TINY MUSIC LIFE

音楽を仕事にする方法やビジネス論、考察や小ネタなどをお届けする音楽情報ワンパーソンメディア。by TINY RECORDS八木橋一寛

音楽業界にはAとBがある?明確にすべきポジションについて。

しぶりにこうしてブログを書いてみると、「難しいなぁ」と感じる事がひとつあります。

 
同じ記事でも読み手によっては、大きく異なる印象を与えてしまう可能性があるという事。
 
なぜそうなってしまうのか?といえば、立場が異なるからです。
 
Twitterなどを見ていると、良く炎上や言い争い見かけますよね。
あれって単なるアンチが突撃している場合も多いですが、それ以外は単にポジショントークが激化しているだけなんですよね。
 
本来、丁寧に
「私のこの考えは、私はこのような仕事をしていて、このような環境にいるのですけど、その上で申し上げますと」
とか、ポジション(立ち位置)を表明した上であれば、もうちょっとトラブらないのではないかなと思っています。
 
例えば、
「この時期は仕事が忙しくって最悪だー」
という呟きがあったとします。
「ほんとそうだよねー」
と感じる人もいれば、
「忙しいなんて最高じゃん。羨ましい。」
と感じる人もいます。
 
仕事が生きがいとか、フリーランスの人であれば忙しいのは喜ばしいでしょうし、会社員や仕事はあくまでも生活の為と考えている人であれば、嬉しくはないのかもしれません。
 
このブログは音楽に関するブログなので音楽で例えてみましょう。
「観に行ったライブの開演が押していた」
とします。
 
開演前にしっかり到着していたお客さんは当然その方が嬉しいでしょうし、仕事や学校などで開演ギリギリとか間に合わないっていう場合は、押してくれて良かったと思うでしょう。
また、演奏者も少し押してお客さんが増えるなら押したいと思うでしょう。
 
まあ、開演はライブハウスやイベンターの仕事をしている私からしたら、押すのは良くないし押したくないんですけど、それも含め、立場でこのように印象が変わってくるわけです。
 
Twitterの場合は、文字数に制限があるため、この前提を書き込めないので、特に炎上やトラブルが起きやすいのだと理解しています。
 
で、本題です。
音楽業界にはAとBがある?
というのが今回のお題です。
 

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2通りの音楽業界

表と裏とか、赤と青とかと言い換えても構いません。
先に挙げたTwitterなどでのいざこざの原因は"ポジショントークの激化だ"という話で言うと、音楽にまつわるいざこざも、このAとBが揉めているケースが多い気がします。
 
以前の記事で、
「何がどうひっくり返っても、音楽業界はアーティストが主役でそれ以外は裏方だ」
と書きました。
 
となれば、このAとBというのは、その主役のアーティストの違いによる棲み分けでしょう。
 
いわゆる音楽専業で生活をしているようなアーティストと、別の仕事をしながら音楽活動をしているアーティスト
 
実数で言えば、後者の方が圧倒的に多いです。
ですが、一般に(お父さんお母さん世代含め)アーティスト、ミュージシャンといえば、前者をイメージするはずです。
 
事務所やレーベルの所属有無、当人の現状の満足度などでも差異があるので、それだけで厳密な線引きはできないのですが、この前者と後者のどちら寄りのポジションか?という事が食い違いの要因であったり、活動や仕事として取り組むマインドの違いに大きく関わっていると感じています。
 

その違いとは何か?

まず、AとBというと、Aの方が良い方みたいに見えるかもしれませんが、そういう事ではありません。
2通りに分けて表現できるものであれば、なんでも構いません。 
アーティストの違い
その上で、Aを「音楽活動専業で生活をしているアーティスト」、Bを「専業ではないが音楽活動をしているアーティスト」とここではさせてください。
 
ライブで言うと、Aの主戦場はホールなど4桁キャパシティのベニューが多いでしょうし、Bはいわゆるライブハウスと呼ばれる数百人キャパシティのベニューが多いです。
 
楽曲制作で言うと、Aにはセールスを意識した意見や手直しが入りやすいですが、Bにはその制限が少ないです。
 
楽曲だけでなく活動そのものに関しても、BはAに比べ自由度が高いと言えるでしょう。
 
反面、マーケティングの観点が加わりにくい、予算の都合などから、動員やセールスについてはBに比べてAが伸ばす結果になりやすいです。
 
アーティストは職業である以前に、表現者です。
セールスや動員を目指すことはあっても、それ自体が夢である事はほとんど無いはずです。
Aのフィールドで活動する事はできるけど、あえてBをフィールドに選んでいるアーティストもたくさん存在します。
"セールスや動員が下がったとしても、自由に創作や活動がしたい"という理由からです。
 
逆に、思考としてはB寄りだけど、まずは音楽に専念をする為や、発言力・影響力を強める為に、Aをフィールドに選ぶケースもあるでしょう。
 
ですので、昔から「売れないバンドマンは云々」みたいな揶揄のされ方がありますが、正しくはありません。
売れる売れないを目標にしていないアーティストも存在するのですから。(そもそも"売れる"って何?という線引きや概念もポジション次第かもしれませんね)
 
裏方である私達にとっての違い
私達(や主にこのブログを読んでくれている方)のような裏方も、アーティストではありませんが、この"どちら寄りの思考が強いかで棲み分けがされている"というのが今回の主眼です。
 
既にこのブログでも書いたとおり、私自身はB寄りです。
が、A寄りの仕事をする事も多いです。
 
そのため、純粋なお客さんとしてライブを楽しむ場合も、ドームやホールには好んでは行きませんし、行ったとしてもどこか仕事目線で会場内の動線や装飾、誘導、演出、経費などが気になってしまいます。
 
全てのアーティストやライブでは無いですが、大きな会場でのライブよりも、小さなライブハウスで行われているライブの方が、感動したり楽しかったりする事が私の場合は多いのです。
 
ですが、A寄りの仕事をする事も多い為、売上や動員などの数字を意識する必要のある会議や議論を行う際には、意識的にA寄りの立場を取る場合も多いです。
 
意識的な場合は良いのですが色々な仕事をやり過ぎたせいで、その時々のポジションだけではなく、思考そのものがAとB混在してしまっています。。
自分自身がこのややこしさと矛盾を抱えてしまっているからこそ、言語化してクリアにすべく、今回このお題を選んでいるのかもしれません。
  
自分のポジション説明が長くなりました。。
もう一度書きますが、どちらが優っている劣っているとかではありません。
 
ただし、音楽活動を続ける上で、音楽活動が収益になっているか否かは重要です。
 
音楽活動だけで生活ができれば、他の仕事をせずに音楽活動に専念できますが、他の仕事をしていれば単純にその時間が削られるわけですから。
 
そういった理由からも、多くのアーティストが(一旦は)音楽活動だけで生活をできる状況を目指しているはずです。
 
私の場合は、この「音楽活動だけで生活ができる」までの助力することが、ひとつ大きな仕事のモチベーションになっています。
 
本来、音楽アーティストが楽曲を生み出し、その楽曲を演奏する行為は芸術活動なはずなので、セールスや動員はその評価とは別軸で語られるべきではあると思います。
 
ただ、私が関わっているのはポップミュージックです。
 
クラシック音楽であれば、コンクールなどで優秀な成績を収める事ができればそれがステータスにもなり、それにより収入に繋がる仕事も引き寄せられるでしょう。
 
このポップミュージック云々の話こそ、めちゃくちゃ長くなるので今回は端折らせて頂きますが(今後詳しく書きます)、ポップミュージックは少し事情が違うのです。
 
今でこそ、そう多くは無くなってきていますが、それでもポップミュージックは収入的にもステータス的にも、あらゆる芸術活動の中で最も華やかで大きな成功像を持っています。
この点が、他の芸術や表現活動と最も"事情"を変えている理由かと思います。
 
反面、ここで言うBのような、活動はしているけれど金銭的にはその活動が収益になっていないケースが非常に多い世界でもあります。
 
私達裏方に当てはめると、
この華やかで大きな成功像を目指し共にするのがA。
音楽活動を続けるアーティストの環境を収益面含め良好化を目指すのがB。
という訳です。
 
 
簡単な話、掛かってくる(使える)予算が全く異なるでしょうし、関わる人数も全然違うでしょう。
予算や人員がかかる分、Aはより結果としての数字も求められます。
そんな両者がポジションの前提なしで対話をしても、噛み合うはずがありませんし、噛み合わない平行線のやりとりというものは不毛です。
ですが、話をする前に、互いのポジションを理解した上ならどうでしょう。
素直に自分とは違う目線の意見として参考にできるかもしれません。
 

まとめ

このAとB。
アーティストで言えばメジャーとインディー。
裏方で言えば、大資本企業と中小企業・個人事業主。
という言い換えもおおよそ当てはめらるかもしれません。
 
組織や集団全体を大きくひとつに括れば確かにそうです。
好きなことを仕事にする。とか芸術をお金にする。という事は簡単ではないですから「数字ばかり追い求めるなんてけしからん!」とは私は思えません。(20代の頃は思っていましたが)
 
その括りを避けて書いていたのは、所属組織による影響はあるものの、個人個人に目をやると存外そう括りきれない人も多いからです。
 
マーシーこと真島昌利さんの歌にもありますが、「人にはそれぞれ事情がある」ってところでしょうか。
 
裏方の仕事をする上で、このAとBを混同して考えたり、ポジション不明のまま混雑したメンバーで活動を行うと、冒頭に挙げたTwitterのいざこざのような軋轢が生まれてしまいます。
 軋轢が生まれるだけなら良いのですが、互いの目標到達を妨げる結果を生む場合もあるはずです。
 
音楽業界に限った話でも無いと思いますが、自分のポジション、相手のポジションをまずは理解しましょう。(特に自分の)
意見の相違以前に、仕事をする際の考え方自体にも関わってくると思うので。
 
というお話でした。
 
長くなり過ぎないよう文章を省略するあまり、結果なんだかTwitterで揉めない為のお話。みたいになってしまいました。。。
 
では、また◎