stのみで、以降はブリティッシュロックやSSW傾向の方が強く感じます。

同時代で印象の近いものを挙げるとすれば、グラスゴーバンドの作風や空気感がしっくりくるように感じていました。

 

初めて彼らのライブを観たのは1999年のフジロックだったのですが、1st、2ndアルバムはリリース済みで、既に大ファンだった私は喜び勇んで最前列へと飛び込みましたが、後ろを振り返ると10列あるか分からないくらいの人しか集まっていなかったので、日本での認知度はあまり高くは無かったと言えると思います。

 

その後全米9位を記録した「Stacy's Mom」のヒットもありますが、日本で多くの人がそのヒットを知るような事はなく、その人気や評価の高さは一部のコアファンの局所的なもののように感じていました。(本国だとどうだったんですかね、、?)

※ちなみに日本での単独公演はリキッドルームやクアトロとやはり大きな規模ではありませんでした。

 

代わりに、ロックファンの中には私同様、FOWをフェイバリットバンドとして挙げる人は日本にも根強く存在しています。

 

楽曲に真新しさがあるわけでも、シーンの旗手だとか時代を作ったといったタイプのバンドでも全くありませんが、期待を裏切らないポップソングを粛々と届け続けていた事がこのバンドを好きな理由ですし、偉大なところかなぁと思います。

 

聴いた事が無い方には是非聴いて欲しかったので、Youtubeとかで曲を貼りたかったのですが、FOWはオフィシャルなものが少なく断念しました。。。涙

なので、お手間かけますが是非探して聴いてみてください。

 

ひたすらに楽曲が良いというバンドなので、カリスマ性があるわけでもドラマチックな歴史を語れる訳でもなく、だいぶこざっぱりした内容になってしまいましたが、聴けばわかるさという事で。

 

ではまた◎

↓2020.9.21 Artist File③ THE BLUE HEARTSをアップしました↓



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